【ミャンマー】24年度は貿易黒字化目標、2年連続赤字[経済]

ミャンマー軍事政権は、2024年度(24年4月~25年3月)に貿易収支を4億米ドルの黒字に転換する目標を掲げている。昨年度まで2年連続で赤字を計上。軍政は輸入制限などの経済統制で収支の改善を図ろうとしたが、赤字幅は逆に広がった。輸出不振が続けば、経済統制が再び強まり、企業の事業活動などの混乱が一段と深刻になる恐れがある。

2日付国営紙グローバル・ニュー・ライト・オブ・ミャンマーによると、24年度の目標は輸出額が167億米ドル(約2兆5,300億円)、輸入額が163億米ドル。昨年度の目標はそれぞれ165億米ドル、160億米ドルだったが、輸出入共に増やす計画だ。

昨年度通年の実績はまだ公表されていない。商業省が発表した直近の公式統計(23年4月1日~24年3月22日)では、輸出が前年同期比11.8%減の143億1,200万米ドル、輸入が10.7%減の151億4,400万米ドル。貿易収支は、赤字幅が8億3,200万米ドルとなり、前年同期の7億3,800万米ドルから広がった。

経路別の貿易収支は、海上貿易の赤字幅が前年同期の42億7,500万米ドルから36億7,000万米ドルに縮小した一方、国境貿易の黒字幅が19.8%減の28億3,800万米ドルに悪化した。

軍政は米欧による標的制裁の対象が国営銀行などに広がる中、中国やタイとの国境貿易で人民元やバーツによる決済にシフトする「ドル離れ」を推進しようとしたが、国境地域での紛争激化が輸出の障壁となった。

国境を通じた輸出実績は対中が13.7%減の21億1,800万米ドル、対タイが9.7%減の30億8,100万米ドル。国境を通じた輸入は、対中が2.1倍の11億1,600万米ドルとなった一方、対タイが32.1%減の12億5,700万米ドルと大きく減った。

中国との国境検問所別の輸出額は、最大の玄関口である北東部シャン州ムセ経由が2割以上減少。同州チンシュエホー経由の輸出は、三つの少数民族武装勢力が中国国境近くで国軍への一斉攻撃「作戦1027」を開始した昨年10月下旬以降、停止状態が続いている。

北部カチン州では、国軍とカチン独立軍(KIA)との武力衝突が増えており、国境貿易が停滞するリスクが高まっている。KIAは、同州ルウェジェにつながる輸送路を占拠したとされる。

対タイでは、パイプラインを通じた天然ガス輸出が計上されるティーキー経由が微増だったが、ヒトとモノの往来が最も多い東部カイン(カレン)州ミャワディ経由が輸出入共に大きく落ち込んだ。

輸出全体を分野別で見ると、工業製品が18.6%減の87億2,800万米ドル、農産品が4.9%減の36億7,800万米ドルなどと主要項目が軒並み落ち込んだ。工業製品のうち、大半を天然ガスが占める政府部門が16.8%減の32億8,300万米ドル、衣料品が多い民間部門が19.6%減の54億4,500万米ドルだった。

財別の輸入額は消費財が17.3%減の23億6,300万米ドルと最も落ち込み幅が大きく、資本財、CMP(裁断・縫製・梱包=こんぽう)原材料、中間財もマイナスだった。

ミャンマー中央銀行は昨年12月、企業が輸出で稼いだ外貨の現地通貨チャットへの兌換(だかん)を義務付けた「強制両替」の対象を輸出額の50%から35%に引き下げた。強制両替では1米ドル=2,100チャットに固定される公定レートが適用され、輸出企業の不満の種となっている。国内企業間の外国為替取引での相場については一定の譲歩姿勢を見せ、輸出促進につなげようとしたが、今年に入って現地通貨安が一段と進み、輸入インフレを進行させた。

少数民族武装勢力による攻勢で劣勢となる中、軍政は立て直しのために2月に徴兵制の実施を発表したが、これがチャット安をさらに進行させている。各分野で手詰まりとなる中、しわ寄せが企業や市民に向かう構図となっている。

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