J1初挑戦で首位「FC町田」をけん引する平河悠の「強み」と黒田監督が描く「未来」(1)町田「ダイレクト」と鳥栖「ポゼッション指向型」が激突 

FC町田ゼルビアはホームでサガン鳥栖と対戦。写真左下の平河悠が躍動した。撮影/重田航

明治安田生命J1リーグ第5節、FC町田ゼルビア対サガン鳥栖の戦いが、3月30日に町田GIONスタジアムで行われた。試合は、3-1で町田が勝ち、4勝1分の勝ち点13で首位をキープした。この試合で衝撃的な活躍を見せたのは、U-23代表のサイドハーフ。パリ五輪アジア予選にも召集されている逸材と、J1初挑戦で躍進を続ける町田の今後を、本人たちのコメントを踏まえながら、徹底分析!

大ブレイクの予感「23歳の若武者」が3アシスト

彼の名前は、平河悠という。佐賀県出身で、山梨学院大学時代、町田への加入内定と特別指定選手承認が発表された逸材だ。昨シーズンのJ2リーグでは、35試合に出場して6得点をあげている。また、パリオリンピック世代として、先のU-23代表にも呼ばれた。町田やJ2リーグを観る人ならば、平河のプレーを知らない者はいないだろう。そんな平河がJ1の舞台で、大ブレイクを予感させる活躍を見せたのである。
町田のシステムは「4-4-2」のボックス型であり、鳥栖は「4-2-3-1」を敷く。両チームはスタイルが違う戦いをするチームだといえる。

町田は「ダイレクトサッカー」で、鳥栖は「ポゼッション指向型サッカー」である。町田の「ダイレクトサッカー」は、直接的にゴールを目指してボールを運ぶという意味である。つまり、「スペース」にボールを運ぶサッカーのことだ。ボールを奪ったら、相手のスペースにミドルパスやロングパスを送り、一気にゴールを目指すサッカーのことである。

攻撃は「タッチラインが主戦場」町田の問題点

一方、鳥栖の「ポゼッション指向型」とは、成功率の高いプレーを目指すためにポゼッションしているので、ボール保持だけには固守していないと言う意味だ。敵のゴールに向かうことを意識しているスタイルなので、中盤から縦パス1本で相手DFの背後を狙うこともある。基本的にはポゼッションだが、そこには固守していないと言う柔軟性のあるスタイルだといえる。

攻撃に関しては、町田はタッチラインが主戦場となる。サイドにボールを置いて戦えば、相手にボールを奪われてもラインの外に出せるというリスク管理込みの攻撃になっている。スペースに出されたボールに町田の選手が走り込み、相手DFがラインを下げてブロックを作る前に仕掛ける戦い方を好む。
一方、町田の守備は、相手が4バックの場合、町田の2人のFWがCBと対面して、両SHが相手のSBとマッチアップする。4人で相手DF4人にフタをして、ボールを出させないようにする。もし、攻撃陣が剥がされたら、町田の2人のCHがケアして相手からボールを奪う。
問題は、鳥栖戦で同点にされた場面で見られたように、CHが剥がされるとCBが前に出てケアしようとするのだが、そうするとCBがいたポジションが空くので、そこに相手選手が入り込み、GKと1対1になることがあり得るのだ。同点弾は、まさに、この形から生まれてしまった。

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