27歳で自死したおいへの後悔胸に「若者孤立ほっとけない」 京都の男性が居場所づくり

支援により農場で働き始めた男性を訪ねる山上さん(久御山町西一口)

 山上義人さん(64)は、貧困やひきこもりなどで悩む若者の支援に取り組む。当事者を支援団体や自治体につなぐことに力を入れており、「若い人たちを応援するには一人では何もできない。社会の関心を高め、みんなで支えていかないといけない」と語る。

 3月下旬、以前ひきこもりだった30代男性が働く久御山町西一口の農場を訪ねた。昨年、自身が携わる、中小企業に人材を仲介するNPO法人「いっぽねっと」(京都市南区)を通じて男性を農業会社への就職へと結びつけた。久々に会った男性の明るい表情に「すごく成長している。本当に良かった」と目を細めた。

 多様なNPOに所属し、活動している。宇治市で子ども食堂を運営する「すまいるりんく」の監事をはじめ、貧困者を支援する「京都暮らし応援ネットワーク」や、地域振興に取り組む「まちづくりねっと・うじ」の副代表理事などを務める。「『ほっとけない』という気持ちが行動させる」という。

 府北部の旧加悦町(現与謝野町)出身で、過疎の農村で育った。幼い頃からいじめや貧しい生活を経験し、「なぜ世の中に差別や貧困が存在するのだろう」と疑問を感じた。大学卒業後、府職員に。退職までに公害対策や農林業支援、保健所などを担当した。

 NPOなどの民間団体に参加したのは40代後半のころ。若者を支える活動に本腰を入れ始めた。

 源泉には、27歳の若さで自ら命を絶ったおいの存在がある。亡くなった原因は分からないままで「自分に何かできたのではないのか」という後悔の念が残り、「若い人たちの力になりたい」との思いを強くした。

 自ら発起人となり、2015年に府内の各種団体が情報交換を行うための会議「子ども・若者の貧困京都プラットフォーム」を立ち上げた。最近では今年2月、宇治市内の子ども食堂の関係者らとともに安定した食生活ができていない子を支援するグループ「宇治・食と子どものネットワーク」を発足させた。

 「自己責任社会と言われるようになり、孤立を深める人たちが増えている。悩みや苦しみを受け止める居場所や仕組みをつくっていきたい」。柔和な笑顔から真剣なまなざしをのぞかせる。京都府宇治市五ケ庄。

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