岸田首相、裏金議員への処分で「騒動にケリ」望むも…「次は検察審査会」終わらぬ試練

自民党執行部は、政治資金収支報告書の不記載が5年間で500万円以上あった議員ら39人を、4月4日、党紀委員会で処分する予定だ。

「塩谷立元文科省と世耕弘成前党参院幹事長の2人には2番めに重い『離党勧告』処分が、下村博文元政調会長、西村康稔前経産相の2人は、3番めに重い『党員資格停止』または4番めの『選挙での非公認』になるのではないかとみられています。

塩谷氏は、前回選挙で比例復活当選ですので、党の公認がもらえないと、次回選挙はかなり厳しくなります。

そのほかの議員は、『戒告』という軽い処分で済みそうな感じです。岸田総裁は、この処分をもって、問題にけりをつけたい考えです」(政治部記者)

東京地検特捜部は、これまで4800万円の過少記載容疑で池田佳隆衆院議員と政策秘書を逮捕、大野泰正参院議員と秘書を在宅起訴、谷川弥一衆院議員と秘書を略式起訴した(肩書はいずれも当時)。

また、安倍派の会計責任者、二階派の会計責任者を在宅起訴、岸田派の会計責任者を略式起訴している。

記者が続ける。

「議員個人と秘書、そして会計責任者は立件されましたが、安倍派幹部7人、塩谷氏、世耕氏、下村氏、西村氏、松野博一前官房長官、高木毅前国対委員長、萩生田光一前政調会長については、会計責任者との共謀を認めるのは難しいとして、立件を見送りました。

しかし、この立件見送りが世論の反発を招き、岸田政権の支持率は下がり続けた。岸田総裁は、安倍派幹部の処分で、なんとしても支持率回復を図りたいと願っています」

4日の処分がはたしてどうなるのか見ものなのだが、一連の政治資金規正法違反問題の発端となった記事をスクープした、しんぶん赤旗日曜版の山本豊彦編集長は、「党紀委員会の処分ですべてが終わるわけではないと思います」とし、次のように続ける。

「安倍派幹部の7人の立件は見送られましたが、3月11日までに90人の国会議員が政治資金収支報告を訂正しました。訂正したということは、罪を告白したのと同じことです。訂正すればいいというわけでありません」

自民党国会議員を刑事告発してきた神戸学院大の上脇博之教授は、安倍派幹部の立件が見送られた後に「今後訂正される収支報告書を見て、追加告発していく。これで終わったとは思わない」と語っている。

上脇氏は、3月15日、世耕氏を政治資金規正法違反(不記載、虚偽記載)で東京地検特捜部に告発。3月22日には、萩生田氏や萩生田氏の関連政治団体の会計責任者らを、パー券ノルマ超過分2728万円を記載しなかったとして政治資金規正法違容疑で東京地検に告発した。

さらに29日には、丸川珠代元五輪相を、派閥からの還流金は政治家個人への寄付だとして、東京地検に告発状を送付した。

山本編集長が言う。

「これらが受理された場合、検察は捜査せざるを得ません。仮に不起訴となっても、検察審査会が待ち受けており、起訴すべきという議決が2度出れば強制起訴となります。

今後の告発次第ですが、4日の党の処分で逃げ切れるわけではない。今後、検察審査会という新たな試練が自民党国会議員を待ち受けているのです」

自民党担当記者が、党内の様子をこう話す。

「今回、岸田総理は自分を守ったわけです。自分が処分されないよう、二階さんに次の選挙は出ないと言わせたわけです。二階さんを処分すると自分も処分しなければいけないですから。

党内では『岸田さんは、結局、自分のために、今回の騒動を利用しているだけじゃないか。安倍派だけが悪いのか』と安倍派議員を中心にかなり不平不満が溜まっています。

非公認や離党勧告になれば、比例復活がなくなるわけですから、今後、確実に議席減につながります。厳しい処分を下せば下すほど、岸田総理の党内での求心力はますます低下するでしょうね。自民党議員のなかで、岸田総理に対する怒りは、爆発寸前です」

4日の処分で、自民党内は大混乱に陥るのか――国民を騙してきた自民党国会議員たちが無罪放免となる日は、まだまだ先になりそうだ。

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