特殊詐欺の摘発率全国トップ 「予兆電話も110番」が効果 群馬県警

 群馬県警が2023年に認知した特殊詐欺被害に対する摘発した件数(摘発率)は98.8%で、全国で最も高かったことが2日までに、県警のまとめなどで分かった。迅速な初動捜査が効果を上げたとみられ、前年比8.5ポイント増だった。一方、交流サイト(SNS)や求人サイトを通じて詐欺に加担する若者が依然として目立っており、情報の周知など予防策の重要性も増している。

 県警組織犯罪対策課によると、23年に認知した特殊詐欺被害は164件(前年比53件減)で、摘発件数は162件(同34件減)に上った。県外で発生した事件の関係者も摘発したことで手口別の摘発率は、おれおれ詐欺138.9%、預貯金詐欺165%と、それぞれ100%を越えた。還付金詐欺は前年摘発がなかったが、52.9%に増えた。

 被害の発生予防と迅速な捜査につなげるため、県警は22年から、詐欺が疑われる「予兆電話」が自宅などにかかってきた場合、各警察署への一般通報ではなく、緊急性の高い110番で通報するように周知している。この結果、23年に110番で寄せられた予兆電話の情報は272件で、前年から77件増えた。同課は、こうした部門を超えた連携が奏功しているとみており、「緊密な情報共有で、(捜査員の)動き出しが向上した」と分析する。

 一方、摘発者数は38人にとどまり、15年の71人からは半減した。摘発された38人のうち、28人が20代以下で、知人の紹介やSNSを通じて、現金を受け取る「受け子」や、ATMから現金を引き出す「出し子」として犯行に加わるケースが多いという。

 捜査関係者によると、以前は逮捕者への聴取から、詐欺の勧誘者らを「芋づる式」に摘発することができた。しかし、近年はSNSや求人サイトを介して「闇バイト」に応募するケースも増えており、共犯者同士でも面識がなく、捜査が難しくなっているという。

 被害を防ごうと、県警は現在、電話に取り付ける対策機器の普及を図るとともに、SNSや駅のデジタルサイネージで動画を発信し、若者が特殊詐欺などの犯罪に手を染めないように啓発をしている。

 群馬県を含む全国の23年における特殊詐欺の認知件数は前年比1463件(8.3%)増の1万9033件で、直近10年間では最多となった。摘発件数は前年比579件(8.7%)増の7219件で、摘発人数は41人(1.7%)増の2499人だった。このうち20歳未満が446人と17.8%を占めた。

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