営業80年以上、夜の町の「まち中華」 福井県福井市の片町、変わらぬ味が常連客の胃袋満たす

長年にわたり店を切り盛りする白土由美子さん(左)と正和さん=福井市順化1丁目の上海亭
人気の半チャンセット
片町の一角にある上海亭。外観は昔からほとんど変わっていないという

 福井県福井市の繁華街・通称「片町」。雑居ビルが立ち並ぶ夜の街で、80年以上営業を続ける「まち中華」がある。昔から変わらない店構えが醸すレトロな雰囲気。まちの景色が変わっても、安い、早い、うまいのモットーは変わらない。今も昔も、常連客たちの胃袋を満たしている。

半チャンセット

 「いらっしゃーい」。年季の入ったのれんをくぐると、柔らかくて元気な声が迎え入れてくれる。声の主は、厨房(ちゅうぼう)で軽々と中華鍋を振る店主の白土由美子さん(73)。年齢を感じさせない手際のよさに、思わず見とれる客も少なくない。

 人気はラーメンにハーフサイズのチャーハンが付く半チャンセット(900円)。しょうゆ味のラーメンはスープが透き通った中華そば系で、もちもち食感の麺は自家製だ。

 昼時には、スーツ姿のサラリーマンや常連客が次々と席を埋めていく。物価高でも量と価格は変えるつもりはない。「逆にお客さんに『値上げしないの?』って心配されているんです」と由美子さんは笑う。

出前に奔走

 上海亭は由美子さんの夫の正和さん(78)の父が創業。正和さんが中学生のころ、自宅を改装した現在の場所に移転した。正和さんが生まれる前から営業していて「80年以上はやっているはず」と由美子さん。

 由美子さんは1972年に嫁いだのを機に店に立つようになった。当時は周辺に商社や繊維会社、保険会社が多くあり「夜だけでなく昼も働く人でにぎわっていた」。平日は役所への出前に奔走、休日は近くの映画館を訪れた客が店ののれんをくぐった。「おかもちが足りなくなるくらい出前の注文があった。バブルがはじけるまでは本当に忙しかった」と懐かしむ。

 配膳や食器洗いから始めた由美子さんは「誰か出前に行ったらカバーしないといけないから」と調理もするようになった。「若いときは腱鞘(けんしょう)炎で鍋が返せなかった。やっているうちに鍛えられたの」

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