コーヒーやコーラで薬を飲むのはやっぱりダメ?「薬は水で飲むように」と言われる“本当の理由”

(※写真はイメージです/PIXTA)

薬を飲まなければならないけれど、手元にあるのはコーヒーやコーラだけ。そんなとき、水以外で薬を飲んでいいのか、わざわざ水を用意する必要があるのか、判断に迷うこともあるでしょう。そこで今回は、本記事では米国老年医学の専門医である山田悠史氏による著書『健康の大疑問』(マガジンハウス)から一部抜粋して、一生役立つ「飲み物と薬の飲み合わせ」について解説します。

薬との飲み合わせが危険なのは?

「薬は水で飲まないとダメだ」というのは小さな頃から教えられてきたことかもしれません。しかし、外出中に頭痛がした時、手元に薬はあるけれど、ペットボトルには緑茶、そんな時どうする? などというシーンもあると思います。

では、実際に、水以外で薬を飲むと危険なのでしょうか? この質問の答えは、実はそんなに一筋縄ではいきません。端的にいえば、結論は「薬、飲み物による」ということになります。

飲み物の中で、最も注意すべきはグレープフルーツジュースかもしれません。グレープフルーツジュースは、実は薬との相互作用が幅広く知られた飲み物なのです。

例えば、コレステロールを低下させるスタチンと呼ばれる薬のうちのいくつかは、グレープフルーツジュースと一緒に摂取すると、薬の分解が邪魔されてしまい、血液中の濃度が上昇してしまうことが知られています。

すると、投与している以上の薬が血液中に残ることになり、副作用のリスクが増加することにつながります。

一方、花粉症などに使うフェキソフェナジン(アレグラ)は、グレープフルーツジュースによって細胞への取り込みが邪魔されてしまうことが知られており、結果として必要な薬が体に届かなくなります。すると、効果が出にくくなることにつながります。

このように、グレープフルーツジュースが薬によっては副作用リスクを増加させたり、効果を減らしたりしてしまうことがあるのです。

あるいは、コーヒーやコーラなどのカフェイン入りの飲料も問題になることがあります。影響を及ぼす薬の種類は違えど、グレープフルーツと同様、カフェインも薬の濃度を変化させてしまうことがあるのです。

例えば尿酸値を低下させる薬であるアロプリノールを飲んでいると、薬ではなく、カフェインの濃度が上がってしまうことも知られています。この場合、カフェイン中毒のリスクが増加します。

また、アルコールで薬を飲む人はさすがにいないかもしれませんが、アルコールも注意すべき飲料です。薬をアルコールで飲まなくとも、飲酒習慣があるというだけで常用薬に影響を及ぼす可能性が知られています。

例えば、頭痛や風邪薬などにも用いられることのあるアセトアミノフェンは飲酒をしていると肝障害の副作用リスクが増加することが指摘されています。

逆に、「この飲み物で飲むと良いかもしれない」という薬もあります。その代表例が鉄剤のサプリメントです。鉄のサプリメントは、ビタミンCと一緒にとることで、吸収が増える可能性があると考えられています。

実際には、十分な科学的根拠には欠くものの、このために鉄のサプリメントをオレンジジュースと一緒に飲むことを勧める医師がいるぐらいです。一方、牛乳やコーヒー、紅茶などと一緒に飲むと逆に吸収が妨げられることも知られており、避けた方が良いとされています。

このように、一つの薬でも、相性の良い飲み物、悪い飲み物があるのです。

結論として、このように飲み物と薬の間には相性が問題になることがあるので、「水で飲んでおけば薬との相性を考える必要がなく安心」ということになります。

逆にいえば、相性が問題にならなければ水以外の飲み物で飲んでいただいても全く構いません。しかし、事前に相性に問題がないかを調べておく必要があります。


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山田 悠史

米国老年医学・内科専門医

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