60歳 文筆家 青木美詠子さんの暮らし【後編】「夢中になれる時間を、意識してつくっていきたいですね」

日々を明るく照らしてくれる小さな楽しみや、心を潤すための暮らしの工夫は、幸せを感じさせてくれます。そんな暮らしを営み、わたしらしく、今を生きる女性を紹介する『60代からの小さくて明るい暮らし』(主婦の友社)から、文筆家の青木美詠子さんの後編をお届けします。

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PROFILE
文筆家・コピーライター
青木美詠子さん(60歳)
東京都在住
夫婦ふたり暮らし
山口県出身、1963年生まれ。「あおきみさん」の愛称で知られ、「冷えとり」にまつわる著作も多数。自宅でも整理収納セミナーや冷えとりお話会を不定期で開催。近著は『あおきみさんち、家を買う』。(マイナビ出版)。

不安や心配ごとを抱えながらも、忘れられる時間があれば大丈夫

今、特に意識してつくっていきたいと感じているのは「夢中になれる時間」です。

「自転車で自然の中を走ったり、おいしいものを食べたり。お笑い番組を見て笑ったり、夫と野球観戦をしたり、最近じゃ自分でもスポーツを始めようとテニススクールにも通いだしました。そんなふうに、楽しめることや何かに夢中になる時間は、不安や心配ごともすっかり忘れられています」

実は青木さん、ひとつのことを深く考え込んだり、不安や迷いが尽きなかったりと、「心配性」を自認しています。だからこそ、悩みに正面から向き合うのではなく、「忘れる時間」を味方につけたのです。

「老後のこと、人間関係や仕事のこと。考えすぎるのはやめようと思っても、なかなか難しいものです。今はSNSでよその暮らしが見えることもあり、なおさらかもしれません。だから落ち込む自分も、人と比べて悩む自分も、全部自然なことだと認めています。もちろん自分で調べたり、専門家に相談に行ったりと、できる範囲のことは行動してみます。それでも結局のところ、未来はだれにもわからないですよね。

そもそも、だれもが漠然とした不安の鞄を持ちながら生きているのかもしれません。手ぶらの人なんていないんじゃないかな。どんなに本を読んで知識を集めても、減りはするけれど、やっぱりゼロにはなりません。でも、忘れられる時間は自分で増やしていけます」

ここ数年は、これまでに実践してきた冷えとりや整理収納、料理などの生活の工夫を、人にシェアする活動も始めました。

「自宅で小さなセミナーやお話会を開いています。教えるというよりも、わたしはこれが便利だったよ、こう考えたら楽になれたよ、という経験や気持ちをお互いに共有するような場です。整理収納アドバイザーの資格を取ったときは、これを何か仕事に役立てなければとプレッシャーに感じていました。自宅にお客さまを招くとなると掃除も念入りにしたいし、準備にも時間がかかります。申し込みがあるのだろうかと不安も尽きません。

でも、うれしいご感想をいただけたときの、だれかのお役に立てたという喜びのほうが大きいし、心からやってよかったと思えます。自分に無理のない範囲で、これからの人生は、この家を『分かち合う場』として役立てていけたらいいですね」

一攫千金の大当たりにも憧れるけれど、地道に続ける貯金こそが大きな安心になるように、幸せだって同じこと。等身大の喜びをこつこつと積み重ねることが、青木さんの人生を豊かにしているようです。

昆布としいたけのだしが入った大鍋。使ったら水を注ぎ足し、そのつど火を入れながら数日使用します。
みそ汁はだしを小鍋にとり分け、鰹だしと具材をプラス、お椀でみそを溶けば、みそ汁自体を再加熱しないので、多めにつくった翌日もおいしく食べられます。
常備菜はできるときに。ラップでくるみ電子レンジで加熱したじゃがいもは、スライスして焼いたり、サラダにしたり。
細かなものが多いパントリーは、「無印良品」や「ダイソー」の収納グッズで混ざり合わないよう仕切るのがコツ。

日々を潤す、暮らしの工夫と心がけ

これまでも、これからもわたしを支える「冷えとり健康法」

30年近く続けているのが、体を温める「冷えとり健康法」。靴下の重ねばきや、レッグウォーマー、レギンスなどで下半身が冷えないように、一年を通じて心がけています。体がなんとなくどんよりするときは、半身浴を1〜2時間。雑誌を読みながらじっくり汗をかくとすっきりします。

整理収納のノウハウをとり入れることで暮らしがぐんとスムーズに

5年前に整理収納アドバイザー1級の資格を取得。整理のコツを伝えることで、片づけ下手だった夫も「作業が済んだら机の上に物を置かない」というルールを徹底できるようになり、探し物も減りました。身のまわりが整うと、仕事も生活もスムーズに回ります。

不安なことはきちんと調べる、夫婦で話し合う

老後のお金や暮らし方。漠然とした不安を抱えるよりも、調べたり、専門機関に相談したりなどします。そこから解決の糸口が見つかることも。先日は夫婦で年金事務所に行き、ちょっと気持ちが軽くなりました。夫婦で話し合うことも大切です。

ラジオの気楽なおしゃべりが家事のおとも

スマホのアプリ「radiko(ラジコ)」を使い、家事をしながらラジオを聴いています。パーソナリティの人柄に触れ、なにげないおしゃべりに「うん、うん」と共感したり、「へえ」となったり。情報収集というよりも、人の声の心地よさを感じています。

思いきって始めたテニスに今はわくわくしています

ウォーキングやジムより自分に合っていたのがゲーム性のあるテニス。どうやら球技が好きみたいです。球を追う時間は、ほかのことを考える暇もなく、純粋に打ち返すことだけに必死になれます。本格的に続けていこうと道具一式をそろえました。

写真/清永洋

※この記事は『60代からの小さくて明るい暮らし』主婦の友社編(主婦の友社)の内容をWeb掲載のため再編集しています。


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