「プジョール以上にうまく、ピケ以上の安定感」バルサの17歳クバルシは“史上最強のCB”かもしれない【コラム】

とんでもないセンターバックが誕生したものだ。

FCバルセロナの17歳センターバック、パウ・クバルシは今後、「史上最高」と言われても不思議ではない。両足を自由自在に用い、ビルドアップは特級レベル。速さや高さといずれも弱点ではなく、果断さと集中力も突出。そのハイスペックぶりは、年齢を考えた場合、比類がない。

そもそも、十代でブレイクするアタッカーというのは決して少なくないのだが、ディフェンダーというのは意外なほど限られている。なぜなら、攻撃選手はインスピレーションや若さの勢いのままに、脚光を浴びることがしばしばある。しかし守るという行為は、経験による積み重ねで修正、改善、適応を繰り返すことによって、上達する側面が非常に大きいのである。

十代の守備者は、そもそも肉体的に非力と言える。弱さや脆さが目立つ。90分間を通した場合、熟練のアタッカーには大概やり込まれてしまうのだ。

しかしながら、ピッチに立つクバルシは歴戦の猛者のような落ち着きがある。

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チャンピオンズリーグ(CL)、ラウンド16のセカンドレグ、ナポリ戦は象徴的だった。

クバルシは左センターバックで先発しているが、昨シーズンのセリエA得点王ヴィクター・オシメーンを相手に、コンタクトでも一歩も怯まなかった。ラインコントロールでオフサイドの罠にかけたかと思えば、身体をぶつけて機先を制す。

そして最高強度の圧力を受けても、それをあざ笑うかのように裏返すパスを通した。その展開力は、他の追随を許さない。とりわけフェルミン・ロペスとは阿吽の呼吸で、裏を突くロングパスも通していた。

ナポリ戦ではゲームMVPを受賞したが、それにふさわしい輝きだった。

さらに驚くべき点は、ナポリ戦後である。こうしたスーパーゲームをやってのけた後、若い選手は様々な理由から同レベルのプレーは継続することができない。ところが、次のアトレティコ・マドリードとのアウエー決戦でも、クバルシは強力な攻撃を完封。0-3で完勝の立役者の一人になったのである。

「ケガさえなければ、15年間、センターバックは安泰だろう」

スペイン大手スポーツ紙『アス』は、そう言ってクバルシの才能に称賛を惜しまない。これは誇張ではないだろう。バルサの歴史を作ってきたカルレス・プジョール、ジェラール・ピケという伝説の選手たちと比較しても、何らそん色はない。同年齢時の比較で言えば、プジョール以上にうまく、ピケ以上に安定感があり、確実に上だ。

史上最強のセンターバック誕生の瞬間かもしれない。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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