川勝平太静岡県知事が辞意表明 人事課が事前レクまでしていたのに失言した〝ナゾ解釈〟

静岡県庁(Googleストリートビューから)

静岡県の川勝平太知事(75)が2日、失言をきっかけに電撃辞任を発表した。川勝氏を巡っては職員向けの訓示が職業差別的だと批判が殺到。静岡県庁にも苦情が寄せられ、SNSでも反発が広がっていた。県庁には知事を補佐する新ポストが1日にできたばかり。どうして失言をしてしまったのか。

「6月の議会をもってこの職を辞そうと思う」

川勝氏は2日夕方、記者団に対して突然の辞任を発表した。問題となったのは1日に行われた新規採用職員向けの訓示だった。「県庁はシンクタンクです。毎日毎日、野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノを作ったりとかと違って、基本的に皆さま方は頭脳、知性の高い方たち。ですからそれを磨く必要がありますね」と発言していた。

この発言が伝えられるとSNSで「失言の極み」「職業差別もはなはだしい」と川勝氏への批判が巻き起こった。また、著名人らもメディアを通じて苦言を呈している。

静岡県庁には2日午後2時までに県内、県外合わせて電話とメールで189件の意見が寄せられていた。県庁によると、「驕った考え方だ」「静岡はモノづくりを誇っていたのではないのか」「生活者=納税者ということを分かっていないのではないか」などが代表的な意見だったという。

どうして失言をしてしまったのか。訓示の映像を確認するとペーパーを読み上げているのではなく、自由に話しているようにも見える。

県庁人事課の担当者は「事前に私どもから知事に対して、こういう発言をしていただきたいという内容を用意しています。社会人として仕事をする中でプロ意識を持ってほしい、その姿勢を大事にしてほしいといった内容です。それを受けて当日、知事が話されています」と、事前レクをしていたと明かした。レクを基に川勝氏はペーパーを用意せず話したという。

もちろん「知性の高い方たち」うんぬんの内容は事前レクにはなかった。「来る仕事を拒まない」「できる限りにおいて助力を惜しまない」「上にへつらわない」などの「公務員の規範」(同)をレクしていたとのことだ。

新規採用の職員向けだけに社会人としての自覚を促す内容というわけだが、それが川勝氏の解釈によって「知性の高い方たち」発言に変換されてしまったのか。前出担当者も「そこに表れているかは分からない」と首を傾げるばかり。川勝節というよりほかない。

一方で静岡県政に詳しい人たちからは「知事公室長は何をしていたのか」との指摘がある。知事公室長とは4月1日から新設された部長級ポストで、知事直属で知事と各部局との情報共有や調整を行う。また、NHKは「知事の言動を管理」と役割を報じ、川勝氏は3月の会見で「諫言や意見をする役割」と紹介していた。

川勝氏といえば失言が多いことで有名だ。例えば2021年には御殿場市について「コシヒカリしかない」と発言して批判を浴び、議会で辞職勧告決議が可決となっていた。この件では給与を返上すると言っておきながら返上してなかったとして不信任案にまで発展。昨年7月に1票差で否決されていた。

知事の補佐役として新ポストにはこうした失言を事前に防ぐことへの期待感もあったのだが、前出担当者は「知事と県庁内の各部局長との連携を図る。その調整役です」と失言対策は主な役割ではないと説明した。

いずれにせよ川勝氏は電撃辞任を表明。県民も知事公室長もあっ気にとられているだろう。リニア事業への影響もありそうだ。

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