能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県の被災地にこの春、生活の拠点を戻した1人の若者がいる。秋田県北秋田市出身の櫻井一愛(ちなり)さん(23)。日常に必要不可欠なインフラも復旧途上だけれど、戻ると決めた理由がある。きょうから新年度。決意を誓った再出発の春を追った。
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「戻ってきたな、って感じですよ」。3月28日、能登半島の先端・珠洲市。櫻井さんは、元日の地震まで暮らした海沿いの自宅で段ボール箱を運び出しながら苦笑いした。
同世代とのシェアハウスだった自宅は地震で損傷。1カ月前に一時帰宅して片付けはしたが、傷みはむき出しだ。珠洲での生活を再開するに当たり、当面の仮住まいとして、市内のアパートに引っ越すことになっていた。