長崎人権平和資料館が再開 岡正治氏の性暴力問題 放置の背景を自己検証 新展示で説明

岡正治氏のコーナーを撤去し、新設した「性差別と性暴力」コーナーを説明する崎山昇理事長。展示内容は一部を除き検討中で空白も多く、随時追加する=長崎市、長崎人権平和資料館

 長崎市西坂町の長崎人権平和資料館(旧岡まさはる記念長崎平和資料館)が1日、約半年間の休館を経て再開した。約30年前の性暴力問題が発覚した平和運動家の故岡正治氏のコーナーを撤去するなど、休館中に展示内容を更新。新展示では、岡氏の名を冠しながら被害女性の告発を3年余り放置した問題の背景を自己検証し、「保身」「二次加害への意識の低さ」といった観点から説明した。
 岡氏は朝鮮人被爆者の実態解明に尽力し、1994年死去。その遺志を継ぐ市民有志が95年に資料館を開き、日本の戦争加害責任などを展示してきた。一方で元記者の女性が2020年、生前の岡氏から「性暴力を受けた」と告発。だが同館の運営法人は直ちに対応せず、昨年になって女性に謝罪して休館し、館名や展示内容を変更した。
 同館はこうした経緯について、岡氏のコーナーに代わり新設した「性差別と性暴力」コーナーで説明している。冒頭に「正義や人権を標榜する組織で性暴力事案が発生した時、どのような行動をとりがちなのか」と問いを設定。資料館側が問題を放置した背景として▽「問題が公になると外部からの攻撃材料になる」という組織の保身▽「ひどいことはしたが立派な功績もある」と、加害と功績をてんびんにかける二次加害思考-などがあったとした。
 さらに「多大な功績」は個人の欠点や加害性を覆い隠し、加害の道具にも使われると指摘。岡氏については「平和運動の“偉人”として、また聖職者としての立場や権威性、業績を加害に意図的に利用していたことは明らか」と断じた。一方で朝鮮人被爆者の実態など、岡氏が仲間と明らかにした事実は「歴史的記録」として資料展示を続ける。
 現代の性暴力に関する展示など内容検討中の部分もあり、随時追加する。
 同館によると、被害女性から「日本ではまだまだ、たくさんの性被害者が苦しんでいる状態。資料館の取り組みが広く知られ、性被害者の人権を大切にする社会に変わっていくことを願う」とコメントが寄せられたという。

岡氏の性暴力問題に対する資料館側の対応について、経緯や背景、反省点などをまとめた展示パネル

© 株式会社長崎新聞社