巨人・阿部新監督が見せた投手整備力 “マシンガン続投”廃止でベンチの空気も様変わり

阪神との開幕カードを2勝1敗で終えた巨人に対し、「昨年までの『打つだけ』の野球とは、今季は様変わりしそうな印象を受けましたね」と巨人OBで元投手コーチの高橋善正氏が言えば、「各打者にしぶとさが出てきた」と同じく巨人OBで、セットアッパーとして活躍した橋本清氏もうなずく。

昨季までと様子が違うのは投手陣も同様だ。(【前編】からつづく)

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最大の懸案だった投手陣も2試合連続ゼロ封と奮闘し、「開幕から25イニング連続無失点」のプロ野球記録に並ぶオマケまでついた。中でも昨年は壊滅状態だったリリーフ陣が、2戦目までは無失点どころか無安打の完璧リレー。3戦目に左腕セットアッパーの中川が森下に3ランを被弾したものの、勝ちパターンを形成するドラフト1位新人の西舘、守護神の大勢、それに続くバルドナード、堀田、ケラーも完璧な投球を披露した。

「特に、ルーキーの西舘を勝ちパターンの『七回の男』に抜擢したのは阿部監督の大ヒットになりそうです。制球の不安がなく、ストライクゾーンで勝負できる球威と球のキレがある西舘は十分に重責を担えます。役割を固定することで、新人でも力を発揮しやすい環境を整えた。さらに感心したのは、阿部監督が3戦目の試合で西舘をベンチ入りさせなかったこと。3連勝を狙うなら外せないはずですが、思い切った決断です。先を見据えている証拠で、リリーフ陣に決して無理をさせずに、1年間のシーズンを考えたプランを描いているとのメッセージです」(橋本氏)

昨年は、最後までリリーフ陣の役割が固定されず、打たれては交代、打たれては交代の起用が「マシンガン継投」と揶揄された。そうやって疲弊した救援陣の防御率はリーグワーストの3.81。阪神は2.37で、ここでも大差をつけられた。

「阪神に2勝1敗と勝ち越し、大きく負け越した昨年の嫌なイメージは払拭できた。シーズンはまだ始まったばかりで、当然、チームの好不調の波は出てくる。ただ、打線は粘り強く1点を奪いにいき、守備では堅実に確実にアウトを積み重ねていく。投手陣は役割をはっきりさせて、決して無理はさせない。阿部監督が目指す、当たり前のことを当たり前にやる野球を愚直に求め、選手が実践していけば、少なくとも昨年までのように優勝争いの輪から外れることはない。そう思わせるスタートにはなったと思いますね。阿部監督が勝って喜ばず、ベンチで不満そうな表情を浮かべることもなく淡々としているのもいい。選手がベンチの顔色をうかがうように汲々としていた昨年までと違って、ノビノビとプレーしている印象も受けた」

とは、前出の高橋氏。

ファンがイライラする試合は格段に減りそうではある。

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