【感染症ニュース】医師「子宮頸がんはワクチンで予防」 ヒトパピローマウイルス感染症を防ぐために… 小学校6年〜高校1年相当の女子は公費でHPVワクチンを受けられます

平成9〜19年度生まれの方も、現在公費の対象に!

ヒトパピローマウイルス感染症とは?

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、一度でも性的接触を経験したことがある女性であれば感染の可能性があるウイルスです。感染してもほとんどの人ではウイルスは自然に消えますが、一部の人は子宮頸がんを始め、肛門がん、膣がんなどがん、尖圭コンジローマなど、多くの病気を引き起こすことが知られています。日本では毎年約1.1万人の女性が子宮頸がんを発症し、毎年約2900人が亡くなっています。患者は20歳代から増えはじめ、30歳代までにがんの治療で子宮を失ってしまう人も年間に約1000人います。

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HPVワクチンの定期接種

女性がヒトパピローマウイルスに感染しないための予防として、HPVワクチンがあります。現在定期接種となっていて、小学校6年〜高校1年相当の女子は公費でHPVワクチンを受けられます。現在HPVワクチンは2価、4価、9価の3種類があり、2、4価のワクチンでは子宮頸がんの原因の50~70%を、9価のワクチンでは原因の80〜90%を防ぎます。また、HPVワクチンでがんになる手前の状態(前がん病変)が減るとともに、がんそのものを予防する効果があることもわかってきています。HPVワクチンの接種は、病院や診療所で受けられます。医師と相談の上、どれか1種類を選択することになりますが、ワクチンの種類や接種する年齢によって接種の回数や間隔が異なるので、医師の指示に従って接種を進めてください。また、接種には保護者の同意が必要です。
副反応については、接種を受けた部分の痛みや腫れ、赤みなどの症状が起こることがあります。ワクチンの接種を受けたあとに、まれですが重いアレルギー症状(呼吸困難やじんましん、頭痛・嘔吐・意識の低下、手足の力が入りにくい)が起こることがあります。また広い範囲の痛み、手足の動かしにくさ、不随意運動といった多様な症状が報告されています。接種後に重篤な症状として報告が会ったのはワクチンを受けた1万人にあたり3〜5人です。

日本では接種率が低い

HPVワクチンは世界保健機関(WHO)も接種を推奨しており、2020年11月時点で110か国において公的接種が行われ、カナダやイギリス、オーストラリアなどでは接種率が約8割となっています。しかし、日本では2000年以降に生まれた女性の接種率が低く、より多くの人がヒトパピローマウイルス感染症を発症することが懸念されています。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「日本ではHPVワクチンの積極的勧奨が控えられていた時期があって、その時期にワクチン接種の年代であった女性の多くが、接種を逃しています。そこで今、定期接種の対象ではない年代の方にもワクチンを受けていただくための機会が提供されています。接種は合計3回ですが、完了するまでに約6か月かかるため、接種を希望される方は早めにご検討ください」としています。

キャッチアップ接種の対象となる方々は?接種可能な時期は?

国内で、HPVワクチンは、2009年に承認され、2013年から接種が開始されましたが、接種後に体調不良を訴える方が現れたため、国は積極的な勧奨を控える事態となっていました。その後、国内外の研究で、安全性に関するエビデンスが蓄積され、2022年に国は、積極的勧奨を再開しました。国が安全性を確認する期間に、HPVワクチンの接種を逃した方のための接種(キャッチアップ接種)の機会を特例で設けています。
対象者は、この2つの条件を満たされている方です。
・誕生日が1997年4月2日〜2008年4月1日に生まれた女性
・過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない
※過去に1回あるいは2回のみ接種したことがある方は、残りの回数を公費で接種できます。

キャッチアップ接種を希望する方は、お早めに!

HPVワクチンは定期接種の対象となる16歳ごろまでに接種するのが最も高いですが、それ以上の年齢で接種しても、ある程度の有効性があることが国内外の研究で示されています。また研究では性交経験によるHPV感染によって、ワクチンの予防効果が減少することが示されていますが、性交経験がある場合でもワクチンの予防効果がなくなってしまうわけではありません。公費による接種は2025年3月31日までですので、早めに医療機関にご相談ください。
また、子宮頸がんの予防のためには、子宮頸がん検診を定期的に受診することも大事で、ガンの早期発見・早期治療につながります。

引用
厚生労働省:「HPVウイルスの接種を逃した方に接種の機会をご提供します(リーフレット)」、「HPVワクチンについて知ってください(リーフレット)」、「HPVワクチンについて知ってください 子宮頸がん予防の最前線(ホームページ)」、「HPVワクチンについて(第24回厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会 資料2-3)」

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏

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