<レスリング>男子フリースタイル・アジア予選代表選手らが大会前最後の合宿スタート

▲アジア決戦を前に最後の合宿がスタート

8月のパリ・オリンピックの代表内定選手、4月11日(木)からキルギス・ビシュケクで行われるアジア選手権と19日(金)から同所で行われるパリ・オリンピックのアジア予選に出場する選手による男子フリースタイルの全日本チームが4月2日、東京・味の素ナショナルトレーニングセンターで大会前の最後の合宿をスタート。報道陣に練習を公開した。

パリ大会の代表を内定している2選手は、ともにアジア選手権には参加しない。65kg級の樋口黎(ミキハウス)は、アジア予選に出場する65kg級の清岡幸大郎(日体大~三恵海運)と激しいスパーリングを展開。「ふだんの練習場所が同じなので、いつもガチンコ・スパーリングやっています。(清岡は)後輩としてではなく、一人の選手として尊敬しています。技術、フィジカル、練習対する姿勢と考え方、学ぶことがたくさんあります」と話す。

代表に内定してから、テクニックもメンタルもハイレベルになっていることを実感し、「この調子を維持し試合に向けてのコンディションを整えたい」と気合いを入れた。

▲樋口黎(左)と大学の後輩となる清岡幸大郎の激しいスパーリング

2月に父親になった感想を問われると、想定外の質問だったためか、「そうですね…」と言って言葉が続かずに苦笑。何とか「無事に生まれてくれてよかった」と話し、夫人の家族に「レスリングに専念できる環境をつくってもらって感謝しています」と続けた。

74kgの高谷大地(自衛隊)は、世界選手権が終わってから、けが、コロナ、インフルエンザなどに悩まされたそうだが、「やっておくべき不調はほとんど終わりましたね」と笑い、今は好調そのもの。「残り4ヶ月、人生をかけて、悔いのないように練習に打ち込みたい。世界選手権までも自分を律して生活していましたが、その結果が3位。それ以上の成績を出すには、それ以上に厳しくしないとなりません」ときっぱり。

オリンピックへ向けて、「一切の甘えなしです。最高の舞台に甘えを持って闘うのは失礼。甘え、と思うものは、すべて排除するつもりです」と言い切った。

▲「すべての甘えを排除してオリンピックに向かう」と言う高谷大地

樋口は、6月6~9日にハンガリー・ブダペストで行われる世界レスリング連盟(UWW)ランキング大会に出て最後の実戦練習を予定。高谷は「練習でしっかりと土台をつくりたい」として、大会出場なしでオリンピックを迎える。


アジア予選出場選手の声

■65kg級・清岡幸大郎(日体大~三恵海運)「樋口黎選手と毎日練習しています。ほとんど負けていますけど(笑)、自分が強くなるために欠かせない存在です。きょうは、しっかりポイントを取れましたが、最近、頭の中でレスリングをすることが多く、相手を想定する力が上がっているからかな、と思います。(イメージトレーニングは)肉体的な疲労がないので、ずっとやり続けることができます。毎日、練習前にやり、終わってからもやります。

予選は、勝つイメージしかしていません。勝てる自信がありますし、過信じゃない、と思います。マットに立ったとき、これだけやってきたんだし、何が来ても大丈夫、という気持ちになれると思います。想定外のケースを減らしていくことが、これからの課題。早く試合をしたい、という気持ちです」


■86kg級・石黒隼士(自衛隊)「コンディションはよく、体重の落ちもいいです。ただ、試合が近づくにつれ、失敗できない、という不安が動きに影響してくることを感じます。練習でどれだけ追い込み、どれだけいいコンディションをつくれるかが課題です。高谷(惣亮)さんが自衛隊に来てくれたとき、『思い切ってタックルにいき、失敗しても、そこから修正して成功へつながればいい。技術的な成功が自信になり、その自信が技術につながる』とアドバイスをいただきました。

(日本代表になったことで)多くの選手の人生を奪ったわけです。予選は、多くのことを背負っての闘いになります。今までに経験したことのない怖さですけど、それに向き合っていきます」


■97kg級・吉田アラシ(日大)「初めてのオリンピック挑戦ですが、あまり気負わず、深く考えずにやってきました。92kg級で去年のアジア選手権で優勝しましたが、97kg級の選手はもっとパワーがあるだろうな、と思ってやってきました。立ち位置とかを考えても、想像の世界になってしまうので、あまり考えずに自分のやるべきことを試合で出せるようにやっています。

予選は、イラン、ウズベキスタン、中国、カザフスタンをマークしています。強い選手が抜けてくれず(昨年の世界選手権で出場枠を取れず)、厳しいことは覚悟しています。緊張がない、と言えばうそになりますが、練習では何も考えずに打ち込むようにしています。日大の学生選手が出場するのは、金浜コーチ(良=1988年ソウル大会代表)以来になると聞いていますので、頑張りたい」


■125kg級・山本泰輝(自衛隊)「2月20日ごろにけがしましたけど、順調に回復しています。その期間は、自分のレスリングを見返したり、組み手の練習に集中できたりで、いい期間とまでは言いませんが、貴重な時間だったと思います。国内の試合は優勝が大前提で、その中で自分の勝ち方を出すことが大事ですけど、海外の試合は勝つことが大前提。勝ち方より、勝つことを優先して闘いたい。

2016年リオデジャネイロ・オリンピックの予選で初めてシニアの大会に出て、力の差を思い知らされました。怖いので先に攻めよう、と無理な攻撃をしたり…。しかし、少しずつ世界と狭まっている感覚はあります。重量級もできることを示したい」

© 公益財団法人日本レスリング協会