ブラピ主演“新幹線映画”に『スピード』便乗!『ブレット・エクスプレス 弾丸特急』は敷かれたレールを走り続ける怪作パニック映画

『ブレット・エクスプレス 弾丸特急』DVD発売中価格:¥4,800(税抜)発売:ニューセレクト株式会社©2022 Acme Holding Company, LLC

ブラピ主演の“新幹線映画”にアサイラムが目をつけた

2022年、ヘンテコ日本の新幹線を舞台にしたアクション映画『ブレット・トレイン』が公開された(原題:『BULLET TRAIN』)。どこかコミカルで個性豊かな殺し屋たちが繰り広げるドタバタ劇は、痛快でクセになる面白さ。詳細は割愛するが、個人的にお気に入りの一本である。

一方、『きかんしゃトーマス』で例えるなら<ディーゼル>のような映画スタジオとしておなじみの<アサイラム社>も同年、似たような作品をリリースしている。その名は『ブレット・エクスプレス 弾丸特急』だ(原題:『BULLET TRAIN DOWN』)。原題末尾の“DOWN”は、きっとこの映画の評価の低さを表したものだろう。

とにかく今回は、『ブレット・エクスプレス 弾丸特急』を紹介していこう。

時速500キロ弱で走る超特急に何が起こった!?

電気力学浮上式鉄道、<N800Aティブロン>。ロサンゼルスからサンフランシスコまでを、最高時速300マイルで繋ぐこの超特急は、鉄道王ジャック・バンタおよび記念すべき140人の乗客と共に、本日初運転を迎えることとなった。

「既存の鉄道よりも自動化が進んでおり、安全維持管理は容易」と自信満々のジャックだったが、ティブロンの出発後、彼のもとに一本の電話が届く。その声の主いわく、「ティブロンには爆弾が仕掛けられており、時速200マイル以下に速度を落とした途端、爆発する」のだという。続けてデモンストレーション用の爆弾が、最後尾の6号車で炸裂。乗客はパニック状態に陥ってしまった。

焦燥するジャックに対し、1億ドルを要求する声の主。絶体絶命の状況下で立ち上がったのは、偶然ティブロンに乗り合わせた退役軍人のケスラー・ブリックス。ケスラーの知識と、FBIに所属するジャックの旧友スコット・マディソンの支援を頼りに、乗客は爆弾の無力化に挑む。

一方、乗客の安全を優先し、得体の知れない凶悪犯に1億ドルを振り込んだジャック。が、依然として爆弾は解除されず、相手はどうも金銭目的とは思えぬ不可解な言動を繰り返す。また、一般客として乗車していたケスラーの過去には、今回の騒動と意外な繋がりがある様子。

恐るべき策謀を秘めたまま、弾丸特急ティブロンはサンフランシスコへと爆走し続ける……。というのが、本作の概要である。

あきらかに『スピード』なサスペンス・パニック設定

さて『ブレット・トレイン』というよりも、明らかに『スピード』シリーズ(1994年ほか)を意識した設定の本作。しかしながら舞台が超特急という、事前にしっかり敷かれたレールの上をそのまま一本道で走り続けるスタイルのため、「高速を維持しなければならない」という緊張感は薄い。一応中盤には、「先に待ち構えているトンネルを抜ける際、車体に受ける抵抗に対し出力を上げなければ今の速度を維持できないが、無理に出力を上げると内部機構がオーバーヒートするかもしれない」などの修羅場イベントがいくつか提示される。

が、台詞で語られる状況の深刻さに反して、実際にはどの脅威もあっさり淡々とクリアされる上、そもそも低予算早撮りのアサイラム映画なので、<視覚的にド派手なパニック演出>自体が最終盤まで出し惜しみされ、どちらかというと会話劇中心の単調な画作りが続く。超特急列車を作品の舞台に据えた試みは新鮮だが、どこかで見たような車内のセットも併せ、基本的には普段のアサイラム製パニック映画と代わり映えしない内容だ。

キャラ造形やパニック演出など高評価(当社比)ポイント解説

一応、爆弾を仕掛けた凶悪犯のうちの一人が、まるでギャグ漫画のようにふざけた末路を迎える点は、(どこまで意図したものかは知れないが)なかなか面白かったところ。その他、乗客の安全を優先し、あえて凶悪犯に屈する道を選んだ鉄道王の、好感が持てるキャラクター造形などは評価ポイントだろうか。クライマックスには当社比で及第点のパニック演出も用意されてはいる。

さすがに両手を上げてオススメはできないが、クライマックスで見られるパニック展開のような見所が、序盤~中盤にももう少しだけ多ければ、また評価は違ったかもしれない……そんな惜しさを感じなくもない、アサイラム版『ブレット・トレイン』だ。

『ブレット・エクスプレス 弾丸特急』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年4月放送

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