【4月3日付編集日記】通学路

 毎日通る道も、そのときどきの気持ちや天候一つで違った風景に見えることがある。大人が見落としがちな変化にも敏感な子どもは、草花や虫に目を凝らしては足を止める。特権とばかりに通学路で道草をくうのが得意だ

 ▼作家の津村記久子さんの通学路にまつわる記憶は、小学1年にさかのぼる。一緒に下校していたのが、花を摘み蜜を吸うのが上手な友達で、津村さんは、そのおこぼれにあずかっていた。人生で最も野の花が身近にあった時期かもと、エッセー「花咲く通学路」で述懐する

 ▼入学してからわずか4カ月で転校したのに、いい思い出しか残っていないという。「不意に断たれた物心がつく前の友情は、いつまでも美しく、そして不思議だ」と結んでいる

 ▼まもなく小中学校の入学式。なにもかも初めてづくしの小学1年生は、しばらく保護者らに見守られながらの登下校になろう。中学生になれば自転車やバス、電車で通うこともあり、学校までの風景が一変する

 ▼卒業と同時に縁遠くなる通学路。思い返してどんな記憶が刻まれているだろう。友達と交わした何げない会話だったり、ちょっとした道草で感じた季節の変化だったり。たくさんの思い出ができますように。

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