交通インフラ各社/受注者の働き方改革後押し、4週8休前提に工期設定

高速道路や鉄道各社が、建設業界の働き方改革につながる取り組みに力を入れている。時間外労働の罰則付き上限規制が適用された建設会社にとって、長時間労働の是正は経営の根幹と言える。労働環境改善や担い手確保が喫緊の課題となる中、高速道路会社では4週8休を前提にした工期設定や提出書類の軽減策を講じて受注者の働き方改革を後押ししている。
東日本、中日本、西日本の高速道路3社は日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)と会議体を設けて会員企業からのヒアリングなどを基に対応方針を策定した。全発注工事に4週8休を前提とした工期を設定。現場作業とは別に設計図書の照査を含む準備期間を30日、後片付け期間として60日加算する。今後は国が直轄工事で推進する月単位での4週8休の設定が可能かを探る。
首都高速道路会社も1週間未満の短い工期や災害対応などを除いて原則週休2日に対応している。労務費の補正や工事成績評定に必要な事項を定めたガイドラインを制定し、受注者の働き方改革を促している。
長時間労働の原因とされる書類作成を軽減する動きも加速している。東日本ら高速道路3社は過剰な資料作成を抑制するルールの制定や協議で使う資料の種類に動画も加えた。阪神高速道路会社は受発注者間で工事関係書類をオンラインで共有可能にするシステムを運用。首都高速会社も受注者が希望した場合、電子書類による中間検査や竣工検査を認めている。
夜間帯に集中しがちな鉄道工事で、JR各社が作業効率の向上に注力している。JR東日本は初終電列車や貨物列車のダイヤを見直したり、一部路線で日中帯の列車を運休して工事を可能にしたりするなどの対応を講じている。JR東海はプレキャスト(PCa)製品を積極的に採用し、列車の走行時間帯や安全確保など厳しい条件下を踏まえて工期短縮につなげている。
このほか、受注者もアクセス可能なクラウドサーバーへの電子納品(JR東日本)や工事書類の削減(JR東海)を通じて働き方改革をサポート。JR西日本は「国が主導する各施策を参考」にしつつ、週休2日制の導入に向けた取り組みを進める考え。
上限規制の適用が開始された中、インフラ管理者は限られた経営資源の中で受注者の働き方改革を後押ししている。高速道路会社と共に対応方針を検討してきた日建連の関係者は「今度はわれわれがそれに応える番」と気を引き締める。2024年度以降、受注企業は法令を順守するための「覚悟」が問われる。

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