プロジェクト・アイ/神奈川県横須賀市で新市立病院建設、施工は大成建設JV

◇11月竣工へ安全・品質・工程管理に万全
神奈川県横須賀市が神明公園内(神明町1の8)で進めている新市立病院建設工事。築50年以上が経過し、老朽化した市立うわまち病院(上町2の36)の移転新築工事で、施工を大成建設・堀建設・宇内建設JVが手掛けている。万全な安全・品質・工程管理の下で順調に工事が進捗。内装、外装仕上げ工事が本格化しており、11月14日の竣工に向け工事は最盛期を迎えている。新病院は2025年3月1日に開院する予定だ。
建設地はJR・京浜急行線「久里浜駅」から1キロ圏内に位置する。新病院は本棟と高度放射線治療を行うリニアック棟で構成し、施設規模はS造7階建て延べ約3万8000平方メートル。災害時の拠点病院として阪神・淡路大震災クラスの地震発生時でも診療を継続できるよう免震構造(基礎)を採用している。
診療科目は28科。外来部門を2階に集約し、エントランスホールからエスカレーターで直接アクセスできる。主に3階が手術室や集中治療室、4、5階が一般病棟、6階が回復期リハビリテーション病棟や感染症病棟となり、屋上階にはヘリポートが設置される。建設工事は分担施工で進められ病院本棟を大成建設、リニアック棟を堀建設、外構工事を宇内建設が担当している。
神明公園内の既存施設解体や整地など準備工事を経て、23年1月17日に本体工事に着手した。基礎工事では止水対策として地中連続壁を構築し、既製杭122本(直径800~1100ミリ)を打設。基礎掘削の深さは約5メートル、掘削土量は3万平方メートルに及んだ。基礎躯体を構築した後、免震装置(積層ゴム支承、滑り支承)を58基、オイルダンパー12基を据え付けた。引き続き地上部の躯体工事を順次進め、1月16日に上棟を迎え、現在は内外装工事を全面展開している。
現場を指揮するのは数多くの病院建築を手掛け、豊富な経験とノウハウを持つ小川嗣雄所長(大成建設)だ。今回は携わった工事の中でも最大級の規模。資機材の搬入量や作業員数が非常に多く、本体工期22カ月を厳守するためには「人員体制を含め、輻輳(ふくそう)する作業工程の綿密な事前調整が鍵になる」とし、万全な管理体制で工事の円滑施工に努めている。
作業の効率化や品質確保対策として地上部では床スラブ以外のすべての躯体にプレキャスト(PCa)コンクリートを採用した。床コンクリートでは型枠に使う鋼製デッキプレートに鉄筋を一部先組みしたタイプを導入することで現場の配筋作業を減らした。
病院建築という特性上、品質面で最もこだわったのが床コンクリートだ。「病院は医療機器などを収めるため段差が多い。降雨が予想される時はコンクリート打設を中止し、床の平滑性やレベルの管理に専門員を配置するなど高次元の精度管理に努めた」(小川所長)と振り返る。
設備機器の収まりや輻輳する配管類の干渉チェックを中心にBIMモデルも活用している。医療機器の配置など開院後の使い勝手を追求した顧客の要望にもタイムリーな対応を心掛ける。その一環としてVR(仮想現実)を活用したモデルルームを作成。遠隔地でも室内のイメージをリアルに把握できるようになり、病院関係者との協議や合意形成の円滑化に役立てている。
人手不足や時間外労働の上限規制適用を踏まえ、より作業の効率化が求められる。手戻り工事をなくすためにも現場では情報共有を徹底。ビジネス現場のコミュニケーションツール「LINE WORKS(ラインワークス)」などを活用し、末端の作業員に至るまで正確な情報を迅速に伝達する体制を整えている。
作業員用の仮設施設には快適性を追求した温水洗浄便座付きトイレや休憩場所を整備するなど、気持ち良く仕事をしてもらえるよう職場環境の整備にも力を注ぐ。月に一度のペースで炊き出しやバーべキュー大会を企画するなど、職長会主体の交流イベントも活発だ。小川所長はコミュニケーションの活性化や現場の一体感醸成に大きな効果があると実感している。
3月上旬の工事進捗率は約40%。今後工事は最盛期を迎え、作業員数も最大600人程度になる。小川所長は「まずは安全第一で第三者災害を含む事故防止を徹底し、手戻りのない先手の工程管理を継続していく。市民の命を守る重要な病院建築を安全、高品質に造り込むというゴールを目指し、最後まで気を緩めず現場一丸で取り組んでいく」と決意を語る。

◇工事概要
■工事名=横須賀市新市立病院建設工事
■発注者=神奈川県横須賀市
■建設地=神奈川県横須賀市神明町1の8(敷地面積1万9876m2)
■設計=伊藤喜三郎建築研究所
■監理=日建設計コンストラクション・マネジメント
■施工=大成建設・堀建設・宇内建設JV
■構造・規模=S造7階建て塔屋1階延べ3万8259m2(450床)
■工期=2021年3月31日(本体工事23年1月17日)~24年11月14日

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