ロイヤルズの新球場建設とチーフスのスタジアム改修にあてるスタジアム税を有権者が拒否

カンザスシティ・チーフス【NFL】

現地2日(火)夜、ミズーリ州ジャクソン郡の住民たちがアローヘッド・スタジアムの大規模改修とダウンタウンの新球場建設に充てるはずの売上税に反対票を投じたことで、カンザスシティ・ロイヤルズとカンザスシティ・チーフスの将来には疑問が投げかけられている。

ロイヤルズのオーナーであるジョン・シャーマンとチーフスのマーク・ドノバン社長は最終集計が行われるかなり前から、この取り組みは失敗に終わるはずだと認めていた。その計画は、カウフマン・スタジアムとアローヘッド・スタジアムが50年以上にわたって存在しているトルーマン・スポーツ・コンプレックスの維持費として使われてきた既存の8分の3セントの売上税を、今後40年間で同様の税金に置き換えるというもので、最終的に有権者の58%以上が反対している。

プロジェクトのためにオーナーから少なくとも10億ドル(約1,515億9,650万円)の資金提供を約束していたロイヤルズは、税収の一部を20億ドル(約3,031億9,300万円)以上かかる球場建設資金に充てようとしていた。一方、スーパーボウル王者のチーフスは3億ドル(約454億7,865万円)の私財を投じ、アローヘッド・スタジアムの改修にかかる8億ドル(約1,212億7,640万円)の一部を税収で賄おうとしていた。

シャーマンは「ジャクソン郡にはチーフスとロイヤルズがあったほうがいいという確固たる信念を持っているだけに、深く失望している。この街に深く根を下ろし、両チームの熱心なファンかつシーズンチケット・ホルダーであり、現在、傑出したオーナーグループを率いる身としてね」と述べ、質問を受けることなく退席している。

チーフスは「今後、自分たちのファンと組織にとって最善のことをする」とドノバン社長は述べた。

それはさまざまなことを意味すると言えよう。チーフスは有権者が納得するようなプランに作り直して再挑戦することもできれば、民間投資を増やすような資金調達方法に変更することも、競合する都市や州――例えば、州境を挟んで西側にあるカンザス州――からの、公的資金を提供するという申し出に耳を傾けることもできる。

ドノバン社長は「私たちは民主主義のプロセスについてよく話してきた。そのプロセスを尊重している。私たちはジャクソン郡にとって最善の提案をしたと感じている。チームがこの郡と築いてきた長年のパートナーシップを延長する準備はできている」と語った。

トルーマン・スポーツ・コンプレックスでの現在のリース契約は2031年1月31日(金)までとなっている。シャーマンがロイヤルズは2030年シーズン以降にカウフマン・スタジアムでプレーしないと述べている一方で、チーフスはアローヘッド・スタジアムに残ることを希望している。

この税金――正確には、スタジアム計画――は当初から大きな反発を受けていた。両チームが具体的な計画を有権者に提示するのに苦労していた上に、プロセス全体を通して透明性が欠けていると非難されていたからだ。

昨秋、ロイヤルズは2カ所の球場候補地を発表。ひとつはダウンタウンの東端、もうひとつはミズーリ川を越えたところに位置するミズーリ州クレイ郡だ。しかしながら、最終的な場所が決まらないまま自ら設定した期限が過ぎ、ロイヤルズは2月になってようやく、両方の考えを捨ててダウンタウンにある別の場所を選んだと発表した。

クロスローズと呼ばれるその新エリアは、活気あるアートシーンやレストランが集まっており、Tモバイル・センターや賑やかなパワー&ライト・エンターテイメント地区からわずか数ブロックの距離にある。また、カウフマン・センター・フォー・ザ・パフォーミング・アーツや、ニグロリーグ野球博物館のある18番&ヴァイン地区にも近い。

しかし、それでも計画は曖昧(あいまい)なままだった。ロイヤルズが先週、球場の敷地の一部となるはずだった大通りを空けたままにしてほしいというカンザスシティのクイントン・ルーカス市長の要求を受け入れたことで、最新の球場完成予想図は陳腐なものになっている。ルーカス市長はロイヤルズがこの変更に同意するまで、税金のイニシアチブを支持していなかった。

ロイヤルズが1969年から1972年にかけて使用していたダウンタウンの旧ミュニシパル・スタジアムで試合を観戦していたことを覚えているミズーリ州インディペンデンスの有権者、デイドレ・チャスティーンさんは、「誰もが同じように複雑な思いを抱いていると思います」と話している。

「私たちは8分の3セントの売上税を払うことを気にしているわけではありません。問題は、スタジアムをそこに移すことだと思います。私たちが言っているのは、あそこで何年も前から確立されているビジネスを台無しにするなということです」

ロイヤルズはクロスロードの多くの地主と売買契約を結んでもいない。他の企業もすでに繁栄している住宅地での交通、混雑、駐車場について懸念を表明していた。

ロイヤルズの取締役副社長(EVP)であるサラ・トゥールビルは、2028年の開幕日に向けてスタジアムを移転させるのが目標だと述べている。

ロイヤルズは1973年にミュニシパル・スタジアムからカウフマン・スタジアムに移転し、2009年から2012年にかけて球場を広範囲にわたって改修した。カウフマン・スタジアムと併設されているアローヘッド・スタジアムも同時期に改修されている。

ロイヤルズが新球場でのプレーにこだわっているのに対し、チーフスは座席から豪華な設備、テールゲーティングシーンに至るまで、52年の歴史を持つ建物のあらゆる面に手を入れて同地にとどまることを望んでいる。

既存スタジアムの建設に尽力したラマー・ハントの息子であり、チーフスの会長を務めているクラーク・ハントは、投票が実施された火曜日より前に「このスタジアムの適切な改修と再構築に必要な資金が確保できなければ、私たちはもう25年間のリース契約には署名しない。計画通りにすべてを行うために必要な十分な資金を確保するために、財政面をうまく調整することは私たちにとってとても重要だ」とコメントしていた。

この5年で3度のスーパーボウル制覇を成し遂げてきたチーフスは、これまでの成功によって有権者が自分たちの有利になるよう動いてくれることを期待していた。

「父がスタジアムで一番気に入っていたのは、チームとファンのつながりだった」と述べたハント会長は「父はこの建物がファンに対して持っている意味を愛していた。私たちは今でも、この建物がナショナル・フットボール・リーグで最高のスタジアムの1つであり、NFL全体のファンが最も求めている目的地であると信じている」と続けている。


記事提供:『The Associated Press(AP通信)』


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