採用のプロが伝えたい!北海道で“いい人材”と出会うためにやるといいこと:マルゴト 今 啓亮さん

「どれだけいい人材を採用できるか」

これは、北海道で起業をした方、そしてこれから起業を考えている方にとって事業の成長や成功のためにぜひ考えていただきたいことです。

今回お話を伺ったのは、全国で累計400社以上のベンチャー・スタートアップ・中小企業の採用支援事業を展開されている採用のプロ、マルゴト株式会社の代表 今 啓亮(こん けいすけ)さん。

2023年9月に自社の採用ノウハウを注ぎ込んだ初の著書「『本当にほしい人材』が集まる採用の定石」を出版した今さんに、即戦力を採用したいけどなかなか“いい人”が集まらないと悩む北海道のベンチャー企業や中小企業が意識すべきポイントを教えていただきました。

(取材日:2024年2月・インタビュー:濱内勇一、原くみこ・文:掛橋愛理)

ロカロウ地方の小さな会社でも、採用で勝てる秘訣が丸わかり?!マルゴト株式会社 代表取締役 今 啓亮(こん けいすけ)
北海道北広島市出身。家庭教師の仲介サービスで北海道大学在学中に学生起業。26歳でカンボジアに移住し、人材紹介事業で二度目の起業を果たす。2年後に会社を譲渡し帰国。2015年 東京でマルゴト株式会社(旧株式会社ビーグローバル)を設立。月額制の採用代行サービスをフルリモートワークで提供。2022年 本社を札幌に移転。2023年9月 初の著書『本当にほしい人材」が集まる中途採用の定石』を出版。## 一人起業家の採用は『共感』と『信頼』で大手企業にも勝てる!

原:まず、1人で起業した方が「誰かいい人を採用したい」と思ったとき、どうすればいいのか、ヒントをいただけたら。

今:僕は、福利厚生などの条件面や、広告へのお金のかけ方を考えると、大手とストレートに戦っても勝てないって思っています。まず大前提としてそこは認識しておきたいところですね。

ロカロウじゃあ、どうしたらいいのかな~?

今:まず1つは、代表の方の起業した想いをしっかり伝える、ということをやってほしいです。

濱内:といいますと?

今:「なぜ起業したのか?」「事業を通して実現したいことは何か?」代表の方の価値観や将来の展望をオープンにすることで、「それイイね!」「一緒に働きたい!」と思ってもらう、「共感」が決め手になる、ということです。「こういうことがやりたくて起業しました」という想いに共感してもらうということです。

そして2つ目はリファラル採用。

濱内:「誰か、いい人いない?」と周囲に聞いて紹介してもらうやり方ですよね。

今:そうです。リファラルは、知り合いやそのまた知り合いを採用する…というような感じですね。

もともと知っているので信頼があるんですよ。「○○さんが言うなら話聞いてみようかな」とか、「○○さんがいるなら一緒に働きたいな」と人の繋がりが採用につながる。リファラルは起業初期の頃にもおすすめです。

濱内:うちほぼリファラルです

今:そうなんですね。いいですよね。

ロカロウリファラル採用を取り入れている濱内社長にも質問してみたよ。

原:濱内さんはどのように「いい人」を見つけているんですか?

濱内:例えば何かイベントや交流会などでお会いした方が「実は転職を考えていて…」など、もしそういう話をされたら、覚えておく。そして常にアンテナを張っておいて、その方に動きがあったらすぐにお誘いしてみるとか。Facebookとかで繋がって、長期的な関係を構築して、隙あらばお声がけしたりしています。

原:なるほど。人が必要になった時から動き始めるのではなく、その前から目をつけて(笑)おくのですね。

小さな仕事を外注し、人を増やす

原:人脈が少ない場合や、人のつながりをたどるだけでは限界がある場合はどうしたら良いですか?

今:業務委託で人脈を増やすという方法もあります。小さな仕事をいろんな人にお願いしていくんです。

そうすれば「この人とは何だかウマが合いそうだな」、「この人は自分の事業に興味を持ってくれていそうだな」というのを検証できるんです。それをきっかけに、フルで社員として入りませんか、と採用に繋げていく方法も今はすごく増えてます。

濱内:小さな会社にミスマッチで入ってしまうと、その会社の伸びも鈍化してしまうし、入社した側も思ったような活躍ができず楽しくないと思うので、前もって相性をお互いに確認できるのは確かにいいですね。

ロカロウ

仕事してみないとわからないところもあるもんね…。

今:あと、今は副業がOKの会社もあるので、転職活動していない方にもまずは副業でやってみない?と声をかけ小さな仕事を発注して、いざ転職するとなったタイミングでまた声をかけるという手段も取れます。これも、1人起業家など小さな会社ほどいいと思います。

“行動すべて”が発信のコンテンツ

原:会社で働く人たちの雰囲気を知ってもらう「採用広報」の活動の一つに「情報発信」があげられますが、小さな会社ほど「何を発信したらいいかわからない」という声が聞かれます。

今:まずは代表さんがどうして創業したのか、なぜ頑張っているのかといった話を発信しましょう!この想いの部分はおそらくいっぱいあると思いますよ!

ほかにも、例えば今日こういう人と会いました、こういう会話の中で目からうろこでした、という経験。あとは営業中に言われた言葉など…、どれも全部がコンテンツです。

まだあります。社員の人でこういう経歴があって、こんなふうに活躍してます。というストーリーもコンテンツ。なので、行動していたら絶対コンテンツがあるはずなんです。

原:経営者自身が日々の行動の中で気づいたことを発信していく、ということですね?

今:そうです。「今月こういうことしました」でもいいです。それで十分会社の雰囲気は伝わります!

原:必ずしも、社員にインタビューして採用活動のための記事を書いたりしなくちゃいけない、ということでもないんですね。

ロカロウ社内で起きていること、社員の様子、ネタは日常の中にあるっていうことだね。改めて社内のことを見てみよう!## 発信は、いい人材と出会うためにとても重要

原:とは言え、「社内の様子なんか発信して本当に意味あるの?」という声が聞かれそうですが…。

今:いえいえ、とっても重要です!転職先を探している立場の方からすると、会社の『中』のことって全然わからないんです。その会社のホームページに書いてあることを全部読んだとしても、想像がつきにくいんです。

濱内:事業内容はわかるけど…っていうことですね。

今:そうです。事業内容はわかるけれど、実際に働いている人たちはどんな雰囲気なんだろう?どんな職場なんだろう?という観点では情報が足りていない企業が多いと感じます。

わかりやすく有名なブランドバッグの会社で例えると、バッグのことはよく知ってます、と。こういう感じですよね、良いデザインですよねってわかっています。でも、その会社の職場の雰囲気がどんな感じなのかと訊かれるとそれはわからない、ということってあると思うんです。そこを伝えていくのが「採用広報」になっていきます。

濱内:そもそも職場を広報するなんていう発想がない。するかしないか、じゃなくて、もう考えたこともなかった、っていう経営者が多そうですね…。

今:会社でどんな事業をやっているのかという点ももちろん大事ですが、転職活動をしている人からすると、「自分はどんな場所で、どういう働き方をしてどんな仕事するんだろう」という方にもものすごく興味があるんです。

ロカロウ「職場の雰囲気を知ってもらう」ために何か発信できることがないか?っていう発想が、採用広報のスタートなんだって。## 面接までにどれだけ情報を提供できているか

濱内:求職者の方は、おそらく面接になってようやく会社の雰囲気とか、社内の人と触れ合うことができるわけですものね。いざ内定を出しても、「面接で何だかちょっと怖そうだったからやっぱり辞退します…」っていう話にもなりかねませんね。

今:求職者が面接までに、どのぐらい会社の中のことを知っているかはすごい大事なんですよね。そしてこれを意識して情報発信ができている会社さんは少ないです。

原:…ということは、逆に考えると小さな会社さんでもそれをやれば…?

今:いい方と巡り合える可能性が増えるということになります!

中途採用は穴埋めじゃなく事業の成長に不可欠な“即戦力”

濱内:これからの時代、採用においては新卒だけでなく、中途採用についての考え方も見直していく必要があるんでしたよね?

今:そうなんです。でも北海道ではまだ、首都圏で活躍していた優秀な人材を採用することで企業が急成長できる可能性がある、という考え方があまり浸透していないように感じます。

原:中途採用は退職者の穴埋めととらえている企業も多いのかもしれません。

今:中途採用に力を入れることでどんな結果が得られるか、一度考えてみるといいですね。人材不足がこれからどんどん進む中で、良い人材と出会うためにはそうした発想の転換をぜひしてみてほしいです。

狙い目はUターン人材。採用で大手に勝つチャンス!

原:北海道で起業した私たちが“良い人材”と出会うために日頃どんなことを意識していけばいいのでしょうか。

今:北海道ブランドは強いと思っています。僕自身も北海道出身でUターンで戻ってきましたが、道外へ出た同級生に話を聞くと、みんな「いつか北海道帰りたいんだよね」、「北海道が好きなんだよね」って言うんですよ。これもチャンスだと思ってて。

原:どういうことですか?

今:20代、30代で東京で色んな経験をして高いスキルを身に付けた人たちがUターンで戻ってくる可能性がある。そのときに、自分の会社を選んでもらおう、という風に考えてみると、むしろ競合が少ない、まだチャンスあるのかなと思ってて。

原:なるほど!

今:実は名古屋のスタートアップ支援課の方と話したことがあって、そしたら名古屋はUターンが全然来ないっていうんです。

濱内:そうなんですか。

今:東京や大阪から名古屋までは新幹線で1時間ちょっと。すぐに行って帰って来れてしまうから、いつかUターンで戻って働きたいっていう場所になりにくいらしいんです。「名古屋では“Uターン”という言葉、使わないです」って言われました((笑))。

その名古屋の方は「Uターンとか取り込めないんです。北海道いいですね~!」といった話をしてましたね。

原:それを聞くとますます北海道はチャンスなんですね!

今:北海道の大学出身者で東京に行って働いている人、生まれは北海道という人はいっぱいいます。東京で育ててもらってバリバリ活躍してた人がUターンで北海道の企業に入ってくれたらものすごくいい循環だと思うんですよね。それなのに北海道企業は、中途採用って穴埋めかなという感じなので、もったいないんです。

彼らがいつか戻ってきたくなるような職場を北海道の企業さんが提供し続けていけば、いつかそういう優秀な方たちがUターンで戻る選択肢になっていく。

そうやっていい人を採用できたら会社も成長して、北海道経済も今以上に元気になって、また北海道で働きたいという人たちが増えて…という良い流れを作ることがきっとできると思っています。このブランディングは絶対に使った方がいいです!

ロカロウいい流れを作れるのに、中途採用に本気で取り組んでいる北海道の企業は少なそうだけど、チャンスもいっぱいあるんだね!## まとめ

本日は、北海道の中小企業が、採用のために意識すべきポイントを伺いました。
もし、読んで下さった方の中に新卒採用にウェイトを置いていた方がいたら、これを機に、中途採用への考え方を改めてみませんか?

また、情報発信も大切ですね。
とにかくまずは多くの人に会社の雰囲気を認知してもらうため、できることから始めましょう。「日々の活動全てがコンテンツ」です!

取材協力

マルゴト株式会社 今 啓亮さん
住所:〒060-0061 北海道札幌市中央区南一条西十六丁目1番地323 春野ビル3F
https://marugotoinc.co.jp
https://twitter.com/konkeisuke
https://note.com/konkon4192今さん初の著書はこちら ▶ 「『本当にほしい人材』が集まる採用の定石」

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