小林製薬「紅麹」健康被害事件で死者、入院100人超…製品と死亡の因果関係は? 対応の遅さの指摘も

今後の原因究明については、国の研究機関等と進めていくという(https://www.kobayashi.co.jp/)

「小林製薬の糸ようじ」などのコマーシャルでも有名な製薬会社、小林製薬(大阪市)が販売していた「紅麹(べにこうじ)」成分を含む健康サプリメントをめぐり、死者も出る事態となっている。私たちにとって身近な存在でもあるサプリメント。2023年12月には製造工場が移転して閉鎖されていたが、24年3月30日には工場への立ち入り検査が行われた。

腎疾患発症報告で製品自主回収

「ご迷惑をおかけしていますこと、深くお詫び申し上げます」

小林製薬の小林章浩社長は、3月28日に開いた株主総会で謝罪した。株主総会は紅麹事件を受け、紛糾に近い状態だったとの話もある。

発端は3月22日、小林製薬が機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」を摂取した消費者が、腎疾患を発症した疑いがあると発表したことだった。小林製薬はこの日の発表の中で、予防的措置として「ナットウキナーゼさらさら粒GOLD」等の製品を自主回収するとし、当該製品の使用を中止するよう呼びかけた。

25日には情報提供等に基づき、小林製薬側が把握する腎疾患等の入院症例数は24日時点で計26件と報告。27日までには製品との関連性が疑われる死者を2名確認。同日には大阪市から行政処分を受け、市は一部製品の回収を命じた。そして28日にも新たに2名の死者を、29日にも1人確認したとし、合計で死者は54名に。厚生労働省が公開した資料などによると、29日時点での延べ入院者数は114人(速報値)。会社には約1万件を超える相談が寄せられているという。

3月22日、小林製薬は腎疾患を発症した疑いがあると発表した(https://www.kobayashi.co.jp/newsrelease/2024/20240322/)

厚労省は自主点検を依頼、小林製薬は調査へ

今回の問題が大きく複雑化しているのは、紅麹が含まれた製品のほかに紅麹原料を入手し、原料を使って新しく違う製品を作っていることにある。厚生労働省が公表した資料(現在は削除)によると、小林製薬が直接紅麹原料を購入している企業は52社、さらにその52社から原料の供給を受けた企業は173社と3倍以上ある。事態を見た厚労省は紅麹の原料を使用する企業に自主点検を依頼した。

(1)「紅麹コレステヘルプ」等の3製品に用いた紅麹と同じ小林製薬製の原材料を使って製造し、100mgと同等量以上の紅麹を1日当たりに摂取する製品
(2)過去3年間で医師からの当該製品による健康被害が1件以上、報告されている製品

以上のいずれかにあたる製品があるかどうか、4月5日までに報告するよう求めた。

本当に紅麹が原因で健康被害が起きたか

紅麹事件で考えなければならないのは、因果関係だ。本当に紅麹製品を摂取したことが原因となり死亡したのか。または入院や治療が必要になったのかどうかである。小林製薬が3月29日に開いた会見では、小林社長が「カビからできた成分」によって今回の問題が起きた可能性があるとの認識を示唆。今後は国の研究機関等と原因究明を進めていくとした。

対応の遅さの指摘もある。小林製薬によると、紅麹に関する症例が疑われる報告が1月15日にあったものの、発表は3月22日になったという。28日の株主総会でもこの問題について話題が及び、批判の声が出ていたという。なぜ発表が2カ月あまり遅くなったのか。その間にも製品は多く流通している。会見の中で小林社長は「2月6日に(被害報告を)聞いている」と発言している。また小林製薬側は公表が遅れた理由を「人手不足のため調査人員が限られた」などとして釈明した。情報公開をしてから調査する考えに至らなかったことも、被害を大きくする遠因になったといわざるを得ない。

健康になろうと自ら望んで購入した製品で、まさか命を落とすなど想像していなかっただろう。さまざまな問題は今後明らかになっていくと思われるが、小林製薬には今後、健康被害を起こさないよう再発防止に努めてほしい。被害が拡大する中で、小林製薬がどう対応するかに注目したい。

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