雅子さま 同一県の連続お見舞いは29年ぶり…石川県再訪を決断にあった「高齢者たちの涙」

3月22日、珠洲市の避難所でも腰をかがめてお声がけを /(C)JMPA

「雅子さまは私に避難生活についてお尋ねになりましたので、水が出ないので、洗濯をするにも週に1度、金沢市に行かなければならないとお伝えしました。遠いところまで来てくださって本当にありがたいです。両陛下はいろいろと親切にお話ししてくださいました」

本誌にそう語っていたのは、深見真智子さん(74)。深見さんは石川県珠洲市の中学校に設置された避難所で生活しており、天皇陛下と雅子さまのお見舞いを受けたのだ。

「3月22日の石川県ご訪問の現地滞在時間は6時間ほど。自衛隊のヘリコプターやマイクロバスを乗り継いで、分刻みで移動するというハードスケジュールでした。宮内庁内では、ご療養中の雅子さまへのご負担も憂慮する声も上がっていたのですが……」(皇室担当記者)

だが両陛下が能登への2度目のご訪問を検討されていることが報じられたのは、その“弾丸お見舞い”から4日後のことだった。

「4月中旬に、石川県へ日帰りで再び訪問される方向で宮内庁が具体的な調整を始めました。22日にお見舞いされた輪島市や珠洲市以外で、甚大な被害を受けた能登地方の自治体がご訪問先の候補になっています。まだ道路が復旧していない地域も多く、現地での移動は次回もヘリコプターが使われそうです。

両陛下は東日本大震災の際、被災した各県を順番にお見舞いされましたが、同一県での被災地連続ご訪問は、じつに29年ぶりとなります。’95年1月に阪神・淡路大震災が発生した後には、同年の2月と3月に兵庫県を訪れ、被災者を激励されています」(前出・皇室担当記者)

今年1月1日に能登半島地震が発生して以降、報道を注視され、また関係者らから事情を聴かれるなど、被災者の困窮に寄り添われようと取り組まれてきた天皇陛下と雅子さま。

「愛子さまが三重県にお成りになった際、一見勝之知事に“南海トラフ地震への対応は大丈夫ですか”と、お聞きになったそうです。ご一家で災害対策や、被災者の救済などについて日常的に話し合われているからでしょう。

両陛下は、石川県の被災地へのお見舞いにあたって、専門家との打ち合わせを続けてきたなかで、“日帰りの1日では不十分なのではないか”と、お考えになったのではないでしょうか」(前出・皇室担当記者)

石川県連続ご訪問のご覚悟をさらに強めたのは、現地でご覧になった被害の大きさや高齢者たちが切々と訴える声だったという。

■涙ぐむ高齢女性を慰められて

宮内庁関係者はこう語る。

「長らく地元の人々の生活を支え続け、観光名所でもあった輪島朝市の焼け跡をご覧になっていたとき、天皇陛下と雅子さまは、本当におつらそうなご様子でした。その後に足を運ばれた避難所では、息子さんといっしょに避難してきた高齢女性とも懇談されました。

『眠れなかったけれど、(両陛下に)お目にかかれて前に進みます』と、涙ぐむ高齢女性に、雅子さまも目を潤ませながら、『大変でしたね……』と、慰めていらしたのです」

両陛下と被災者たちとの交流について、名古屋大学大学院准教授の河西秀哉さんは次のように解説する。

「現地の人々にとっては、ご体調が思わしくないときもある雅子さまが、“自分たちのために現地に来てくださった”と感じることで、より皇室を身近な存在として捉えることにつながります。

またご訪問を重ねることで被災者たちも、“自分たちは見捨てられていないのだ”という思いを強めることができるでしょう。それは国民と皇室が“苦楽をともにしている”ことを示すことにほかならず、さらに天皇皇后両陛下にとっても、被災者と向き合われることで、国民の声を直接聞き、自分たちが求められていることを強くお感じになる機会になるはずです。それは雅子さまの精神的なご体調回復にもつながることだと思います」

また、阪神・淡路大震災や東日本大震災の被災地を巡られ、その後も被災者にお心を寄せられている両陛下は、インフラの復興だけではなく、“心の復興”も欠くことはできず、長い時間がかかることも痛感されていると、前出の宮内庁関係者は話す。

「生まれ故郷や、暮らしていた住居を失った被災者の心のケアは特に重要な問題といえます。阪神・淡路大震災では、復興住宅で、誰にもみとられずに亡くなる“孤独死”は10年間で560人にものぼりました。

東日本大震災でも仮設住宅や災害公営住宅で、独り暮らし中に亡くなり、孤独死の可能性が高いとされた人は震災後10年の時点で600人以上でした。そうした悲劇を繰り返さないように、能登地域でも孤独死を避けるための対策が検討されており、実際に仮設住宅の見回りをしている人々もいるのです。

天皇陛下と雅子さまが、29年ぶりに同一県への連続慰問を決断されたのは、復興には長い時間がかかることを国民に知らしめるとともに、“あなたたちはけっして独りではない”ということを被災者たちにもっと伝えたいとお考えだからなのでしょう」

能登半島のすべての被災者が救われるまで……。天皇陛下と雅子さま、そして愛子さまは献身と祈りの日々を過ごされる。

© 株式会社光文社