syudou「音楽を仕事にしたいのなら」「プロとは?」10代アーティストに伝える一般社会にも通じる大切なこととは?

“ラジオの中の学校”TOKYO FMのラジオ番組「SCHOOL OF LOCK!」(月曜~木曜 22:00~23:55/金曜 22:00~22:55)。3月27日(水)は『閃光クリニック2024 SP』と題して放送。Adoさんの楽曲「うっせぇわ」を手がけたことでも知られるシンガーソングライターで音楽プロデューサーのsyudouさんを講師に迎えて3月22日(金)に開催された、音楽のプロを目指す10代の生徒(リスナー)に向けた特別講義イベント『SCHOOL OF LOCK!×JASRAC 閃光クリニック2024』の模様をお届けしました。

前編の記事では、パーソナリティのこもり校長(小森隼/GENERATIONS from EXILE TRIBE)とCOCO教頭(CRAZY COCO)による、本イベントについて解説したパートを紹介。後編の記事では、syudouさんの講義内容をお届けします。

講師として参加したシンガーソングライターで音楽プロデューサーのsyudouさん

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東京・半蔵門でおこなわれた『SCHOOL OF LOCK!×JASRAC 閃光クリニック2024』。昨年の『閃光ライオット』でファイナリストだったアーティストなど、全国各地から抽選で選ばれた約30名が参加しました。

◆『閃光クリニック』とは?
2012年から「SCHOOL OF LOCK!」とJASRACが共同で企画している特別講義イベント。今回が3回目の開催となります。第一線で活躍するアーティスト、音楽クリエイターをゲストに迎えて、プロを目指す10代のミュージシャン、音楽クリエイターに向けて、楽曲制作の技術面やプロとしてのメンタル面などについて、直接講義するイベントです。

特別講義イベント『SCHOOL OF LOCK!×JASRAC 閃光クリニック2024』の模様

syudouさんは、時間通りに集まった参加者たちに「これはミュージシャンとしてはめちゃめちゃすごいことです。みなさん素質があります。現実は、なかなか時間通りにそろわないので! 僕もオンタイムを心がけているのですが、一生続けてほしいです」と呼びかけました。

今回のイベントでは、社会人経験を通して感じたアーティストとして大切なことを伝えました。この記事では、オンエアされたイベントの模様から一部を抜粋して紹介します。

――syudouさんが伝えたいテーマ ◆グラデーションでキャリアを作る ◆キャリアの中の防御力

syudou:僕は、別にすごい音楽の才能があるわけでもなく……努力はそれなりにしたつもりですけど、血のにじむような努力をしたわけではなくて。そんな人間が、みなさんに話せることは……。

僕は小中高大と学校に行きまして、就職してからミュージシャンになりました。親に心配をかけるというところは、最小限に抑えられたと思っています。そういう地続き(グラデーション)でキャリアを作っていくために必要なのは……ガンガン激しく音楽を作っていくという“攻め”だけではなく、“防御力”という要素が大切だと思っています。

僕は、学生のころからミュージシャンになりたいとは思っていたのですが、そこで気になっていたのは親とか世間体でした。誰にも嫌な顔をさせずに、音楽の道に進むために見つけたのがボーカロイドという音楽ジャンルです。インターネットを使っての音楽発信は、プロアマ関係なくできますから。

“防御力”についてですが、一番は作り続けること。これが“攻め”であり“防御”であると思います。例えば、音楽を仕事にすると言って、就職せずにフリーターを選ぶとか……フリーターも大変ですけどね。そういう自分に向いていない、合っていない道をチョイスした場合、音楽に割く時間とか根本の部分が削られてしまう。

それで、一番いいパフォーマンスができないのであれば、“就職して帰宅してから音楽活動をする”を選ぶ勇気も必要だと思います。どちらでも良いと思いますが、流されずに自分で選ぶことが大切だと思います。曲を作って演奏している時点で、もうミュージシャンなので!

◆今の時代に音楽を仕事にする上で大事なこと

syudou:音楽を仕事にするとは……お金を稼ぐことだけではなくて、仕事として社会に関わることだと思うんです。個人で発信する分には勝手にやればいいですけど、“仕事”となると基礎的なこと……例えば、遅刻しない、あいさつをちゃんとする、とかも大事ですよね。他者と人間関係をしっかり築くのは、最低限必要なことだと思います。

でもミュージシャンって、そうでない人も魅力がありますよね。ただ、個人なら裏ではきちんとするとか、バンドやチームならメンバーにちゃんとしている人もいて、トータルできちんとできていたら素晴らしいと思います。このスキルはミュージシャンだからいらない、ということはないと思います。「ミュージシャンだから○○」という決めつけは、一切しないほうがいいです。

仕事上のコミュニケーションで気をつけることは……曲を作ってスタッフの方に聴かせたときに、わかってもらえないジレンマがあると思います。それは、きちんとと伝える努力をしているかどうか、ということもあると思います。

◆曲の魅力を正しく伝えるためにやっていること

syudou:音楽の創作活動をしていて、それを仕事にしたいのであれば、スタッフの方に曲や作品がどういうものか、というのを伝える必要があります。僕が効率いいなと思ったのは、楽曲ごとに資料を作ることです。

僕は(個人の活動ではなく)スタッフの方とやる、となったときから、楽曲の解説資料を作っています。今回はそれを共有しようと思って持ってきたのですが……みなさん! 全然真似してください(笑)。僕は、以前「爆笑」という曲を出したのですが、そのときの資料です。

まず、表紙は重要です。表紙しか見ない人もいるので。この資料では、「マヂラブ(お笑いコンビ・マヂカルラブリー)さんの曲です」というのがわかる画像を載せています。
内容は、楽曲の持つ意味、サウンド面、歌詞のブロックごとの解説、最後にミュージックビデオの作家さんのためにどういう映像にしたいかというイメージをまとめています。これを全曲、スタッフの方と共有しています。

これを、なぜやろうと思ったかというと……すごく意味を込めて曲を作ってマネジャーさんに渡しても、「いい曲じゃん!」しか返ってこなくて(笑)。それまでにYouTubeにあげていた曲だと、コメント欄で考察してくれている人がいて、マネジャーさんはそれを読んでいるから、その曲の理解は深いんです。

でも、曲を出してからでは遅いので、出す前に伝えるにはどうしたらいいか、と考えたときに、全部言葉で書くことにしたんです。手の内を明かしているので、結構恥ずかしいこともあるんですけどね。

これを書いておくと……作ったときの気持ちを忘れてしまう、という現象があるのですが、これを読むと思い出せるので。自分で「何の曲だっけ?」と思ったときは、これを見ます。渡した相手からは「わかりやすい」と言ってもらえますし、こっちも話しやすいというか。「あの曲、こういう意味があったじゃないですか」というのを、当然知っていてくれる状態で進められるので。情報伝達が早くていいですね。

特別講義イベント『SCHOOL OF LOCK!×JASRAC 閃光クリニック2024』の模様

――参加者からの質問
【プロを目指して頑張っています。パフォーマンスがヤバい人、曲がいい人、ビジュアル面……などあると思います。syudou先生は、どんなアーティストが人の心をつかむと思いますか?】

syudou:“プロ”って難しい言葉ですよね。僕は学生のころからパソコンを使っていて、そのグラデーションで今があるので。“どこからプロなのか?”の線引きは、各々でいいと思います。人を感動させたらプロとか、飯が食えるようになったらプロとか、あると思いますけど……。

優れたミュージシャンって何だろう? と思ったときに……僕が思うのは、聴いたり、見たりしたときに、自分も「他人事じゃない!」「何かしなきゃ!」という気持ちにさせてくれること。

例えば僕は、姉から教わったBUMP OF CHICKENとかASIAN KUNG-FU GENERATIONとかから音楽に入ったんです。この人たちの曲は、ただ「いいな」っていうだけではなくて、「自分も弾いてみたい」「かっこいい!」「こういうふうになってみたい!」と思わせてくれたんです。内容を超えた優れたものと言いますか。

売れている・売れていないは全然関係なく、「この人のこのリフ、かっけー!」とか「参考にしたい」と思わせてくれる……自分に影響を与えてくれるものは、優れたものなのかなと思います。

また、本イベントではCOCO教頭とJASRAC職員によるトークコーナーも。JASRACの活動や著作権を意識することの大切さ、最近の若年層クリエイターの考え方など、変化の早い音楽業界に追いつくための講義を実施しました。

COCO教頭

今回の放送で、特別講義イベント『SCHOOL OF LOCK!×JASRAC 閃光クリニック2024』の内容に触れたこもり校長は「講義の内容を、今回の放送でみんなと一緒に聴けると思っていなかったので、この授業を一緒に聴けて良かった。この授業を受けて、今、音楽に向き合っている生徒(リスナー)が、漠然としたものの輪郭をつかむきっかけとなるような大切な授業だったね。これからも続けていきたいなと思いました」とコメント。

COCO教頭も「そうだね! いろんな講師を招いて、これからも開催していきたいね!」と話していました。

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3月27日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2024年4月4日(木)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:SCHOOL OF LOCK!
パーソナリティ:こもり校長(小森隼・GENERATIONS from EXILE TRIBE)、COCO教頭(CRAZY COCO)
放送日時:月曜~木曜 22:00~23:55/金曜 22:00~22:55
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/lock/

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