『虎に翼』伊藤沙莉のストレートな物言いが気持ちいい! 早くも寅子の法律家への第一歩が

女性のいちばんの幸せは結婚なのか。当時としては当たり前だった結婚という問題に寅子(伊藤沙莉)は葛藤していた。『虎に翼』(NHK総合)第2話では、寅子が教授の穂高(小林薫)と裁判官の桂場(松山ケンイチ)と運命の出会いを果たした。

帝国大学を卒業し、貿易会社に勤めている横山(藤森慎吾)とのお見合いへと挑んだ寅子。男女関係なく、対等な関係性を臨んでいた寅子は社会情勢について一丁前に語り続けていると、横山の態度が一変し「分をわきまえなさい、女のくせに生意気な」と言われてしまう。当時の女性はまだ社会進出が進んでおらず、参政権もまだない時代。女性が男性に対して、持論を展開するのはもってのほかだった。だが、寅子はそんな空気感に対して疑念を抱いており、むしろ横山と一緒に語り合いたかったのだ。当然、お見合いは破談してしまうが、寅子はどこか安心しているようにも見えた。

一方で、猪爪家は親友の花江(森田望智)と寅子の兄・直道(上川周作)の結婚に向けての準備で忙しくなっていた。花江の両親も交えて晩餐会に向けての準備が進んでいく中で、ある時、猪爪家に三河屋がやってくると、母親から促された花江は「お母様、お手伝いします」と媚びへつらう。そんな様子を見ていた寅子は目を大きく見開いて驚いた表情を見せる。当時としては当然の光景だったのかもしれないが、令和の時代からすると、どこかむず痒い気持ちになるのは筆者だけだろうか。寅子と同じ気持ちだ。

その夜、結婚を祝した晩餐会が行われる。寅子の父も花江の父も準備を自分たちでしたかのような口ぶりで話しをしているが、実際は寅子と花江と母親のおかげだった。女性が男性を立てなければいけないという前時代的な価値観は現在でも色濃く残っているが、当時から寅子はそんな理不尽な習慣に嫌気が差していた。そんな両家のやりとりを見て、寅子が放った「私はあの顔苦手だわ」のストレートな物言いがとても気持ちいい。

●猪爪家に下宿していた優三(仲野太賀)の謎が明らかに

気になっていた優三の謎も明らかとなった。早くに両親を亡くし天涯孤独の身となっていた優三(仲野太賀)。そんな彼を猪爪家は5年前に下宿させたのだった。優三は弁護士になるために大学で法律を学んでいたが、高等試験(司法試験)に合格することができず、昼間は帝都銀行で働き、夜は夜学で学ぶというハードスケジュールを送っていた。

はる(石田ゆり子)が親戚の不幸で香川・丸亀に里帰りすることになったため、その間の家事は寅子がすることになっていた。そんな矢先、優三の弁当を作り忘れてしまった寅子は、優三が通う明律大学に届けに向かう。

男ばかりが通う大学へ女性一人で訪れた寅子は、男子学生にからかわれつつも、無事に優三がいる教室にたどり着く。そこで学生が「婚姻にある女性は無能力者」と発言しているのを耳にした寅子は、思わず「はっ?」と大声を出してしまう。桂場から問い詰められ、怒られるのを覚悟したその時、穂高が現れ、寅子に対して「言いたいことがあれば、言いたまえ」と告げるのだった。これが寅子にとって法律家としての一歩となる。

所々で挟まれる尾野真千子による語り口と伊藤沙莉の歯切れのよい演技も相まって、テンポ感が心地いい。理不尽に対して勇気を持って立ち向かっていく寅子の生き様が今から楽しみだ。
(文=川崎龍也)

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