海上保安庁、AIイラストを使ったリーフレットを配布中止。SNSの反響などを受けて

海上保安庁が作成したリーフレットが「生成AIで作ったものではないか?」とSNS上で大きな話題となりました。
このイラストに関して同庁は4月1日、生成AIで製作したものだと明かした上で「SNSでの反響などを考慮してリーフレットの配布と公式サイトの掲載を中止した」と編集部に説明しました。

海上保安庁が3月28日に投稿したリーフレット。生成AIによるイラストが描かれた表面(Twitter/JCG_koho) / Via Twitter: @JCG_koho

「目の部分がまつ毛と同化している」「髪飾りの位置がおかしい」などの声が出ていた

SNS上で話題となっていたのは、海で安全に遊ぶために必要な情報を8つのアクティビティ別にまとめた「ウォーターセーフティガイド 」というリーフレットです。
「安全に海を満喫するために」というキャッチフレーズと共に、夕日を背に振り向くアニメ風の女性のイラストが大きく表紙に描かれていました。3月初旬に海上保安庁の公式サイトの「 ウォーターセーフティガイド 」特設ページに掲載。同庁の公式X(旧Twitter)でも3月4日以降、複数回、投稿していました。

3月28日での同庁の投稿をきっかけに、「目の部分がまつ毛と同化している」「髪飾りの位置がおかしい」などといった特徴を元に「生成AIで作成したイラストではないか?」と推測する声が続出していました。
「なぜプロのイラストレーターに依頼せずに生成AIを使うのか?」と問題視する意見の一方で、「例えAIであっても問題無い」とする意見もあり、SNS上で大きな議論になっていました。

「なるべくフラットな状態でメッセージを伝えたかった」海上保安庁が生成AIを使用した理由を明かす

海上保安庁が入居している中央合同庁舎第3号館(時事通信)

BuzzFeed編集部が4月1日、話題のイラストについて海上保安庁交通部安全対策課の担当者に取材すると、「生成AIを利用したイラストです」と明らかにしました。
担当者によると、このリーフレットは3月上旬に作成して公式サイトに掲載。新年度が始まる4月に合わせて漁協など日本各地の海事関係者に配布予定だったとのことです。
生成AIを利用した理由としては「イラストレーターに描いてもらうと、どうしても描き手のイメージがついてしまうので、なるべくフラットな状態で一般の方に海難防止のメッセージを伝えたかった」と説明しています。
ただし公式サイト掲載後の3月15日、文化庁長官の諮問機関である文化審議会が「 AIと著作権に関する考え方について 」というガイドラインを取りまとめました。また、3月28日のXでの該当イラストの投稿に対して「AIの使用はイラストレーターの仕事を奪う」「イラストレーターの名前を記載すべきだ」などの意見がSNS上で出ていたことなどを踏まえて、3月29日に公式サイトでの掲載を削除し、リーフレットの配布の中止を決めたということです。
Xでの投稿は削除はしないものの、今後は新規投稿しないということです。

「今後の生成AIの利用については、SNSでいただいた意見を真摯に受け止めて考えていきたいです」と海上保安庁の担当者は話しています。

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