焦点:トルコ与党、地方選で惨敗 インフレとイスラム教徒離反が響く

Daren Butler Ece Toksabay

[イスタンブール 1日 ロイター] - 3月31日投開票のトルコ統一地方選は、エルドアン大統領が率いる公正発展党(AKP)が国政与党としての過去20年超の間で最悪となる敗北を喫した。不況に加え、イスラム教徒有権者の一部離反が響いた。

大統領は惨敗から一晩明けた4月1日、首都アンカラのAKP本部に集まった群衆に向けて敗北宣言し、政策を見直す方針を表明した。ただ、党運営や政策の軌道修正について具体的な言及がなく、各種改革の先行き不透明感が広がった。

一方で、国政最大野党の共和人民党(CHP)から最大都市イスタンブールの市長に立候補した現職イマモール氏は得票率が51%に達し、AKP候補に11ポイントの差を付けて勝利した。CHPは大半の主要都市で圧勝し、保守的なトルコ中部でも支持を拡大。政界地図が塗り替わった。

CHPの勝利でイマモール氏は次期大統領選におけるエルドアン氏の有力対抗馬として地歩を固めた。31日の勝利演説では「1人が国を牛耳る時代は今日をもって終わった」と気炎を上げ、数千人の支持者を沸かせた。

専門家らの選挙結果分析によると、約70%にも達する高インフレに伴う生活苦と、国民の間に亀裂を生じさせるエルドアン流の政治手法に対して有権者の間にうんざりしたムードが広がっていることが今回の選挙結果につながった。エルドアン大統領がもくろんできた任期満了となる2028年以降の続投を可能にする新憲法制定は望み薄となったという。

国政でAKPは多数派だが、新憲法制定には有権者の支持を取り戻すか、国民投票で十分な票を獲得する必要がある。

また、今回の選挙には、パレスチナ自治区ガザでの紛争への対応の在り方が影響したとみる専門家もいる。議席を伸ばしたイスラム主義の野党、新福祉党はエルドアン大統領よりも対イスラエル強硬論を主張したことが奏功。敬虔なイスラム教徒の票をAKPから引きはがし自陣営に手繰り寄せる一因になったという。

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