住宅耐震化、補助制度あるのになぜ進まない? 鹿児島は半数以上の自治体で利用ゼロ

多くの家屋が倒壊した石川県輪島市=1月23日

 能登半島地震では古い住宅が倒れ、高齢者の犠牲が相次いだ。住宅耐震化が全国的な課題となる中、鹿児島県内では改修工事などの補助制度活用が進んでいない。南日本新聞の調べでは、補助制度を設ける30自治体のうち、17自治体で利用実績はゼロ。背景には改修費の手出し分の多さや高齢化があるとみられる。一部の自治体は防災ベッドなども補助対象とし、費用の負担感を和らげるための知恵を絞る。

 総務省の調査によると、2018年時点で県内の一戸建て住宅の耐震化率は76.7%。能登半島地震で耐震化の必要性が浮き彫りとなり、1981年5月以前の「旧耐震基準」で建てられた住宅の補強が急務となっている。

 県内自治体の補助対象の大半は、耐震診断と改修工事の費用。限度額は耐震診断が6万円、改修が30万円とする自治体が目立つ。鹿児島市と薩摩川内市、霧島市の改修の限度額は100万円。耐震化を促すための補助制度だが、利用は低調だ。日本建築防災協会によると、工事額は木造住宅の場合、100~150万円となるケースが多い。

 多くの自治体担当者は「旧耐震基準下の住宅に住むのは高齢者が多く、費用面が壁となっている」と声をそろえる。高齢化が進む阿久根市の集落に住む男性(71)は「周囲には国民年金で暮らす高齢世帯も多い。今後長く住むわけではなく、耐震化にお金をかけようという気持ちにはならない」と打ち明ける。

 いちき串木野市は、旧耐震基準についての認知度自体が低いと推測。築年数が不明な場合は市に問い合わせてもらうよう広報紙で呼びかける。

 鹿屋市は能登半島地震を受け、4月から改修の限度額を83万8000円から200万円に引き上げた。部屋に耐震性の高い個室「耐震シェルター」や、寝床の上をフレームなどで覆う「防災ベッド」を設置する簡易工事の限度額も40万円から100万円に増額した。

 同市建築住宅課の永野冬樹建築指導室長(49)は「住宅の建て替えや改修に比べて費用や工事にかかる時間を減らせることが多い。改修以外の補助があることを知ってもらいたい」と語る。

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