「愛しているの?愛してないの!?」ちょっと重い…ジャンプ漫画「愛情深すぎ」キャラ

アニメ『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』DVD第3巻より

少年漫画にはしばしば、相手への想いが溢れて止まらない愛情深いキャラクターが登場する。少女漫画では愛情表現の豊かなキャラが描かれることも多いが、バトルや冒険が物語の軸になっている少年漫画の世界では異質な輝きを放つ存在だ。

そして彼らは、時に「そこまでいくと怖い……」とすら思えるような“重い愛情表現”で読者を驚かせる。今回は、『週刊少年ジャンプ』の人気漫画から、愛情深いキャラたちのいきすぎエピソードを振り返ってみたい。

■愛ほど歪んだ呪いはない…『呪術廻戦』の乙骨憂太

まずは、2018年から『週刊少年ジャンプ』で連載中の、芥見下々氏の漫画『呪術廻戦』より、特級呪術師・乙骨憂太だ。彼と祈本里香の物語は、本編の前日譚となる『呪術廻戦0 東京都立呪術高等専門学校』で描かれた。

子どもながらに将来を約束しあう仲だった乙骨と里香。だがある日、里香は乙骨の目の前で交通事故にあい、怨霊になってしまう。以来、乙骨は里香の存在に悩まされるが、実は里香は、乙骨が彼女の死を受け入れられず無意識のうちに呪いをかけたせいで特級過呪怨霊になっていたのである。

それに気づかないまま乙骨は、五条の介入で編入した呪術高専で術師として目覚めていく。怨霊としての里香を受け入れ始めた頃、彼女を手に入れようと目論む夏油により仲間が致命傷を負わされてしまう。

怒りが爆発した乙骨は夏油と対峙し、“うずまき””に対抗するために「僕の未来も心も体も全部里香にあげる これからは本当にずっと一緒だよ 愛してるよ里香 一緒に逝こう?」と自らを生贄に捧げて里香の呪力を解放する。

乙骨の告白に対し、声を大にして「憂太っあ゛!!!! 大大大大大大大大大大大大大大好きだよぉ!!!!」と開眼する里香の姿は、怖いながらもどこか可愛らしい。夏油を倒した乙骨は、里香への愛を再確認するとともに、自分が呪いをかけていたことを理解し解呪する。

一方、乙骨が本編で描かれた渋谷事変のクライマックス。呪霊が視える少女を間一髪のところで救うのだが、この時登場した里香のような呪霊に、読者は「リカちゃんは消えたはずでは?」と混乱しただろう。

確かに「折本里香」は『0』で解呪されているので、この「リカ」は別物。本編の「リカ」は、『0』の最後に里香が遺した呪力の蓄積・外付けの術式を元に乙骨が生み出した「術式・リカ」なのだ。解呪してもなお、術式として共存する乙骨の一途さには胸が熱くなる。

■妹への強い想いと寂しさから虚となってしまった『BLEACH』の井上昊

次は、2001年から『週刊少年ジャンプ』で連載が始まった久保帯人氏の漫画『BLEACH』で描かれた、同作のヒロイン・井上織姫と兄・井上昊の悲しい運命を見ていこう。

15歳離れている織姫と昊は、DVをする両親の元に生まれる。昊は自身が18歳になった時に織姫を連れて家を出て一人で懸命に彼女を育てた。しかし、織姫が中学の頃、昊は事故で命を落としてしまう。

この時点でかなり辛い出来事なのだが、織姫と昊は事故の直前に、いじめで髪を切られた織姫に昊がタイミング悪くヘアピンをプレゼントしたことが原因で喧嘩をして、きちんと話もできないまま永遠の別れを迎えていた。

織姫への未練を残していた昊は、現世に留まる霊となる。だが、毎日祈りを捧げてくれていた織姫が周囲の仲間のおかげで前を向きはじめると、自分に対する想いが薄れたと感じ、寂しさに飲み込まれ虚化してしまう。

虚となった昊は最愛の人である織姫を求めて暴れ始め、ついには彼女を襲撃する。これまでの寂しさを織姫にぶつけるが、「お兄ちゃんはこんなことする人じゃなかったのに…!」という言葉を聞いて「俺をこんなにしたのはお前だろ!殺してやる!」と怒ってしまう。

織姫は、「俺のために生きてくれないならせめて俺のために死ぬべきだ」と愛と憎しみを向ける昊の攻撃を受け止め、祈りを捧げなかったのは心配をかけないよう、幸せであることを知らせたかったからだと告げる。織姫の言葉で正気を取り戻した昊は、このまま消えておきたいと自ら斬魄刀を刺し成仏した。

喧嘩をして朝の挨拶もしないまま別れたことを悔いていた織姫は、尸魂界に送られる直前の昊に「いってらっしゃい」と笑顔を見せる。この織姫の言葉で、人間だった頃の優しい笑顔を取り戻した昊はなんとも悲しく切なく、涙なしでは見られない名シーンだった。

■愛を貫く究極のヤンデレ『ジョジョの奇妙な冒険』山岸由花子

最後は、1992年から始まった荒木飛呂彦氏の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第4部「ダイヤモンドは砕けない」から、愛に生きる女子高生・山岸由花子を見ていこう。彼女は髪の毛を操つるスタンド「ラブ・デラックス」を使う美女だ。

彼女は思い込みが激しく自分勝手で、岸辺露伴ですら「プッツン由花子」と怯えるほど気質が荒い。そして、極度の“ヤンデレ”体質でもある。「愛するもののためならば鼻汁も平気、パンツを洗っている時に幸せすら感じる」と言うほど一途なのだが、相手を破壊するまで突っ走ってしまうのだ。

そんな由花子の想い人が広瀬康一である。ある日、由花子は康一を呼び出して告白をし「あたしのこと嫌いですか?」と問う。しかしモテたことのない康一は戸惑い、曖昧な返事をしてしまう。すると由花子は「愛しているの!?愛していないの!?さっさと答えてよっ!」と態度が一変。すぐに正気に戻って謝るが、この時点で“やばい奴”感が突き抜けていた。

翌日には、手編みのセーターと豪勢な手作り弁当を持参する由花子。一晩でセーターを編んだり朝市で食材を仕入たりと、ここでも底知れぬ一面が垣間見える。怯える康一を助けるため、東方仗助と虹村億泰は康一がダメ男だという噂を流し諦めさせようとするが、由花子はりっぱな男にすると逆に燃え上がって康一を拉致監禁してしまう。

自分を拒否し、スタンド「エコーズ」を使って逃げ出そうとする康一に激怒した由花子は、「あなたが死ねばあなたは永遠にあたしのものになる」と殺そうとする。最終的に負けてしまうのだが、とどめを刺さない康一の優しさにさらに惚れ込んでしまう。

確かに由花子はキレると怖い。しかし、女子力が高く、相手のために献身的に尽くす可愛らしい人物でもある。康一も後々彼女の魅力に気づき、「山岸由花子はシンデレラに憧れる」のエピソードでの出来事を機に、晴れて両想いになった。

今回紹介した3名のように、愛情深いキャラのぶっ飛び行動は我々読者を驚かせる。その強い愛が狂気に変わると時に悲劇を生み出してしまうが、それでも彼らの一途さは魅力的だ。

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