廃校を地域創生拠点に〝再生〟 複合施設「YAMAGA BASE」がオープン 運営会社代表は卒業生 熊本県山鹿市

複合施設「YAMAGA BASE」の共同代表を務める中原功寛さん(右)と島田裕太さん=3月29日、山鹿市

 熊本県山鹿市鹿央町の旧千田[ちだ]小跡を改修し、コワーキングスペースや宿泊所を設けた複合施設「YAMAGA BASE」が1日、オープンした。運営会社「やまがBASE」の最高経営責任者(CEO)、中原功寛[かつもと]さん(37)=同市=は同小の卒業生で、米ハーバード大大学院で経営学修士(MBA)を取得した起業家。かつての学びやは地域創生や事業創出の拠点に生まれ変わる。

 旧千田小は市中心部から車で15分ほどの距離にあり、2017年3月に廃校となった。敷地面積は約3万平方メートル、2階建ての校舎や体育館などを合わせた延べ床面積は約3千平方メートル。昨年7月、やまがBASEが市から約5200万円で取得し、10月に着工した。

メディア向け内覧会で公開されたコワーキングスペース=3月29日、山鹿市

 1階には開放感のある交流ホールや、市内の古墳を模した人工芝のライブラリースペースを整備。料理教室が開けるキッチンスタジオ、会議室、シャワー室も備える。八千代座などをモチーフとしたレクリエーションスペースには、灯籠師が和紙とのりだけでつくった照明も配置され、山鹿らしさを演出する。

 2階にはコワーキングスペースや動画の収録、配信などができるイノベーションスタジオなどを設けた。普通教室を改装した宿泊施設はカプセルとドミトリーの2種類があり、ワーケーションや農泊などの利用も見込む。厨房[ちゅうぼう]を備えたかつてのランチルームは飲食店のテナントやイベントにも利用できる。総事業費は約3億円で、国の交付金も活用した。

旧校舎の2階に設けられたカプセル型の宿泊施設

 起業家、ビジネスパーソン、地域住民らの利用を想定。経営学も学ぶことができ、スタートアップ(新興企業)を支援する。中原さんは「起業家として世界に羽ばたく人が出てほしい。緑に囲まれた場所でくつろぐこともできる。利用者がワクワクする場所を提供したい」と抱負を語る。

 中原さんは鹿本高を卒業後、米国の大学に進学。帰国後はベンチャー企業の設立に参画し、農林中央金庫に就職した。再び渡米し、ハーバード大大学院で学んだ異色の経歴を持つ。

 熊本に戻ったのは21年。実家の農業を手伝う中で、地方が抱える課題を再認識した。少子高齢化で働き手が減少して産業が衰退。雇用機会が失われ、人口流出に拍車をかけている。

 こうした悪循環を断ち切りたい─。山鹿市内で廃校活用の実績を持つ、あつまるホールディングス専務の島田裕太さん(44)との出会いもあり、旧千田小の再生プロジェクトが始動。並行して、やまがBASEなど複数業者で協同組合をつくり、島田さんが代表理事となって組合員の事業者に働き手を派遣する事業もスタートした。

「YAMAGA BASE」のオープニングセレモニーでテープカットをする中原功寛さん(中央)と島田裕太さん(左隣)=3月30日、山鹿市

 3月30日のオープニングセレモニーで中原さんは、「まだ完璧な施設ではないが、多くの人に活用してもらって一緒につくり上げたい」とあいさつ。テープカットして完成を祝った。

 会員制で、時間貸しも可能。問い合わせは、info@yamagabase.com(本田清悟)

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