小林製薬「紅麹」サプリ健康被害拡大の“元凶”は安倍元首相…「機能性表示食品」解禁は米国の圧力

「成長戦略第3弾」を高らかに宣言する安倍首相(下段=死亡例も出し、回収された小林製薬の3機能性表示食品)/(C)共同通信社

死亡例5人、入院は114人、800人が体調不良を訴える──。小林製薬の紅麹サプリメント摂取による健康被害問題が日に日に深刻度を増している。紅麹サプリは国に届け出た上で「コレステロールを下げる」と表示していたが、こうした健康食品を「機能性表示食品」と呼ぶ。この信頼が揺らぐ制度導入を急いだのは安倍元首相だ。アベノミクスの成長戦略の一環として「結論ありき」で規制緩和を推進。制度開始時からの安全性への危惧を無視し続けた。

■経済最優先で国民の命をないがしろ

「健康食品の機能性表示を解禁いたします」

安倍首相(当時)は2013年6月、内外情勢調査会の「成長戦略第3弾スピーチ」で、そう高らかに宣言した。諮問機関「規制改革会議」で、機能性表示食品の「容認」が発議されたのは同年2月のこと。その後、同会議の「健康・医療ワーキング・グループ」で、たった3回の議論で容認を認め、安倍首相の解禁宣言から間もなく「14年度中に結論を得た上で実施する」と閣議決定。2年後の15年4月にスタートと政治主導でアッという間に設立された。

安倍首相は解禁宣言で、機能性表示食品の必要性をこう説明していた。

「現在は、国から『トクホ(特定保健用食品)』の認定を受けなければ『強い骨をつくる』といった効果を商品に記載できません。お金も時間もかかります。とりわけ中小企業・小規模事業者には、チャンスが事実上閉ざされていると言ってもよいでしょう」

トクホは1件ずつ審査して国が許可するのに対し、機能性表示食品は届け出だけで国の審査はナシ。許可の際に人間に投与した臨床試験が必要なトクホと異なり、含有成分に関する既存の研究をまとめた文献評価でもOK。ほぼノーチェックで商品に効果や効能などを記載できるようにした。大幅な規制緩和である。

参考にしたのは米国の「ダイエタリーサプリメント」制度

この「手軽さ」が企業には魅力で、機能性表示食品は急成長。市場規模は18年からの5年間で3倍超となる6865億円(推計・富士経済調べ)にまで膨らんだ。今年3月時点での届け出は約6800件とトクホの6倍を超える。

しかし、年々増加する届け出に事後チェックが追いつかず、消費者庁実施の買い上げ調査は22年度で119品に過ぎない。届け出情報は消費者庁のHPで検索できるが、「論文の読み方」や「評価の方法」を知らない多くの消費者にすればチンプンカンプンだ。

この制度は「消費者の利益」ではなく「企業の利益」を最優先。国民の健康よりも経済重視の発想で運営されている。そのため、スタート時から全国消費者団体連絡会や日弁連、主婦連合会などが健康被害を危惧し、行き過ぎた規制緩和の見直しを求めてきた。そして開始10年目にとうとう恐れていた事態が現実となったのである。

改めて安倍元首相の責任は重い。なぜ制度導入を急いだのか。NPO法人アジア太平洋資料センター共同代表の内田聖子氏は、自身のXでこう指摘した。

《当時はTPPなど自由貿易協定+国内の規制緩和が強力に進められていた。米国が年次改革要望書や外国貿易障壁報告書にて「栄養補助食品の自由化・販売規制の緩和」を一貫して求めてきた影響もあるだろう》

確かに米国は01年から年次改革要望書で栄養補助食品の自由化と販売規制の緩和を一貫して要求。届け出だけで許可するシステムも米国の「ダイエタリーサプリメント」制度を参考にしたものだ。

「米国の要求に屈し、国民の命よりも『米国の利益』を優先したのであれば、安倍元首相は罪深い。国民の健康で文化的な最低限度の生活を保障する憲法25条にも反する。健康被害が起きてから欠陥制度を見直すのは本末転倒です」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)

前出の解禁宣言で安倍首相は「国民が自らの健康を自ら守る」とサラリと自己責任を強調していた。旧統一教会との癒着や派閥の裏金事件を含め、全ての悪事は安倍晋三に通じている。

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