「いかに空気を変えていけるのか」新制度で実質手取り10割 男性の育休取得は進むのか【ともにはぐくむ】(1)

子育てや教育を取り巻く課題、そして未来に向けた取り組みについて考える「ともにはぐくむ」。1回目のテーマは「男性の育休」です。

【写真を見る】「いかに空気を変えていけるのか」新制度で実質手取り10割 男性の育休取得は進むのか【ともにはぐくむ】(1)

少子化が社会問題化する中、静岡県は2024年度、中小企業の育休中の手取りが実質10割になるように独自の支援策を始めました。対象となるのは子どもが生まれた直後限定の「育休」で、期間は1か月ほどです。

休んでいる期間の給付率は67%で、県が13%を独自に支給、社会保険料の免除を踏まえれば1か月限定ですが実質10割戻るという仕組みです。

男性の育休取得を後押ししようと現場でも積極的な取り組みが加速しています。

ミルクをあげるのは、静岡市の市議会議員、島直也さんです。第二子の雫くんが産まれ、3月から育休入り。今は妻の真理さんの実家で子育てに奮闘します。静岡市議会史上初めての育休取得者です。

<育休中の島直也静岡市議>
「大変ですね、妻に比べれば大したことはないと思いますが」

雫くんの夜泣きは夫婦で協力して乗り越え…沐浴はもっぱら島さんの担当。すでに得意分野です。

<島さんの妻・真理さん>
「どうしても仕事でいないということも多かったので、家にいてくれるのは助かります」

第二子が生まれた今遊び盛りの長男・巧くんの相手も島さんの重要な役割。

<育休中の島直也静岡市議>
「全く疲れ知らずというか、ずっと遊んでいますね。こっちが疲れますね」「(育児の)大変さが分かると(妻に)優しくなれると思う。育休の取得率が上がったら離婚率が下がるんじゃないかと思う」

育休の認知度が上がる一方、静岡県の調査では、男性の育休取得は2割程度にとどまります。女性と比べると圧倒的な差があるのが現実です。さらに、大企業に比べ、従業員300人以下の中小企業の方が取得率が低い傾向にあります。

静岡市清水区にある板金加工工場の山崎製作所。

金属製のかんざしなどを製作しています。社員数は25人で、これまで育休をとった社員は男女合わせても一人です。

<山崎製作所 山崎かおり社長>
「いろんな働き方を考えられている方に多様性のある方々に働いてもらいたいですし、そのためにも(育休制度を)整えた方がいいなと切実に思っております」

育休が取りやすい環境も一つの企業の魅力。人材確保につながる可能性もあります。そこで山崎社長は男女関係なく育休取得を推進するため「わかりやすい育休のマニュアル」を整備しました。

<山崎製作所 山崎かおり社長>
「入ってくるお給料はどうなるのかとか、それが結構大きな心配要素だと思うんですよ。その辺をこういう形で、具体的にママの場合はこれだけ、3パターンがありますよ、パパの場合この2パターンがありますよと」

2人目の子どもを検討している山田さん。会社の取り組みに加えて手取りが実質10割になる静岡県の制度を歓迎します。

<山崎製作所 山田翔太さん>
「やっぱりお給料がない状態で休むのはなかなか悩むところになるのでそこが保障されればすごい育休が取りやすくなるポイントですね」

<滝澤悠希アナウンサー>
2023年、半年の育休を取った和田記者です。

<和田啓記者>
個人的には手取り10割というのは2024年度からの制度なので自分は利用できなかったのは少し悔しいなと。

<滝澤悠希アナウンサー>
和田さんは半年の育休取得をしていましたが取得のハードルはどんなところにあると感じましたか。

<和田啓記者>
やはり会社の理解を得られるかという点だと思います。私が上司に「半年育休を取りたいです」と報告したときには「抜けてしまうのは正直痛い」という本音が垣間見えました。上司も育休とったことはなく、もともと男性が育休を取る発想がなかったわけですから当然の反応かなと思います。最終的には前向きに応援してもらえて無事、半年間育休を取れました。

法令として「事業主は原則、従業員の育休取得の申し出を拒めない」となっています。

<滝澤悠希アナウンサー>
育休は会社の義務であり、労働者の権利になっているんですね。

<和田啓記者>
新しい制度を活用しながら、いかに空気を変えていけるのか、その転換期に来ているのだと思います。

© 静岡放送株式会社