地域発/丸本組(宮城県石巻市)、AI活用の画像解析技術で施工効率向上

宮城県石巻市に本社を置く丸本組(佐藤昌良社長)が画像データをAIで解析し、施工サイクルや事務作業の効率を高める技術を確立した。宮城県を流れる1級河川・吉田川の河道拡幅工事に導入。掘削や積み込み、土砂運搬の映像をAIで解析し、配置計画の最適化や段取りの改善に活用した。重機や運搬車両へのセンサー取り付けが不要で導入のハードルが低く、中小建設業への展開も期待できる技術は、2023年度インフラDX大賞で国土交通大臣賞を受賞した。
新技術を活用した現場は国交省東北地方整備局の北上下流河川事務所が発注した「令和3年度吉田川二子屋地区外掘削護岸工事」。19年10月の台風19号で起こった浸水被害の復旧関連として事業化された洪水対策区間の一部で、2万5200立方メートルの掘削工などが工事内容だ。隣り合う工区で河道掘削や土砂運搬が同時並行で進むため、ピーク時には1日当たり1000台のダンプが行き交う見立てだった。
「道路渋滞を可能な限り抑える目的で発注者と工期短縮に向け土砂運搬の効率を上げる検討を重ねた」と話すのは現場代理人を務めた高橋哲也工事主任。対応策として導入したのがトライポッドワークス(仙台市青葉区、佐々木賢一社長兼CEO〈最高経営責任者〉)と共同開発した「AIダッシュボード」だった。
建設現場の映像データをAIで解析して施工実績や生産性を定量的に把握するツール。吉田川二子屋地区外掘削護岸工事では、現場の対岸から現場の動きをカメラで撮影し、映像データをクラウドサーバーに送って解析し積み込み、停止など重機の挙動を判定。事務所の管制室でリアルタイムに解析結果を把握し対応できるようにした。データの可視化技術と組み合わせ、作業計画の最適化と工程短縮につなげた。重機やダンプの台数を調整して土砂運搬の待ち時間も低減。結果的に1日当たりの施工量が22%高まったという。
現場にはもう一つ、建設会社向けのシステム開発を手掛けるアーキット(札幌市中央区、三浦友直代表)が提供した「複合ナンバー解析AIダンプ入退場管理システム」も導入した。車両のナンバープレートを読み取り、掘削現場と土捨て場のダンプ入退場を時間帯ごとに記録。運行日報作成の自動化につながり、書類作成時間が1日当たり20分程度削減できた。
多数の重機が稼働する災害復旧や多工区にまたがる工事で特に導入効果が顕著に表れる。23年度の吉田川災害対策では地元建設会社7社が9工区で工事を施工。入退場管理システムとGNSS(全球測位衛星システム)を組み合わせ、事業全体でダンプのルート調整や台数制限に活用した。工種単位から現場など「全体の生産性向上への移行を推進する国交省の『ICT施工ステージ2』と合致する」と、丸本組の相澤秀行土木課長は説明する。
AI活用は苦情削減にも奏功。ダンプトラックに「10秒使用」を推奨しているタイヤ洗浄装置にAI監視を導入。洗浄時間が短ければ警告ランプが点灯する仕組みで泥などによる道路汚損対策を徹底し、苦情ゼロを達成している。
今後は「AIによる施工計画の立案や計画工程と実績の連動など、より高度な管理を目指す」(高橋主任)方針。丸本組の山本翔太郎常務は「次世代を担う子どもたちが安心して暮らせる環境を引き継いでいく責任が地場ゼネコンにはある」と話し、今後も「環境配慮を欠かさずDXを推進していく」と力を込める。

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