歴史的転換点に立つ大阪市の喫煙規制(4)367カ所の喫煙所が必要という民間試算と140カ所で十分という大阪市

前向きに進んでほしい(横山英幸大阪市長)/(C)日刊ゲンダイ

面積約225平方キロの大阪市が路上全面禁煙に踏み切ったとき、本当に必要な喫煙所数はどれぐらいなのか。横山英幸市長は新設120カ所、改修20カ所の合計140カ所で十分との認識を示しているが。民間の調査会社が2022年11月に発表した試算では、市内に必要な喫煙所数は367カ所、喫煙所不足によってもたらされるビジネス上の悪影響は年間252億円に達するとの結果だった。

昨年2月に市議会に対して喫煙所整備の陳情を行った天王寺区商店会連盟の関係者は「必要な数の喫煙所が整備されなければ、喫煙所がある大型店舗に客が流れてしまう」と訴え、「ポピュリズムの危険性」を指摘する。

「民間機関による試算を見るまでもなく市が主張する140カ所の喫煙所数では明らかに不足しています。しかも新設の喫煙所については予算がかかる閉鎖型に固執している。たばこを吸わない方にも配慮したうえで、影響の少ない公共的なスペースでは開放型のパーティションタイプの喫煙所でも構わないと思いますよ。吸える場所の確保が大前提です。これだけの規模の自治体における市内全域での路上喫煙禁止は日本では初でしょうし、万博が近づく中で世界的に注目されるかもしれません。ただし、そうした人気取り政策の一方で、喫煙所不足で大きな影響を受ける弱者がいることを忘れてはなりませんよ」

これは由々しき事態である。路上喫煙禁止というと“罰金国家”のシンガポールが思い浮かぶ。指定の喫煙エリア以外での喫煙が発覚した場合、最高1000シンガポールドル(約11万2000円)の罰金が科せられる。しかし、一方的な排除ではない。そこには喫煙者への配慮もある。

「街なかにゴミ箱が至る所に設置されていて、その上部に灰皿が付いていますので、その周辺では喫煙が可能です。ホテルの玄関付近も同様ですので、喫煙難民になるといった事態は考えにくいですね」(シンガポール観光関係者)

同じことである。路上喫煙を全域で禁止するのであれば、ストリートの一角に喫煙所や灰皿を設置して喫煙者と非喫煙者が共存できる街づくりをすればいいだけのことである。年間308億円もの市たばこ税収入があるのだから、予算的には十分に可能なはずだ。横山市長の柔軟な発想の転換、政策推進の幅の広さ、実効性に期待したいものである。 (おわり)

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