伊リーグPO準決勝、石川祐希が奮闘もミラノ黒星発進…敵地は安堵「イシカワにはいつも苦しめられる」【現地取材】

現地時間3月31日、バレーボールのイタリアリーグ/スーペルレーガで2023-24シーズン・プレーオフ準決勝の第1戦が行なわれた。男子日本代表の石川祐希が所属する6位アリアンツ・ミラノは、2位シル スーサ ヴィム・ペルージャとアウェーで対戦し、セットカウント1-3(17-25、23-25.25-23.22-25)で敗れて黒星発進となった。

イタリアがイースター休暇の真っ只中に行なわれたこの一戦を現地取材した。

3位ピアチェンツァを逆転で退けて、昨季に続き準決勝の舞台へ戻って来たミラノ。2022-23シーズンは、クラブ史上初の4強入りを達成した後、4連覇を狙うチヴィタノーヴァに2勝先勝して決勝へ王手をかけたが第5戦で惜しくも敗れて涙を呑んだ。

その雪辱を果たすため臨む今季の準決勝。相手は、1年前に準々決勝で退けたペルージャだ。昨季はレギュラーシーズン無敗も、石川の桁違いなパフォーマンスで快進撃を続けたミラノに屈して、9年間続いた欧州大会出場(チャンピオンズリーグ8回、CEVカップ1回)が途切れた。それでも、今季は、クラブ・ワールドカップ連覇に加え、スーペル・コッパとコッパ・イタリアを制してすでに国内2冠。確かな成績を残している。

石川のイタリア初年に所属先モデナで指揮を執ったアンジェロ・ロレンツェッティ監督が率いるペルージャの先発は、イタリア代表の正セッター、シモーネ・ジャンネッリ、アウトサイドヒッター(OH)ポーランド代表カミル・セメニュク(ポーランド)とウクライナ代表オレフ・プロツニスキー、オポジット(OP)チュニジア代表ワシム・ベンタラ、ミドルブロッカー(MB)ブラジル代表フラビオ・グアルベルトとイタリア代表ロベルト・ルッソ。

準決勝を3連勝で勝ち抜けて2週間の準備期間があった相手に対し、5試合を消化して中3日のハードスケジュールで臨むミラノの先発は、エース石川とその対角に古巣トレンティーノを昨季王座へ導いたブルガリア代表のベテランOHマテイ・カジースキ。MBはブロックで、レギュラーシーズン断トツ首位のアルゼンチン代表アグスティン・ロセルとプレーオフで1位に立つマルコ・ヴィテッリ(イタリア)、OPに急成長中のベルギー代表フェレ・レゲルス(ベルギー)、司令塔には、アンダーカテゴリーのイタリア代表で複数の優勝と個人賞に輝きフル代表入りへ期待大のパオロ・ポッロを起用した。
今季の対戦は3試合すべてがフルセットマッチ。ミラノが2戦2勝したレギュラーシーズンは、石川が腰痛から本格復帰した昨年12月の前半戦(アウェー)で2セットダウンから逆転で勝利し、3月の後半戦(ホーム)はセットを奪い合った末に勝利して石川がMVP(マン・オブ・ザ・マッチ)を獲得した。
1月のコッパ・イタリア準決勝では、辛くも逃げ切り勝利したペルージャだが、リーグ随一の激しさで知られる本拠地『パラ・バルトン』の応援はミラノを威嚇しながらも、警戒感が入り混じっていた。

開始から間もなく、ミラノは準々決勝のピアチェンツァ戦で課題を残したレセプションに苦しむ。中盤以降も相手のサーブに押されて戦況は変わらず。そんな中、気概を見せたのは石川。ライトのエンドライン際でボールをつなぎ、間髪入れずに中央へ走り込んで強烈なバックアタックを叩き込むと、相手サポーターはこぞって頭を抱えた。しかし、サーブを含むミスが相手の2倍を超え11回を記録したミラノは、大差で試合を先行された。

第2セットはレゲルスのエースと石川の絶妙なレセプションからミドル勢が挙げた連続得点で優位に立ったミラノ。その後、互いのサーブで流れが二転三転する。ルッソのサーブで逆転されるも、カジースキのエースに続いて石川が1枚ブロックで呼び込んだラリーを自ら得点に変え、ポッロのブロックでリードを奪還。しかし、以降にサーブエラーが頻発するなど1セット目と同様にミラノのミスが二桁に達し、反して武器のサーブが走ったペルージャにリードを譲る。それでも終盤、石川のこのシリーズ100得点目で巻き返しを開始。相手のセットポイントを2度にわたり回避して23-24まで詰め寄ったが、惜しくもポッロのサーブがネットにかかり後がなくなった。

第3セットは最大4点のビハインドを抱えるが、後半にロセルの2連続エースと石川の後衛からの一撃で相手の背中を捉える。すると、これまで幾度も苦汁を飲まされたミラノの粘り強さに怯んだか、ペルージャに誤打が出始める。カジースキと替わったキューバ代表OHオスニエル・メルガレホの奮闘が加わり、終盤に逆転。2度目のセットポイントをヴィテッリのブロックでものにしてミラノがセットを奪い返した。
第4セットは相手のアタックミス2本の後、ポッロのエースで序盤に2点のリード。このセットで勝負を決めたいペルージャは、膝の故障で長らく先発外のポーランド代表ウィルフレド・レオンを投入する。その相手主将にすぐさま得点を決められたミラノは、石川のサーブが僅かにラインを割った後、カジースキの打球がアウトとなり同点。後半、レオンのエース2本などで3連続ブレークを許して後退するが、決定力抜群な石川のバックアタックやメルガレホのブロックなどで反撃を仕掛け接戦へ持ち込む。ところが、乱れたレセプションをなんとか上げたレゲルスのニ段トスがネットを越えてしまい、得点を献上。その後も奮闘したミラノだったが、最後はエースを決められて黒星発進となった。
石川はアタックのみで10得点を記録。試合には敗れたものの、威力炸裂のバックアタックにエンド席のペルージャ首脳陣は唇を噛んで天を仰ぎ、すぐ傍のメディア関係者からは、「うぉー」という歓声とともに拍手が沸き起こった。

ペルージャにとって、隙を見せれば必ず牙をむくミラノは脅威。天敵が反撃の様相を見せる度に、大音量の応援がピタリと止まり会場は緊張に包まれた。勝利を見届けたサポーターたちが、胸に手を当てほっと息を吐くジェスチャーを交わしながら帰路に就く姿は、ミラノから先勝を挙げた意味の大きさを物語っていた。また、試合後、同クラブのメインスポンサーに名を連ねる某社のフラヴィオ・チェケッティ会長と談笑した際には、「イシカワとミラノにはいつも苦しめられる。今日もかなりヒヤヒヤさせられた」と強豪の本音を代弁してくれた。

なお、準決勝初戦のもう1試合は、高橋藍が所属する5位モンツァが首位トレンティーノにストレートで敗れた。

第2戦は日本時間4月4日午前3時30分開始予定。ミラノは中2日で迎えるホーム戦で勝利奪取に挑む。

現地取材●佳子S.バディアーリ

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