障害を負った時にどんな「制度」や「給付」が使えるのか?【正解のリハビリ、最善の介護】

ねりま健育会病院院長の酒向正春氏(提供写真)(C)日刊ゲンダイ

リハビリの目的は、病気やケガによって何らかの機能や能力に障害が生じた患者さんに対し、歩行や日常生活動作と作業といった機能と能力を回復させ、「在宅生活や仕事への復帰を目指す」ことにあります。とりわけ18歳から65歳未満の方は、障害を負っても「誰かの役に立つ」と実感し、生きがいを持って人生を歩んでいくために、ぜひ仕事に復帰して欲しいと考えます。そして日本では、そのために有用な制度やサービスが整備されています。

何らかの障害を負ったとき、年齢に応じて使える制度が変わり、65歳未満では「障害者総合支援法」が定められています。障害のある方が、日常生活や社会生活を営むうえで必要な障害福祉サービスなどが定められた法律です。

障害福祉サービスは、大きく分けて「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つが中心です。自立支援給付は、在宅介護の支援や、就職のための訓練支援などを組み合わせて利用できます。地域生活支援事業は、障害のある方が地域で日常生活や社会生活を送りやすくするために、各自治体によって行われる支援サービスです。

仕事復帰の観点からみて、特に大切なのが自立支援給付の中にある「就労支援サービス」です。就労移行支援、就労定着支援、就労継続支援があり、一般枠や障害者枠で復職することができます。

障害が重度で、すぐに一般企業で働くのが難しい方でも、就労継続支援の「A型」か「B型」を利用できます。A型は雇用型とも呼ばれ、事業所と雇用契約を結びます。事業所により行える作業は変わりますが、月に約8万円の給料が支払われます。さらに障害が重度な方ではB型が選択されます。非雇用型と呼ばれ、事業所と雇用契約は結びませんが、作業の「工賃」として月に約1万8000円がもらえます。このA型かB型の就労支援を使うことで、復職できた方もたくさんおられます。

65歳未満では、このような形で働く機会の提供を受けながら、一般企業への就労に向けた訓練や支援のサービスを利用できるのです。何らかの障害がある方にとって、「仕事をして給料をもらっている」という状況自体が、人生の張り合いや生きがいになります。こうしたサービスがあるということを知ったうえで、積極的に利用してもらいたいと思っています。

■65歳以上は介護保険のサービスに切り替わる

一方、65歳以上になると「介護保険法」のサービスを受けることになります。65歳になるまで障害者総合支援法のサービスを受けていた方でも、介護保険のサービスが優先されるように切り替わります。脳血管疾患による障害では、40~64歳の方でも介護保険が優先されますが、介護保険にないサービスは障害者総合支援法を利用することができます。

介護保険で利用できるサービスには、居宅サービス、施設サービス、地域密着型サービス、福祉用具サービス、介護予防サービスなどがあります。この中で、リハビリサービスを受けられるのが居宅サービスで、「訪問リハビリ」「通所リハビリ」「入所リハビリ」に分けられます。

訪問リハビリは自宅で専門的なリハビリを受けられます。担当の療法士によって技量の差が大きいという問題はありますが、楽しく体を動かすことが大切です。楽しく体を動かせてもらえない場合は技量が優れた療法士に代わってもらうことをおすすめします。

通所リハビリには、デイケアとデイサービスがあります。デイケアでは担当の療法士による個別リハビリを受けることができます。一方、デイサービスは“お預かり”の生活支援が主な役割で、集団リハビリも行われます。このデイサービスの事業所の中に、われわれが提唱する「攻めのリハビリ」を集団リハビリで取り入れている施設があり、今後はピアサポートも含めた地方の街づくりの核になると期待しています。

入所リハビリは介護老人保健施設(老健)で行われています。本格的なリハビリ治療を3カ月間、毎日行う老健は超強化型老健と呼ばれます。入所リハビリを希望する方は、積極的なリハビリ治療を行える医師と療法士が常勤であることを確認して、超強化型施設を選択するとよいでしょう。

働いている人が障害を負った場合に支給される「障害給付」や「障害年金」は、何かあった時にとてもありがたいものです。これらは加入している保険によって変わります。

「健康保険」では傷病手当金、「労災保険」では休業補償給付が支給されます。原則、「国民保険」には給付金がありません。また、病気や外傷で身体障害や高次脳機能障害が6カ月以上経過して症状が固定すると、「健康保険」では障害厚生年金、「国民保険」では障害基礎年金、「労災保険」では労災後遺障害等級が受けられます。事故の中でも交通事故の場合は、さらに自賠責保険の保険金として、自賠責後遺障害等級が受け取れます。

誰しも突然起こる可能性がある病気や外傷による障害に備え、給付金や年金を受けられることを知っておきましょう。

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