【ライブレポート】PEDROとMONO NO AWAREのツーマンが実現 ライブハウスTOKIO TOKYO3周年イベント

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PEDROとMONO NO AWARE。音楽的な背景やキャリアがまったく異なる2つのバンドによる、貴重なツーマンライブが実現した。

これはライブハウス「TOKIO TOKYO」の3周年イベント『ONE WEEK WONDER'24』のファイナル公演として実現したもの。両バンドはそれぞれの独自性を存分に発揮したステージを繰り広げ、この日、この場所だけの魅力的な化学反応を生み出してみせた。

先に登場したのはアユニ・Dがベース/ボーカルを務めるバンドプロジェクト、PEDRO。2018年に活動をスタートさせ、2021年には日本武道館のワンマンライブを開催。同年の年末をもって活動休止に入ったが、昨年6月30日、サポートメンバーに田渕ひさ子(G)、ゆーまお(Ds)を迎えて再始動を果たした。

ステージに「刻音東京」(ライブハウス「TOKIO TOKYO」のロゴ)のネオンが灯され、アユニ・D、田渕ひさ子、ゆーまおがステージに登場。オープニングに選ばれたのは、最新アルバム『赴くままに、胃の向くままに』の収録曲「グリーンハイツ」。鋭利なギターフレーズ、性急なドラム、骨太のベースラインがぶつかり合うオルタナ系ロックチューンを炸裂させ、観客の体を揺さぶる。

さらに切なくも美しいギターのアルペジオと解放的なメロディ、〈私の名前を呼んで〉という歌詞が共鳴する「ぶきっちょ」、愛らしさをたたえた歌声が気持ちよく広がる「安眠」などを次々と披露。一瞬にして聴く者を惹きつける唯一無二のボーカルをストレートに響かせた。

「私、MONO NO AWAREの大ファンなので、超胸アツなツーマンライブとなっております。イエイ!」(アユニ・D)とこの日のイベントに対する思いを笑顔で表明。

さらに“MONO NO AWAREのギター・加藤成順さんの妹がBiSHとPEDROのファン”というエピソードを披露し、「運命をつないでくださった、『TOKIO TOKYO』さん、3周年おめでとうございます! 私ももっともっと音楽でみなさんと交じり合えたり、精進していかないといけないな」と語った。

続いては「飛んでゆけ」。まさに空に向かって飛んでいくようなイメージのギターのイントロからはじまり、優しさと力強さを兼ね備えたボーカルと〈刺さった棘は僕が抜く 安心して暮らして〉という歌詞が解き放たれる。

傷や葛藤を抱えながら、穏やかな日常に思いを馳せるこの曲は、現在のPEDROの志向の一つなのだろう。

「魔法」も強いインパクトを放っていた。ヘビィネスとサイケデリアが溶け合うバンドサウンドが渦巻くなか、アユニ・Dは〈あなたは死なないわ 不安にならないで〉と祈るように歌い上げる。

ライブが進むにつれて3人の音がしっかりと絡み合い、衝動と奥深さを同時に放つバンドサウンドが出現。そこからはロックバンドとしての現在が真っ直ぐに伝わってきた。

最後は“生”への思いを込めた歌、揺らぎを感じさせるアンサンブルを軸にした「余生」を演奏。観客を無理に煽ることもなく、自らの音楽をただただ真摯に表現する姿勢に貫かれた素晴らしいステージだった。

続いては、MONO NO AWARE。玉置周啓(Vo/G)、加藤成順(G)、竹田綾子(Ba)、柳澤豊(Ds)がステージに上がり、まずは「TOKIO!」(玉置)、「TOKYO!」(観客)とコール&レスポンス。1曲目はアルバム『行列のできる方舟』の1曲目に収められた「異邦人」。不思議なエキゾチシズムをたたえた音像、アッパーで穏やかなメロディによって、オーディエンスを惹きつける。

そして“生麦生米生卵”などの早口言葉を取り入れた独創的な歌詞が印象的な「かむかもしかもにどもかも!」へ。ファンクやポストパンクのテイストを感じさせるアンサンブル、日本の響きの面白さを活かした歌が一つになり、このバンドでしか味わえない楽しさが広がる。

メンバーのセンスと個性が有機的に絡み合う演奏も最高。昨年5月から休養していた竹田が3月から復帰し、オリジナルメンバー4人が約10カ月ぶりに揃ったMONO NO AWARE、完全に絶好調だ。

「幽霊船」「味見」を披露し、MCへ。「……いま報告がありまして。“ペースが速い”と。そう言ったのは竹田綾子です!」(玉置)、(拍手を受けて)「何の拍手ですか、これ(笑)」(竹田)といった自然体にもほどがあるトークを展開。

「さっきアユニ・D本人も言ってたんですけど、妹がBiSH、PEDROのファンで。(アユニ・Dが)インスタとかでMONO NO AWAREのことを言ってくれるたびに妹から“ちゃんとお礼言わないとダメなんだよ!”とLINEが来ます。今日、対バンできてよかったです」という加藤のコメントにも大きな拍手が送られた。

ここからじっくりと“歌”を堪能できる場面が続いた。「そこにあったから」では“好きなものは初めからそこにあった”というテーマを込めた歌を紡ぎ、「アングル」では“視点を変えれば物事は変わって見える”というメッセージを手渡す。

「風の向きが変わって」における〈漕ぐも漕がぬも自由さ だだっ広い道にぽつんと自転車〉というラインも鮮やか。詩情と哲学を含んだ玉置の歌を生で聴くと、視界が開けると同時に自分と対話しているような感覚に包まれ、脳と身体がグルグルと動き出すのだ。

ラストは「独自の視点と信念でやっている『TOKIO TOKYO』のイベントに出させてもらって光栄でした」(玉置)という言葉に導かれたのは「東京」。イントロのギターが鳴った瞬間に歓声が沸き、朴訥さと高揚感を併せ持ったメロディ、ラテンと歌謡とオルタナが混ざり合うアレンジによって心地よい一体感が生まれる。

〈ふるさとは帰る場所ではないんだよ〉というフレーズの合唱、そして、郷愁を振り払うように響くバンドサウンドによってフロアの興奮はピークへと達した。

アンコールを求める歓声に呼ばれ、メンバーが再びステージへ。「イワンコッチャナイ」。鋭利なダンスビートと色彩豊かなサウンドが響き渡り、イベントはエンディングを迎えた。

文:森朋之 写真:渡邉隼

<公演情報>
『ONE WEEK WONDER'24 ~LIQUIDROOM EDITION~』

3月22日(金)LIQUIDROOM

セットリスト■PEDRO1.グリーンハイツ2.ぶきっちょ3.安眠4.浪漫5.飛んでゆけ6.人7.ナイスな方へ8.魔法9.春夏秋冬10.余生■MONO NO AWARE1.異邦人2.かむかもしかもにどもかも!3.幽霊船4.味見5.そこにあったから6.アングル7.風の向きが変わって8.東京

■PEDRO公式サイト:
https://www.pedro.tokyo/

■MONO NO AWARE公式サイト:
https://mono-no-aware.jp/

■TOKIO TOKYO公式サイト:
https://tokio.world/

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