ひと回りコンパクトな「レンジローバーヴェラール ダイナミック HSE D200」

レンジローバーのモデルは現在4種類ある。シリーズの中心的存在である「レンジローバー」と「レンジローバースポーツ」、シャープなスタイリングで一世風靡した「レンジローバーイヴォーク」、そして2017年に登場した「レンジローバーヴェラール」だ。

レンジローバーの脇を固める3モデルには役割が分担されている。スポーツは読んで字のごとし、イヴォークはコンパクトで機動性の高いモデルだ。今回の主役であるミドルサイズのヴェラールは、レンジローバーをひと回り小さくし、デザインの行く末を指し示すアイコンといえるだろう。

デザインコンセプトは「リダクショニズム(=還元主義)」。幾分複雑になりつつあったデザインの方向性を、初代のクラシックレンジローバーのようなシンプルなものに回帰させること、同時に時代が求める空気やプレミアム感を高めることが意図だ。実際に2021年に登場した新型レンジローバーのスタイリングは、ヴェラールによって示されたリダクショニズムを受け継いだものだ。

パワーユニットは3種類。2.0リッター、直列4気筒ターボに、ガソリンエンジン(P250)とディーゼル+MHEV(D200)、そして新たに追加されたガソリン+PHEV(P400e)となっている。とかく敷居が高いと思われがちなレンジローバーだが、4気筒エンジンを搭載するヴェラールは、お洒落で比較的カジュアルな立ち位置となっている。

今回試乗したのはヴェラール ダイナミックHSE(最上級グレード)のD200。グリルやヘッドライト、バンパーに化粧直しが施されているものの、全体的な雰囲気は大きく変わっていない。一方、内装はこれまでダッシュボード中央に上下2枚のモニターが仕込まれていたが、大型(11.4インチ)の1枚ものに変更された。それ以外では、ワイヤレスチャージングが標準装備され利便性が向上している。

エンジンをかけ、最初に感じたのは静粛性の部分だ。ジャガー・ランドローバー製のインジニウム4気筒ディーゼルエンジンが改良され、ボディ自体の防音性能にも手が加えられた。高級感漂う見た目にガラガラというディーゼルノイズは似合わないので歓迎すべき点だろう。またディーゼルとMHEVの組み合わせによる発進トルクの大きさもプラスに働いている。

都内をドライブしていて気づかされたのは“意外と小さい”ということ。ボディの見切りがいいし、ステアリングの切れも良い。バックギアに入れた時のボディ周囲に備わるカメラからの情報も的確なので、路地に入り込んでもストレスがない。

高速道路では、歴代のレンジローバーに通じるおおらかさが感じられた。ダイナミックHSEグレードに標準装備されている電子制御エアサスペンションによって、22インチのスポーティなタイヤでも懐の深い乗り心地を提供してくれる。

トランクスペースは、キャディバッグを横置きなら1本、斜め方向なら3本積むこともできる。レンジローバーならではのプレミアム感と実用性を兼ね備えつつ、ボディサイズを極力抑えたヴェラールは、オールマイティに使いこなすことができ、見た目の荘厳な感じも備わっている。日本の道路事情にはジャストサイズといえるだろう。

レンジローバーヴェラール ダイナミック HSE D200 車両本体価格: 1155万円(税込)

Text : Takuo Yoshida

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