京都の中学・高校の「ブラック校則」一斉調査 今どきそんなルールが必要?

カッターシャツの下着についてまで定めた府立高の校則。「~に限る」「~が望ましい」といった言葉が多く用いられている。

 「カッターシャツの下着は、上に華美な色や模様の出ないものに限る」「ヘアゴムは華美でないもの。(髪留めの)シュシュは認めない」。不合理な「ブラック校則」の排除が各地で叫ばれる中、京都新聞社が今夏、京都府内の全公立高と一部の京都市立中の校則を調べたところ、制服の着こなし方や下着(インナー)の色、頭髪の形や整え方などを厳しく規定する学校があることが分かった。

 文部科学省の有識者会議が8月に示した教員向けの生徒指導の手引書「生徒指導提要」の改訂案では、意義を適切に説明できない校則の見直しが明記された。

■「高校生としてふさわしくない」学校現場の考え
 なぜ、学校現場は極端な身なりがいけないと考えるのか―。記者の質問に、ある府立高の副校長は少し考え、「高校生としてふさわしくないから」と説明した。そして、慎重に言葉をつないだ。「校則は状況に応じて変えていく必要があるとは思っている」

 校則に関しては、さまざまな機関が見直しを呼びかけている。

 東京都教育委員会は昨年4月、「下着の色の指定」「ツーブロック(耳上などを短く刈って段差を付ける髪形)を禁止」「『高校生らしい』など、表現があいまいで誤解を招く指導」などの項目で点検を都立高に指示し、大半の学校で是正された。

 福岡県弁護士会も昨年2月、中学校校則の頭髪や髪ゴム、靴下、防寒着、学校外行動などの規制を問題視し、「合理的理由が説明できない校則や子どもの人権を侵害する校則は廃止か見直すべき」と提言する意見書を文部科学省や福岡市などに提出した。

 京都府内はどうか。京都府立高と京都市立高の全68校と、京都市内で学校数が最も多い伏見区の中学校14校の校則(4月現在)を京都新聞社が独自に調べてみたところ、都教委や福岡県弁護士会が示した基準に基づけば、校則として明記する是非が改めて問われそうな項目も見つかった。

■髪染めやパーマ、化粧はどこも禁止
 例えばカッターシャツの下に着る肌着(インナー)やTシャツの色。京都府久御山町の久御山高校は「上に華美な色や模様の出ないものに限る」、宇治市の東宇治高校も「ベージュ・白色など透けにくい色が望ましい」と規定していた。

 両校は「派手な色が透けて見えれば見栄えがよくない」などと理由を説明するが、福岡県弁護士会は意見書で「教職員が生徒の下着を目視する違反調査につながり、羞恥心を抱かせるなど人権侵害を生み出しかねない」と指摘している。

 服装に関する規定は校則で最も多く、スカート丈はほぼ共通して「膝頭を基準」などとされていた。各高校に理由を尋ねると「それより短くすると段々とエスカレートしていくから」「盗撮を防ぐため」「制服が美しく見えるため」といった説明が聞かれた。

 他にも靴下は「白・紺・黒の各色を基調としたものを原則とし、華美な色やデザインのものは禁止」(洛東高校)、防寒具も「色は黒・紺・グレー・茶系の無地に限る。形はPコート・ダッフルコートが望ましい」(西京高校)と詳細に指定する学校もあった。

 頭髪に関する規定も多い。染色や脱色、パーマ、化粧の禁止は共通し、一部では「極端な段差カット」(鴨沂高校)や「極端に奇抜なツーブロック」(須知高校)、「極端な長髪」(園部高校)も禁止されていた。

 京都市立中学校では、髪留めの規定が目立った。「髪の毛をくくるゴムやピンは黒・紺・茶」(伏見中学校)、「ヘアピン、ヘアゴム等は華美でないもの。(シュシュは認めない)」(桃山中学校)などと定められていたが、別の学校は指定がないなど判断に違いも見られた。

■校外での集まりや外泊の規定も
 学校外の行動や私生活に関する規定も。京都市の山城高校は「飲酒の指導事案につながりかねない」を理由に「校外でのコンパ(打ち上げ等)は禁止」。「外泊や旅行は必ず保護者の許しを受けて学級担任に届け出る」(洛水高校)、「男女の交際は節度正しく高校生らしいものであること」(洛北高校)とする学校もあった。

 なぜ、こうした事細かなルールが定められているのか。ある府立高の教諭は「学校が荒れた時代に定められた校則が残っている」と明かし、「今は落ち着いてきたが、カッターシャツの下着の色や頭髪などはいつ人前や面接に出てもおかしくないよう指導している」と校則の意義を語る。

 ただ京都市内の府立高校に通う3年の女子生徒(17)は「髪の染色や化粧などはしてもいいと思う。自分の個性を出すことになるし、学校が楽しくなる」と、もっと自由な校則を願う。

 校則が少ない学校もある。京都市の紫野高校は制服がなく、頭髪や服装など身なりについては「自然のままにし、品位を保ち、華美にならないよう留意すること」「他人に不快感を与えたり、公序良俗に反しないこと」と定めるのみだ。高校では夏用・冬用の制服の着用時期を定める学校も多いが、同市の堀川高校は「自分の温度感覚、体調などに合わせて選択する」と生徒の主体性に任せている。

■「派手=生活乱れ」の考えは時代遅れ
 校則の見直しに動きだした学校も現れている。深草学校は「髪ゴムの色は茶、黒、紺色」「靴下は黒・白・紺・グレーの単色」としていた校則を本年度からなくした。下着にするTシャツは白とする指導もやめた。

 島井聰校長は「ヘアゴムや靴下が派手だから生活が乱れているとは言えない。そこまで指導をするのはナンセンス、時代遅れ。教員が納得がいく説明ができないものはなくそうと考えた」と明かす。

 その上で「下着が派手でも他人に迷惑を掛けているわけではない。『君たちはどう思う?』と考えさせることが大事。管理しすぎて学校に行くのが嫌になれば本末転倒だ」とし、生徒たちとともに時代に合った校則を築く考えを示した。

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