夫婦で「年金23万円」に引き上げ、それでも「赤字」…日本人のキツすぎる老後

(※写真はイメージです/PIXTA)

「年金引き上げのお知らせです」……それでもなお、自助努力が求められる日本社会。辛い現状を見ていきましょう。

「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」

少子高齢化の進む日本社会。現在、全人口は約1億2,397万人ですが、2065年には8,808万人まで減ってしまうと予測されています(総務省統計局)。社会保障への不安が尽きないなか、今年の初めに厚生労働省から下記の発表がありました。

“●令和6年度の年金額改定についてお知らせします

〜年金額は前年度から2.7%の引上げです〜

総務省から、本日(1月19日)、「令和5年平均の全国消費者物価指数」(生鮮食品を含む総合指数)が公表されました。

これを踏まえ、令和6年度の年金額は、法律の規定に基づき、令和5年度から2.7%の引上げとなります。”

厚生労働省年金局発表『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金月額は、老齢年金が14万4,982円です。一方、国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額は、5万6,428円となっています。

その金額について、厚労省は下記のようにモデル例を示しています。

国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分)

令和5年度 66,250円 ⇒ 令和6年度 68,000円(+1,750円)

厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)

令和5年度 224,482円 ⇒ 令和6年度 230,483円(+6,001円)

現在、2人以上の世帯の平均消費支出は約28万9,467円です(総務統計局)。年金受給に加え、貯金を切り崩しながらでなければ生活していくのはなかなか難しいことがうかがえます。

今回は物価上昇により引き上げられた年金額ですが、油断は禁物。少し長い目で見てみると、年金平均受給額はゆっくりと着実に減っていっていることが分かります。

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老齢・退年相当の平均年金月額(老齢基礎年金分を含む)の推移を示したものである。

2000年:175,865円

2005年:165,083円

2010年:150,406円

2011年:149,687円

2012年:148,422円

2013年:145,596円

2014年:144,886円

2015年:145,305円

2016年:145,638円

2017年:144,903円

2018年:143,761円

2019年:144,268円

2020年:144,366円

2021年:143,965円

出所:厚生労働省『公的年金財政状況報告 令和3(2021)年度』

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人生100年時代となり、「老後」が20〜30年続くことが当たり前として考えられている今、十数年間の年金額減少が日々の暮らしにどのような影響を及ぼすか、想像に難くないでしょう。

「自助努力」で勝ち取る「豊かな未来」…

日本の公的年金は、国民年金と厚生年金の2階建て。ここに私的年金を上乗せして、「老後資金の備えをしよう!」というムーブメントが活発化しています。

確定拠出年金(企業型確定拠出年金/iDeCo)、国民年金基金……公的年金にも言えることですが、私的年金の仕組みは複雑かつ、デメリットがあるのも確かです(たとえばiDeCo。60歳までは引き落としが原則不可能です)。資産形成は早め早めに行うに越したことはないものの、焦ったゆえの決断は避けたいものです。

現役世代は「もう年金を払うのやめたい。自分でどうにか貯めよう/稼ごう」……と思うかもしれませんが、不払いという選択肢をとってしまうと、年金の受給資格そのものがなくなってしまうことも。脱税と同じく、避け続ければ相応のペナルティを受けてしまうものです。

「豊かな老後」は、自助努力によって勝ち取る未来なのでしょうか。日々を生き抜く社会人は、穏やかな老い先を描けないまま、今日も働いています。

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