年代だけでなく“男女間”にも「眠気」には差がある【専門家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

日中、眠くて仕事に集中できないことはありませんか? 反対に、年を取るにつれ眠気を感じなくなっていったという方もいるのではないでしょうか。片野秀樹氏は著書『休養学: あなたを疲れから救う』にて「若い人ほど疲れていて、60代、70代のほうが元気」と、いいます。年代、男女間では疲労と眠気にどのくらい差があるのかについて詳しくみていきましょう。

若い女性の9割は疲れている

「8割の人が疲れているということは、残りの2割は若い人なのかな」

そう思われる方も多いかもしれません。

しかしわれわれのおこなったアンケートの結果からすると、その逆です[図表1]。

[図表1]男女・年代別の疲労状況 出所:『休養学: あなたを疲れから救う』(東洋経済新報社)より抜粋

実は年代別で見ると、若い人ほど疲れていて、60代、70代のほうが元気です。

60代、70代はすでにリタイアしていたり、働いていてもそれほど負荷がかからない仕事だったりするのでしょう。子どもも巣立っていて、可処分所得が比較的多く、時間的にも余裕があり、疲れにくいのかもしれません。

興味深いのは、60代よりも70代のほうが疲れていないことです。60代の男性で元気な人は31.9%ですが、70代になると元気な人は39.4%に増えます。

これは女性も同じで、60代の女性で元気な人は29.4%ですが、70代だと35.5%となります。それでも同年代の男性と比較すると、女性のほうが4%ぐらい元気な人が少なくなっています。

男性よりも女性のほうが疲れているのは若い人も同じです。特に、20代・30代に注目すると、20代の女性は89.5%が「疲れている」と回答しており、30代となるとそれが90.7%になります。なんと若い女性の約9割が疲れているのです。

おそらくこの年代の女性は、結婚していれば共働きで仕事をしているのでしょう。かといって家事をしなくていいわけではない。人によってはそこに育児も加わるのですから、大変な生活を送っているのだろうと推察されます。

加齢とともに眠気は収まっていく

OECD(経済協力開発機構)の調査によれば、日本の女性の睡眠時間は世界的に見ても短くなっています。

厚労省の調査でも、若い人ほど日中に眠気を感じていることがわかっており、20代では50%近い人たちが眠気を感じています[図表2]。

[図表2]日中に眠気を感じる人の割合 出所:『休養学: あなたを疲れから救う』(東洋経済新報社)より抜粋

若い人が昼間に眠気を感じることが多いのに対して、高齢者は昼間の眠気を感じなくなります。加齢とともに眠気をあまり感じなくなるという生物学的な要因に加え、60代になると仕事を引退する人が増えるので、十分に睡眠をとれるようになるのかもしれません。男性よりも女性のほうが眠気を感じているのは、やはり女性のほうが疲労度が高いことと関連があるのでしょう。

いずれにせよ、これまで見てきたデータからわかるのは、日本人は間違いなく疲れているということです。

1999年のデータでは疲れを感じている人は全体の約6割だったのに、それがいま約8割になっているということは、今後この流れがさらに加速するかもしれません。もしもこのまま疲れた人がどんどん増えて、疲れた人が10割になったら世の中はどうなってしまうのでしょうか。

生産性が低いから経済成長も見込めないでしょうし、疲れているとミスが起きやすくなりますから、人命にかかわるようなとんでもない事故が起こる可能性もあります。特に、乗り物の運転手や医療従事者など、人の命を預かる仕事に就く人たちの疲れは、安心・安全な社会の妨げにさえなります。

片野秀樹

日本リカバリー協会代表理事

博士(医学)

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