ベラジオオペラを頂点に導いた横山和生騎手の「正確な馬場読み」「仕掛けのタイミング」はお見事! 一方で、不可解な11着敗戦のダービー馬に一体何が?

初のGⅠ戴冠となったベラジオオペラは父ロードカナロア、母エアルーティーン(父ハービンジャー)という血統を持つ社台ファーム産の牡馬。2歳の千葉サラブレッドセールにおいて、4851万円(税込み)の高値で落札された。

2歳11月のデビュー戦(阪神・芝1800m)から、年を越してセントポーリア賞(1勝クラス、東京・芝1800m)、スプリングステークス(GⅡ、中山・芝1800m)と無敗の3連勝を記録。続く皐月賞(GⅠ、中山・芝2000m)は10着に完敗したが、日本ダービー(GⅠ、東京・芝2400m)は勝ったタスティエーラとタイム差なしの4着として春シーズンを終えた。

秋は菊花賞(GⅠ、京都・芝3000m)へ進む予定だったが、なかなか体調が整わずに出走を断念。12月のチャレンジカップ(GⅢ、阪神・芝2000m)で戦列に復帰すると、僅差で勝利。4歳となった今年は2月の京都記念(GⅡ、京都・芝2200m)の2着からスタートし、今回の勝利に結びつけた。

手綱を取った横山和生騎手は、「ダービーの悔しさをずっと忘れられなくて、今回はこの馬と絶対一緒に勝ちたいと思っていたので最高に嬉しいです」と言葉が弾んだ。「乗り方は(それまでの)レースを見ながら決めましたが、とても操縦性がいい馬なので、思い切って(前で)運びました。追い比べになると強い馬で、状態もすごく良かったので、最後も凌いでくれました」と、自身3つ目のGⅠタイトルに喜びを語った。

戦前は「今年の4歳世代はレベルに疑問がある」と言われ続けてきたが、結果論ではあるものの、菊花賞を回避してじっくりと調整したことによって馬自身の成長を促すことにつながったのではないか。そして、正確な馬場読みと、切れ味よりもしぶとさがストロングポイントである相棒を絶妙な仕掛けのタイミングで勝利に導いた横山騎手の好騎乗も光った。今回の相手がやや格落ちだったことは確かだが、ドバイ遠征組との対戦が楽しみな存在となった。
JRAではGⅠ初挑戦となったローシャムパークは、行き脚が付かずに後方からとなったが、向正面で思い切ってポジションを上げた戸崎騎手の策が活きた。終いはわずかに競り負けたが、この一戦であらためてポテンシャルの高さを示した。5歳にして、ここまで12戦とキャリアは少なく、晩成型の産駒が多いハービンジャーの仔だけにこれからの成長も見込めそうだ。

ファンを驚かせたのは、やはりルージュエヴァイユの3着激走だろう。これは菅原明良騎手の狙い通りの騎乗と思われる。というのも、直前の第10レースでも手綱を取った同騎手は、12番人気のブリュットミレジメでインを突いてハナ差の2着に導く「試走」を済ませていたからだ。それまで2019、20年は年間30勝台だったものの、21年から一気に75勝前後にジャンプアップ。思い切った騎乗で穴を開けるケースも多く、ますます目が離せない存在となっている。

その一方で、プレビュー記事で主軸に推したタスティエーラの大敗は非常に気がかりだ。鞍上に指名された松山弘平騎手はレース後、「いい形で競馬ができたと思ったのですが、結果を出せず申し訳ありません。これだけ負ける馬ではないですし、何もなければいいのですが…」と敗因に首を捻る。

呼吸に支障を来すDDSP(軟口蓋背方変位)があるという情報が伝わっていたが、同馬を管理する堀調教師は中間の追い切りで症状は出ておらず、状態の良さをコメントしていた。しかし、実戦でどうだったのかはまだ明らかになっておらず、タスティエーラらしい前進気勢を鞍上がうまくコントロールし、理想的な「前目のイン」にポジションを取っていただけに、そこから思ったように伸びず敗因は不可解。詳細が分からぬ今は、残念としか言いようがない。

文●三好達彦

3月31日、春の古馬中長距離路線の幕開けとなる大阪杯(GⅠ、阪神・芝2000m)が行なわれ、単勝2番人気のベラジオオペラ(牡4歳/栗東・上村洋行厩舎)が3番人気に推されたローシャムパーク(牡5歳/美浦・田中博康厩舎)との激しい競り合いを制して優勝。3着にはインから伸びた11番人気のルージュエヴァイユ(牝5歳/美浦・黒岩陽一厩舎)が入り、3連単の払い戻しは9万3050円の波乱の決着となった。

一方、1番人気に推された昨年のダービー馬であるタスティエーラ(牡4歳/美浦・堀宣行厩舎)は直線で失速して11着に大敗。上位人気のプラダリア(牡5歳/栗東・池添学厩舎)は6着、昨年の皐月賞馬であるソールオリエンス(牡4歳/美浦・手塚貴久厩舎)は7着に敗れた。

当日の馬場は「良」ではあるものの、やや時計がかかる状態。また、内ラチ沿い2~3頭分が荒れていたものの、さほどスピードは削がれることはなく、「前目のイン」が有利なトラックバイアスが見て取れた。
レースは好スタートを切ったスタニングローズ(牝5歳/栗東・高野友和厩舎)が先頭を奪い、11番枠から出たベラジオオペラがじわじわとポジションを押し上げて2番手へ。3番枠のタスティエーラも前目の位置を取りに行って、インの4番手をキープした。

第2コーナーを回ってだいたいの隊列が決まるとペースが落ち着き、1000mの通過ラップは60秒2のスロー。後方のまま直線へ向いたのではとても届かないと見たローシャムパークが、鞍上の戸崎圭太騎手に促されるように馬群の外を通って一気に2番手まで位置を上げる。続いてソールオリエンスも、10番手から4番手まで進出して勝負に出た。

直線で脚が上がったスタニングローズを交わし、2番手のベラジオオペラが仕掛けて先頭に躍り出ると、負けじとローシャムパークが馬体を併せに行く。そして、馬群のなかで息を潜めていたルージュエヴァイユが最内を強襲。3頭の激しい叩き合いとなったが、最後まで粘り切ったベラジオオペラがわずかにローシャムパークを抑えてゴール。ルージュエヴァイユはクビ+ハナ差で3着に食い込んだ。

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