パワーカップルが組む「ペアローン」の是非…23区内新築マンション1億円超えで議論の的に

ペアローンで購入可能な上限価格は上がるが…(C)日刊ゲンダイ

2023年の東京23区の新築マンションは平均価格が1億1483万円(不動産経済研究所発表)と大台を突破する中、論争になっているのが住宅ローンの組み方だ。

〈離婚した時、揉めるからやめろ〉

〈夫婦でローンを組んだ方がメリットがある〉

住宅購入の際、夫婦共有名義にしてペアローンを組むことに賛否の声が上がっている。

ペアローン推奨派は、借入額が増やせることからさらに高額な物件が購入できる点、住宅ローン減税、売却時の控除を夫婦で享受できるのでダブル節税になる点、さらに団体信用生命保険の加入で、一方が死亡しても残債が保険で完済される点などを挙げる。

「都心のタワマンなどが値上がりしている昨今、価格が高いものほど資産価値が落ちづらい状況を背景に、単独では手の届かない物件をペアローンで買っているのは世帯年収1500万円を超えるパワーカップルが多い」(経済ジャーナリスト)

だが、不動産アナリストの長谷川高氏は、楽観視され過ぎている現状に警鐘を鳴らす。

■“資産価値落ちない信仰”の落とし穴

「ペアローンで揉める最大の理由が離婚ですが、一方が出ていく際、実家が資産家でない限り、相手の持ち分を買い取るのは容易ではないでしょう。そうなると売却することになりますが、売却価格が残債を上回る、もしくは同額であれば、この問題は解決します。リーマン・ショック以降、購入時より高い価格で売却できた人がザラにいる中、今後も同じ状況が続く保証はありません」

購入時より資産価値が下落し、売却価格が残債を下回れば、持ち出しで返済しないといけない。この発想が欠如しているというのだ。さらに離婚のほかに病気や失業、金利上昇のリスクもある。

「建物が経年劣化することから、以前は不動産が購入時より高く売れると考える人は少なく、夫の属性だけでローンを組むのが普通でした。妻がフルタイムで働いていても、その分を預貯金に回すなど余力を残していることが多かった。夫婦共有にすることで購入可能な上限価格は上がりますが、その分、生活に余力がなくなり、今後、金利が上昇した際のリスクへの対応は難しいと考えます」(長谷川高氏)

もはや資産形成の一環となっているマンション購入。ペアローン組の思惑は吉か凶か。

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