子どもの感性(4月3日)

 男の子がふと、目の前のリンゴに疑問を抱く。本当は大きなサクランボや卵ではないか―。常識を超えて想像力を膨らませる絵本「りんごかもしれない」が最新の「小学生がえらぶ こどもの本総選挙」で1位に輝いた▼絵本作家のヨシタケシンスケさんのデビュー作だ。「当たり前」との見方を少し変え、子どもの発想を刺激する。福島市の荒井小では、柔らかな考え方を磨くのに活用している。リンゴのイラストに絵を描き加え、車やコンビニに変身させる▼「ヘビは気持ち悪い」。親の印象を押し付けないよう、福岡県で爬虫[はちゅう]類を展示している施設が看板を設置した。「保護者の価値観が植え付けられることがある。お子さま自身から出る感情を大切にしてほしい」。メッセージは交流サイトで話題となり、共感する声が相次いだ▼ヘビの毒から薬や美容液が作り出された。体を覆う潤滑油は、新たなコーティング剤を生み出す可能性があるという。不気味だと敬遠していては、気付けなかったに違いない。少子化は何かと将来への不安が尽きない。そんな重荷を、大人は子どもに押し付けないのが肝要だろう。みずみずしい感性が押し込められては元も子もない。<2024.4・3>

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