大豊町に広がる花の里 病気を乗り越え新たな夢に挑戦する『夢来里 都築将子さん』の思い【高知】

高知県大豊町の山里で、四季折々の花を咲かせる女性がいます。病気を乗り越え新たな気持ちでこの春を迎えています。

大豊町の山あいをピンク色に染めるサクラ。ここは、町にUターンしてきた夫婦が15年ほど前から整備してきた花の里です。四季折々の花を咲かせ、季節によって表情を変え、人々の心を癒します。

この庭園の名前は「夢が来る里」と書いて「夢来里(むらざと)」。整備するのは都築将子さん(78歳)。この春を特別な思いで迎えていました。病気を乗り越え初めて迎える春を追いました。

大豊町大平地区。ここにあるのが花の里「夢来里」です。敷地は約2万平方メートル。四季折々の花が咲く楽園です。その評判が口コミで広まり、3月から5月にかけての花が咲く時期には、月に200人以上、年間では1500人ほどが訪れます。

この「夢来里」を整備するのが都築一久さん、将子さん夫婦です。

この日は高知市や四万十町から合わせて22人の団体客のほか土佐市の親子が訪れ、将子さんはお茶を出したり案内をしたり、大忙しです。

将子さんは1968年、同じ大豊町出身の一久さんと結婚。会社員として働く一久さんとともに大阪で生活をしていました。そして一久さんの退職後、2008年に大平地区にUターンしてきました。以来、夫婦二人三脚で自宅周辺や近くの耕作放棄地に花や木を植え、庭造りを始めました。毎年春に庭園を彩るハナモモ。遅咲きのゴテンバザクラと桃源郷のような景色を織りなします。今では300種類の草花が四季折々の表情を見せます。

将子さんには、大切にしているモノがあります。

「夢ノート」と書かれた8冊のノート。そこには叶えたい夢を文字や絵で記しています。

2006年の「夢ノート」には、自分の作品を展示するギャラリーのイメージ図を描いていました。5年後、大平地区の庭の一角に「ギャラリー夢来里」が完成。夫婦で夢を一つ一つ叶えてきました。

夢来里では、10年前から高知大学地域協働学部の学生たちが庭園造りを手伝っています。3月10日、学生たちも協力し地域に交流できる場所を作ろうと近くの集落活動センターでこども食堂が開かれました。将子さんは、ショウガやゲッケイジュなど6種類の薬草を煮込んだ薬膳スープを使ったカレーライスを作り、子どもたちに提供します。

「地域を元気にしたい。」そう願う将子さんですが、去年、大きな病気が見つかりました。夏に検査で腹部の大動脈に異常が見つかり、さらに9月に心臓の冠動脈が詰まりかけていることがわかりました。医師からは早急な手術が必要と告げられました。

10月、将子さんは約9時間に渡る心臓の手術を受け、12月に腹部大動脈瘤の手術も受けました。新型コロナの影響で、手術後も夫の一久さんと会うことは許されませんでした。将子さんは、心配をかけないようにと病室での様子をインスタグラムで投稿していました。

ひとりで病と向き合う中、将子さんの支えになったのはSNSで送られてくる夢来里で出会った人たちからの励ましのメッセージでした。

将子さんは手術の影響で今も重いものを持つことができないなど、以前より活動は制限されていますができることを一つずつこなしています。

50年前、大平地区には94人が暮らしていましたが現在はわずか16人になりました。だからこそ夢来里に花を咲かせ、かつての賑わいを取り戻したい。それが病気の自分を支えてくれた人たちへの恩返しだと将子さんは話します。

300種類の草花が四季折々の表情を見せる「夢来里」。将子さんにはこの春、新たな夢ができました。

それは、夢来里の近くにある空き家をカフェや飲食店に改修し、さらにステージを設けて訪れた人たちが楽しめる場所を作るという夢です。

病を乗り越えて迎えた春。花の里に将子さんの夢が咲き誇ります。

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