国文化財の元料亭「翠明荘」(青森・弘前市)、複合飲食施設に 薬局運営会社が取得

複合飲食施設として整備する計画が進められている弘前市の「翠明荘」=2020年9月

 2020年にコロナ禍の影響で閉店した青森県弘前市元寺町の料亭「翠明荘(すいめいそう)」の建物を、弘前市や青森市などで調剤薬局を運営するタイキファーマシー(本社藤崎町)が取得したことが2日、関係者への取材で分かった。翠明荘の建物は明治から昭和初期にかけて建てられ、国登録有形文化財に指定されている。新たに複合飲食施設として整備する予定で、建物とともに市民に親しまれてきた「翠明荘」の名も引き継ぐ。取得金額は非公表。

 タイキファーマシーによると、建物内は懐石料理やそば、和菓子のほか、イタリアンやフレンチなど昼夜問わず飲食を楽しめる空間にする計画という。建物内をいくつかの区画に分け、地元で飲食店を開きたい若者向けに格安の賃料で3~5年間貸し出し、将来の独立を支援する。オープン時期は未定。

 建物は津軽銀行頭取を務めた実業家の高谷英城氏が別邸として建築した。1895(明治28)年建築の奥座敷、土蔵のほか、1934(昭和9)年に建てた日本館、洋館、門、あずまやの計6棟が国登録有形文化財(建造物)。内部は、ドイツ製シャンデリアや見事な彫刻が施された廊下扉などで飾られた趣のある空間として市民に親しまれてきた。

 これまで旅館や料亭として活用されてきたが、コロナ禍の影響で2020年4月に休業し、営業を再開できないまま同年9月に閉店。以後、料亭を運営していたムジコ・クリエイト(本社弘前市)が建物を管理しつつ活用策を模索してきた。譲渡は3月29日付。異業種への参入となるタイキファーマシーの松山佳生社長は「地域経済が継続的に発展していくことに微力ながら貢献したい」とコメントした。

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