「カピバラ写真家」の渡辺さん 長崎バイオパークで個展 国内外で撮影17年、野生の姿も 

長崎バイオパークでカピバラを撮影する渡辺さん

 「カピバラ写真家」として活動している渡辺克仁さん(53)=東京都在住=が、「カピバラの聖地」とも呼ばれる長崎バイオパーク(長崎県西海市西彼町)で個展を開いている。タイトルは「かわいさと、きびしさと」。17年間にわたり国内外で撮りためた中から、日本では見ることができない野生の姿など約100点を展示している。
 「ブサカワいく、シャッターを押すたびにいい表情が撮れたりする。生きている環境なども違うので、『これで終わり』というものがない動物」
 渡辺さんがカピバラと初めて出合ったのは2006年6月。動物本来の動きを引き出す「行動展示」で人気を集めていた旭山動物園(北海道)を観光で訪れ、たまたま見かけた。他の動物たちが生き生きと動いていた中、カピバラだけはのんびりとした様子。自身の仕事が忙しかったこともあり、心を癒やされた。マイペースな性格に引かれ、カメラを始めるきっかけになった。
 当時のカピバラは、全国的にはまだまだ無名の存在。どんな動物かとインターネットや本で調べたが、なかなか情報を得ることができなかった。バイオパークの伊藤雅男園長をはじめ各地の動物園や水族館を訪ねて情報を収集。「最初は分からないことが魅力だったが、調べれば調べるほど新たな発見があり、それも魅力だった」という。
 カピバラへの愛着は年々深まり、今ではカメラを手に年間100日以上、各地の動物園や水族館を巡る。バイオパークには通算260回ほど来ている。
 野生の姿を追い求め、生息地の一つ南米ブラジルに6度渡航した。「よく水辺の動物と紹介されているが、草原にもいるし、そして街中にもいる。不思議な光景で、最初目にした時は本当に興奮した」と振り返る。生息域が広大な湿原で、特に子どもは警戒心が強いことなどから、ドローン撮影にも取り組んでいる。
 これまでカピバラの写真集を国内で4冊、台湾で1冊発刊。バイオパークのカピバラカレンダーなども手がけている。20年には「カピバラ写真家」の肩書を商標登録した。
 個展会場は「カピバラの池」のそば。ブラジルで見たカピバラに関する解説なども展示しており「野生と飼育下の状況を比較し、知識を得た上で改めて生のカピバラたちと触れ合うと、より興味が湧き楽しめますよ」と語る。5月20日まで。

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