【分析】 ガザ人道支援の車列への空爆、画像などから分かること

シャイアン・サルダリザデフ、ベネディクト・ガーマン、トーマス・スペンサー、BBCヴェリファイ(検証チーム)

パレスチナ自治区ガザ地区で、食料援助を行う慈善団体「ワールド・セントラル・キッチン(WCK)」の職員7人が、イスラエル軍の空爆で死亡した。

死亡した職員のうち3人はイギリス人で、デイヴィッド・キャメロン英外相は「なぜこのようなことが起きたのか、直ちに説明」するようイスラエルに求めている。

BBCヴェリファイ(検証チーム)はこの出来事について分かっていることをまとめるため、ソーシャルメディア上で共有されている攻撃直後の様子をとらえた複数の画像を調べた。

車列

WCKによると、援助スタッフは3台の車で移動していた。うち2台は装甲車だった。

この車列の動きについては、イスラエル国防軍(IDF)と調整していたという。

車列は100トン以上の食料物資をガザ地区中部デイル・アル・バラフの倉庫に降ろしたと、WCKは説明した。

BBCヴェリファイは、激しく損傷した3台の車両を捉えた複数の画像を分析し、それらの位置を割り出した。1台の車両の屋根にはWCKのロゴがあるのが分かる。

3台の車両はそれぞれ約2.5キロメートルずつ離れた場所で見つかっており、複数の空爆があったことを示唆している。

BBCヴェリファイは当該地域の衛星画像と、車両の画像に写っている手がかりを照合し、位置を特定した。

激しく損傷したトヨタ・ハイラックスを写した画像の一つでは、車両のそばの木々やフェンスだけでなく、周囲にある特徴的な建物やそれを囲む塀の中に一本のヤシの木が立っているのが分かる。

複数の衛星画像では、これらの特徴が、ガザ中部の海岸沿いを走るアル・ラシード通りの一部と合致した。

ひどく損傷した2台目の車両を捉えた画像では、トヨタ・ハイラックス(先の車両とは別)の屋根に大きなギザギザの穴が開いているのが分かる。WCKのロゴも確認できる。

背景には鉄塔や、樹木が生い茂るエリア、背の低い壁、特徴的な二つの屋根が見える。BBCヴェリファイは、この場所と、1台目の車両から南約800メートルの地点が一致することを確認した。

損傷した3台目の車両は、道路から100キロほど外れた、南に面した空き地で撮影された。

WCKは、この車両は「ソフトスキン車両」、つまり装甲されていない車両だとしている。車両は2台目の場所から南約1.6キロ、1台目の場所からは2.5キロの地点にあった。

空爆を目撃した地元住民は、「(攻撃が)直撃した。彼ら(支援団体スタッフ)は他のスタッフの手当てをして、前方にいた別の車両に乗せようとした。しかし、(イスラエルは)その車を砲撃した」と語った。

使用された可能性のある武器は?

BBCヴェリファイは損傷した車の複数画像を、何人かの武器専門家に提示した。

現場にはミサイルや爆弾の破片はないように見えるが、専門家たちは車が受けた損傷について調査した。

イギリスの元陸軍将校で、元国連兵器査察官のクリス・コブ=スミス氏は、この攻撃はおそらく、ドローン(無人機)から発射されたミサイル「スパイク」によるものだと述べた。

スパイク・ミサイルは強力な兵器の一種で、通常は戦車などの装甲車に対して使用される。

元英陸軍将校でリスク・インテリジェンス企業「Sibylline」を経営するジャスティン・クランプ氏も、コブ=スミス氏と同意見だ。クランプ氏は「ドローンから発射され、標的が絞られた可能性が高い」とした。

また、爆弾や迫撃砲ではなく、ミサイルによる攻撃だろうと付け加えた。

犠牲者

WCKが発表した、殺害された援助スタッフ7人は次の通り。

援助スタッフ複数人の遺体の画像などが初めてソーシャルメディアに投稿されたのは、4月1日午後10時30分(BST=英国夏時間、日本時間2日午前6時30分)だった。

複数の生々しい動画には、5人の遺体が映っていた。その後さらに2人の遺体がデイル・アル・バラフで発見されたと、パレスチナ赤新月社(PRCS)はソーシャルメディアに投稿した。

死者のうち少なくとも3人の防弾チョッキにはWCKのロゴがあることが確認できた。

複数動画には、WCKの同僚たちが遺体の身元を確認する様子も映っていた。

1人の人物は、「この人たちは、海から援助物資を運んできた人たちだ」と述べた後、殺害されたのがパレスチナ人援助スタッフであることを認識すると泣き叫んだ。

輸送ルート

WCKによると、食料は「海路で」ガザ地区へ運ばれた。

海上輸送された援助物資は、WCKがガザ市西部に最近建設した桟橋を使って運び込まれる。このルートを使った最初の物資輸送は、3月15日に行われた。

WCKはまた、ガザ地区北部から逃れてきた難民のために、海岸沿いの道路に沿って「ウェルカムセンター」を設置している。

デイル・アル・バラフの倉庫の正確な場所は不明だが、WCKは最近、同地区を南北に走るサラ・アル・ディン通りの外れに新たな野外炊事場を開いた。

WCKが先週、ソーシャルメディアに投稿した動画には、フォークリフト車と、パレットに積まれた食料が置かれた倉庫が映っている。この場所は1台目の車両が攻撃を受けた場所からだいたい5キロの地点だ。

BBCヴェリファイは、倉庫の場所と、WCKがイスラエル軍と共有した座標の詳細についてWCKに尋ねたが、同団体は詳細を明らかにしなかった。

イスラエル軍は、何がどのように起こったのかを理解するため、「最高レベルで」この事案を検証しているとした。

そして、「我々はこの深刻な事案をさらに検証するため、調査を開始する予定だ」と付け加えた。

BBCヴェリファイはこの事案に関する調査を継続している。

追加取材:マーリン・トーマス

(英語記事 Gaza aid convoy strike: What we know

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