【中野翠のCINEMAコラム】凸凹夫婦がたどる運命に人生の妙を味わう『ブルックリンでオペラを』

ユニークな視点と粋な文章でまとめる名コラムニスト・中野翠さんが、おすすめ映画について語ります。今回の映画は、ロマンティックコメディ『ブルックリンでオペラを』。『プラダを着た悪魔』などで知られる俳優アン・ハサウェイが、出演するとともにプロデューサーも務めたという注目の作品です。

ゲラゲラ笑いを誘うというより、「何だかんだあっても、人間って人生って、面白いものだなあ」と微笑が湧いて来る映画です。マチュア世代にはピッタリなのでは。

舞台はニューヨークのブルックリン。精神科医のパトリシア(アン・ハサウェイ)と、その夫で現代オペラの作曲家のスティーブン(ピーター・ディンクレイジ)。この一組の夫婦(そして愛犬リーバイ、ブスかわいい!)をめぐる物語。ほぼ喜劇。

パトリシアはスラリとした長身の美人だが、スティーブンは、超がつくほどの小柄。頭はパトリシアの胸のあたりまでしか届かない。それでも顔立ちは立派で、知的な印象。男女逆転の凸凹夫婦なのだった。

そもそもの出会いは、5年前。有名作曲家のスティーブンは大スランプに陥り、作曲ができず、精神科医のパトリシアと出会う。パトシリアには夫と息子のジュリアンがいたのだが、ジュリアンを連れて離婚し、スティーブンと再婚したのだった。

スティーブンは新作オペラに取りかかるものの、周囲から不評で、激しく落ち込んでしまう。そして、バーで会った風変わりな中年女・カトリーナ(マリサ・トメイ)に誘われ、彼女の船へ……。ハッと気づいた時には、彼女の船のダブルサイズのベッドの中に居た……。

さて、その先、夫婦(そして息子のジュリアン)の運命は、いかに……という話。

何と言ってもスティーブンを演じたピーター・ディンクレイジに目を見張る。1969年生まれというから50代半ば。身長は子どものようだが、顔立ちは考え深く、知的な印象。TVドラマでは数々の賞を受けていて、映画でも『スリー・ビルボード』(2017年)、『パーフェクト・ケア』(ʼ20年)、『シラノ』(ʼ21年)などに出演。

脚本・監督・プロデューサーは1962年生まれのレベッカ・ミラー。女の人です。父は劇作家アーサー・ミラーで、さらに驚くことに、夫はイギリス出身の俳優ダニエル・デイ=ルイスとは!

監督・脚本/レベッカ・ミラー
出演/アン・ハサウェイ、ピーター・ディンクレイジ、マリサ・トメイ 他
4月5日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋 他 全国公開(アメリカ 配給/松竹)

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※この記事は「ゆうゆう」2024年5月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。


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