『FFXIV』「パッチ 6.xシリーズ」の集大成となるサウンドトラックがリリース!ゲームコンポーザー・祖堅正慶・今村貴文・石川大樹が語る制作裏話【インタビュー】

By TV LIFE

オンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV』(以下、FFXIV)の「パッチ 6.xシリーズ」の集大成となるサウンドトラック『GROWING LIGHT: FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack』が、2024年3月27日(水)にリリース。本作は、パッチ6.1「新たなる冒険」からパッチ6.5「光明の起点」までの6.xシリーズより、全93曲を収録した最新Blu-ray Discオリジナル・サウンドトラックとなる。今回は、『FFXIV』のサウンドディレクター兼コンポーザーの祖堅正慶さん、コンポーザーの今村貴文さん・石川大樹さんにインタビュー。制作の裏話などを交えつつ、本作の注目ポイントをお聞きしました。

ゲーム音楽はあくまでバックグラウンドミュージック

◆『FINAL FANTASY XIV FAN FESTIVAL 2024 in TOKYO』のTHE PRIMALSステージ、拝見しました。最高でした。ありがとうございます。

祖堅:ありがとうございます。演奏している僕らは、いつもより光の戦士(『FFXIV』プレイヤーの愛称)の方々との距離が遠くて、「届いているのかな?」と雲をつかむような感じだったんです。ちょっと悶々としながら帰路に就いたのですが、後から「めちゃくちゃ盛り上がっていたよ!」とたくさんの方から声をかけていただけて。みなさんに届いていたようでよかったです。

◆私はたぎっていました。今村さん・石川さんもDJとしてステージに立たれていましたよね。

今村:それもご存知なんですね。恥ずかしいな。DJという形で東京ドームのステージに立つのは、かなりレアケースだと思います(笑)。誰がやっているのか分からないくらいの格好をしていましたけど、気合は入っていました!

◆実際にステージに立ってみて、いかがでしたか?

今村:歓声はなかなか聞こえづらい環境だったのですが、光の戦士のみなさんが腕を振っている姿が見えて。

石川:BGMに合わせて、みなさんが動いてくださったんです。

今村:あの瞬間のためにDJミックス(※音楽商品「Pulse: FINAL FANTASY XIV Remix Album」)を作ったので、頑張ってよかったなと思いました。

左から)石川大樹、祖堅正慶、今村貴文

◆そのファンフェスでも発表された『FFXIV』の「パッチ 6.xシリーズ」の集大成となるオリジナル・サウンドトラックがリリースとなります。今村さん・石川さんが本格的に音楽の制作に加わったのも6.0(※パッチ6.0「暁月のフィナーレ」)ぐらいの時期からでしたか?

石川:いえ、もう少し前ですね。5.0(※パッチ5.0「漆黒のヴィランズ」)か5.1(※パッチ5.1「白き誓約、黒き密約」)あたりからだと思います。

祖堅:5.0の頃は、本人たちは制作に加わっている自覚はなかったと思います。というのも、入社した頃にふたりに渡した課題をゲームに採用したので(笑)。ふたりが作った課題の具合がとてもよかったので、もう上がってきたものをそのまま実装していました。

石川:課題だと思っていたものが、ゲームに使われていて驚きました(笑)。

祖堅:それがもう5年くらい前? ずいぶん経ったね。

今村・石川:経ちましたね!

◆祖堅さんから見て今村さん・石川さんの成長ぶりはどうですか?

祖堅:だいぶ口答えするようになりましたね(笑)! まぁ、入社したときは頼りなさを感じていましたが、最近は彼らにも後輩ができて、それ込みでちゃんと作業をまわせているので、頼もしいですね。

◆ふたりを頼りにしている。

祖堅:そうですね。「これやっといて」と言ったら、根掘り葉掘り聞かなくても空気を察して仕事をしてくれます。だから、責任ある仕事も結構渡せるようになって。すごく助かっています。

◆今村さん・石川さん自身はこの5年で成長したなと感じていますか?

今村:目の前のことを一生懸命に頑張っていたら、一瞬で時が過ぎてしまって。気が付いたら5年経っていたというのが正直なところです。ただ、祖堅さんに「頼りになる」と思っていただけているなら、本当によかったですね!

石川:僕も実感は全くなくて。ただ、いま質問をいただいてこの5年間を振り返ってみると、確かにいろいろとやった、あるいはやらされたなと思っています(笑)。それだけいろいろな経験を積ませていただけたということが、とても大事なことだったんだろうなと感じていますね。

左から)石川大樹、祖堅正慶、今村貴文

◆改めて、本サントラについてお話をお聞きします。まず、たくさんの楽曲がありますが、制作の割り振りはどうやって決めましたか?

祖堅:実は同時期に『ファイナルファンタジーXVI』(以下、FFXVI)の作業もやっていたんです。同時並行で進めていて、しかも進行スケジュールがしっかりと決まっていたので、『FFXIV』に関しては「ここやってね!」と僕が独断で割り振っていました。

◆個人的には、オーケストラの知識がある石川さんとバンド経験者の今村さんが編曲を担当した楽曲は、それぞれの特性が活かされたものが多いようにも感じました。実際、ふたりの適性を見て担当を決めていましたか?

祖堅:ある程度の適性は見ていますが、あまり「これが得意だから、これをやってね」というやり方はしていないです。というのも、ゲームサウンドを作るにあたって、得意ジャンルはあってもいいけれど、「できないです」というジャンルがあってはダメなので。「これは食べられません」ということがないように何でも食っておいてもらわないと。苦手はあってもいいけど、「食えません」はNG。そこまで制限をかけた割り振りはしていないつもりです。結果的にふたりの色が出たのかなと。

◆なるほど! そういう意味では、「ゴルベーザ四天王とのバトル 〜禁断の記憶〜」ではクラシックが好きで弦楽器の経験もある石川さんの色が出ていたように感じました。

石川:そうかもしれないですね。

◆こちらの原曲「ゴルベーザ四天王とのバトル」は『ファイナルファンタジーIV』(以下、FFIV)の名曲ですが、編曲するうえで意識されたことは?

石川:おっしゃっていただいた通り、この曲は知名度が高くて人気曲じゃないですか。だから、ゲームプレイヤーからも期待のかかる曲だと思うんですよね。そのプレッシャーがありましたが、原曲の雰囲気は持たせつつも、やっぱり『FFXIV』のバトル曲なので、ゲームに合うかどうかを意識して作った記憶があります。僕もすごく好きな曲なので、アレンジできてよかったです!

◆「Scream 〜万魔殿パンデモニウム:煉獄編〜」は今村さんのバンド経験が活きた編曲になっていると感じました。こちらは祖堅さんと一緒に作曲された一曲ですね。

祖堅:僕は「万魔殿パンデモニウム」のメロディをここにハメたらいいのでは、とアドバイスしたくらいです。根本はもう今村くんが作っていますよ。

今村:この曲は、僕にとっては初めてのボーカル入りのゲーム音楽だったんです。AKINOさんにボーカルをお願いして、実際のディレクションにも参加しました。初めてのことばかりでしたが、いい経験になりましたね。

◆AKINOさんにボーカルをお願いしたのはどういった経緯がありましたか?

祖堅:「こういうイメージで作曲してください」という参考曲のボーカルをAKINOさんが担当されていたんですよ。それを聞いて「もうAKINOさんに頼もうよ」となり、ご快諾いただいて、お願いしました。間違いなかったですね。

◆実際にボーカル入りのゲーム音楽を作ってみていかがでしたか?

今村:入社前は歌ものの制作をやっていたので慣れてはいたのですが、ゲームにのせる音楽となると、当時とは違うバランス感が大切なんですよね。ボーカルを主張し過ぎると、逆にゲームの邪魔になってしまうので、そこの塩梅は祖堅さんと綿密に話し合いました。

祖堅:ゲーム音楽の場合、ボーカルにばかり気がいっちゃうと、ゲームプレイの妨げになってしまう可能性があるんですよね。そこを崩してまでボーカルを主張する必要はないじゃないですか。ふつうの歌ものの編曲と比べてゲーム音楽ではボーカルの音量を半分くらいに落とすので、たぶん、経験がある人ほど作っているときに違和感があると思います。なので、今村くんとコンプ感や音量感、馴染ませ方などを相談しながら作っていきました。

◆以前のインタビューでもおっしゃられていましたが、ゲーム音楽はあくまでゲームが軸にある。

祖堅:そうです。音楽だけの視野で作るとダメなんですよね。ゲームという視野で音楽を見ないといけないんです。あくまでバックグラウンドミュージックですから。その場の説明と、戦闘の高揚感を演出するなど、盛り上げるための曲。実際のゲームプレイを阻害するような歌声の調整はNGなんですよ。

左から)石川大樹、祖堅正慶、今村貴文

「FF」好きはぜひこのディスクを手に取って聴いてほしい

◆個人的に印象深いのは、「命の天秤 〜輝ける神域 アグライア〜」。こちらは祖堅さんが作曲を担当されていますね。

祖堅:これは「ミソロジー・オブ・エオルゼア」の方向性を決めるにあたって、だいぶ試行錯誤した曲ですね。神々しい方々とのバトル曲ではあるけれども、24人のアライアンスレイドだったので、そのコンテンツをどう音楽で盛り上げればいいのか、世界観はどうするのかということに時間がかかりました。あと、この曲はteaさんという方にボーカルをお願いしたのですが、この頃はコロナ禍で外出を控えていた時期だったんです。それでもレコーディングをしないといけないスケジュールで、ちょっと特殊なリモートレコーディングをすることになりました。

◆特殊?

祖堅:はい。歌唱しているteaさんは事務所のスタジオでレコーディング、そしてオーストラリアにいるエンジニアを通じて、僕が自宅からディレクションをするという3拠点でリモートしながら制作したんです。こんなスタイルでレコーディングできる時代になったんだなと思いましたね。

◆コロナ禍で制限されたこともあったけれど、逆にそういう発見もあった。

祖堅:そうなんですよ。意外とリモートレコーディングもいけるんだなと分かりました。

◆今でもそういうリモートレコーディングをやるときもある?

祖堅:ちょくちょくありますね。スケジュールの都合が合わないときに便利ですし、作業スピードがぜんぜん違う。海を越えて一緒に制作もできますし。いちいちスタジオにデータを持っていかなくても、その場でやり取りをして完パケまで持っていけますからね。元々そういうやり方自体はコロナ禍前からあったとは思いますが、スタジオに行くというのが前提になっていて、ほとんど活用されていなかったんじゃないかな。発見がありましたね。

左から)石川大樹、祖堅正慶、今村貴文

◆先ほどお話いただいた「ゴルベーザ四天王とのバトル 〜禁断の記憶〜」ほか、「パッチ 6.xシリーズ」には『FFIV』の名曲がいくつも採用されています。例えば、ゼロムス戦の「最後の闘い (FINAL FANTASY IV) ~暁月~」と「赤い翼 ~暁月~」。

今村:サントラのコメント(※今作Blu-rayの本編映像再生中に読める、各曲のミュージシャンズコメント)にも書きましたが、「最後の闘い (FINAL FANTASY IV) ~暁月~」は僕自身も締め切りと戦っていました。曲的には打ち込み系のサウンドを混ぜているのですが、恐らく発注者の方もそういう方向性にしたら僕が食いつくと分かっていたんじゃないかな。まんまと乗せられて、気合を入れて作っていました(笑)。

◆「赤い翼 ~暁月~」は、祖堅さんが編曲されていますね。

祖堅:すごく直球に編曲しました。メロディはラッパなんですけど、打ち込みだとどうしても原曲の激しさを表現できなくて、僕が吹きました。ただ、家でラッパを吹いたので、ご近所の方々には迷惑をかけたと思います……。そうせざるを得なかったとはいえ、ごめんなさい、周りの人!

◆その他、今回のサントラでお三方が読者のみなさんに聴いてほしい曲を教えてください。

石川:多いので悩みますが、「躍動する大地 ~喜びの神域 エウプロシュネ~」にはちょっと触れておきたいです。この曲も「ミソロジー・オブ・エオルゼア」の中ボス戦の曲なのですが、元々の発注リクエストがケルト音楽だったんです。ケルト音楽って踊りの音楽で軽快なんですけど、中ボスたちは壮大な存在が多かったので、そのバランスを取るのが難しかったですね。冒頭のヴァイオリンは僕が弾いているのですが、結構頑張りました。

◆ご自身で弾かれたんですね!

石川:先ほどの祖堅さんと同じく、やっぱり打ち込みだとままならないことがあって。これも近所の方にたぶんご迷惑をおかけしました。申し訳ございません!

今村:「パッチ 6.xシリーズ」を通して自分のなかで渾身の一曲だと思っているのは、事件屋エンディングテーマである「ときめき紳士エスコート」かな!(笑)

祖堅:そこかぁ(笑)。

今村:インパクトが強かったですね。人生のなかでこういうのを何曲くらい作れるんだろうと思いながら制作しました。この曲はなるべく昔のアニメのエンディングっぽく、独特な雰囲気で作ってほしいというリクエストがあったんです。参考曲をいただいたのですが、昔のアニメで使っていたような音を今の機材で出そうと思っても、ないんですよね。だから、どうやって制作しようかとかなり悩みました。そういう苦悩を乗り越えて作った一曲です!

祖堅:後輩たちが頑張った曲をまずは聴いてください。あえて自分の曲で選ぶとなるなら、「月満ちる夜 〜喜びの神域 エウプロシュネ〜」かな。この曲は麦野優衣さんという方に歌唱をお願いしたのですが、社内の会議で「麦野さんという方にお願いしようかと思っている」と共有したら、今村くんが急に「えっ、麦野さんですか!?」と反応して。

今村:はい。僕の友達だったんです。

◆なんと!

今村:しかも、編曲で関わってもらっているTomoLowさんは僕の先輩でして。知り合いが集結していて、僕としてもちょっと特別な思いがある一曲になりました。

祖堅:あと、麦野さんが歌っている後ろで合いの手で女性コーラスが入るのですが、プロみたいに上手な方が歌い上げるとちょっと違うなと思って。ここは、カラオケで上手くらいの人にやってほしいなと思ったので、あえてサウンドマネージャーの女性ふたりに歌ってもらいました。麦野さんと同じ日にレコーディングしたのですが、麦野さんの熱がだんだんと上がってきて、ふたりにディレクションをしてくださったんですよ。それならもう最後までやってもらおうと思って、僕は後ろでコーヒーを飲んでいました(笑)。とかやっていたら、この曲を東京ドームで自分が歌う羽目になるというね。

石川:つけが回ってきた(笑)。

祖堅:そう。あのときは「英語で歌えてすごいね」なんて他人事でしたが、まさか自分で歌うことになるとは。大変さが身に染みて分かりました。いろいろな思い出がある曲です。

左から)石川大樹、祖堅正慶、今村貴文

◆最後に、本サントラを楽しみにしている方々へメッセージをお願いします。

石川:『FFXVI』と同時並行しての制作でしたが決して手は抜かず、チームで力を合わせて作りました。サントラを聴いて、ゲーム体験を思い出していただけたら幸いです。

今村:これから新拡張パッケージ『ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー』が待っています。このサントラを聞きながら「こういう物語だったな」というのをおさらいしてもらって、いま一生懸命に制作している『黄金のレガシー』のスタートを楽しみに待っていただければと思います。

祖堅:今回、バラエティに富んだサウンドトラックになったかなと思っています。過去作のアレンジなど、『FFXIV』じゃないと味わえない楽曲もたくさんありますし、『FFXVI』コラボで使用された曲も収録されています。「FF」シリーズが好きな方は、ぜひこのディスクを手に取って聴いてほしいですね! お得情報としては、EXTRA MOVIEとして、ラスベガスとロンドンで行ったファンフェスのライブ映像の一部が入っています。このサントラ用にミックスし直しました。さらに、全曲のMP3データも入っていますし、サウンドスタッフが必死の思いで撮ったスクリーンショットもスライドショーで楽しめます。特に「ミソロジー・オブ・エオルゼア」の楽曲はコンテンツを楽しんでいる一般のプレイヤーの方々に迷惑をかけないように、しっかりとバトルをしながらもいいショットはバッチリ押さえるという、スタッフたちはかなり必死でスクリーンショットを撮影してきました。できれば映像と音楽を合わせてゲーム体験を振り返ってみてください。よろしくお願いします!

●photo/徳永徹 text/M.TOKU

リリース情報

『GROWING LIGHT: FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack』

『GROWING LIGHT: FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack』
2024年3月27日(水)発売

価格:5,500円(税込)
仕様:Blu-ray Disc1枚
収録内容:
本編93曲+EXTRA MOVIE
封入特典:インゲーム「ハイデリン・アイドル」アイテムコード
発売元:株式会社スクウェア・エニックス

『GROWING LIGHT: FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack』商品ページ:https://www.jp.square-enix.com/music/sem/page/ff14/Growing_Light

商品概要

タイトル:『ファイナルファンタジーXIV(ファイナルファンタジー14)』
ジャンル:MMORPG(オンラインゲーム)
プラットフォーム:PlayStation 5|PlayStation 4|Xbox Series X|S|Windows|Mac

【ファイナルファンタジーXIV 公式サイト】
「ファイナルファンタジーXIV」プロモーションサイト:https://sqex.to/oRZf0
今すぐ無料の冒険へ!「ファイナルファンタジーXIV フリートライアル」:https://sqex.to/0excD
最新拡張パッケージ 「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー」:https://sqex.to/dg0nn

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